ペットの健康管理に革命? 猫を病気から守る最新飼育ワークフローを解説

レビュー

2020/06/23 18:00

データだけでなく飲んでいる動画まで自動撮影

 さらに専用のタグをつけた猫が水を飲みにいくと、飲み口のカメラが自動で起動し録画してくれるのも面白い。筆者は今まで給餌器についている見守りカメラで長期外出時のモニタリングをしていたが、音声で呼んでも来ないことが多く、結局少しご飯を出して食べにきた姿で安否確認をするような利用法だった。

 対してPawbo Springは飲みに来たタイミングで随時録画してくれるため、飼い主は録画された動画と回数で異常がないか確認でき効率がいい。猫側のタイミングで記録ができるという仕様はCAT LINKも含め実用的で健康管理にとても役立つと感じた。
 
専用タグ「iPuppyGo」はパッケージに一つ付属するが、
多頭飼いの場合は追加購入できる

二つの組み合わせで実現する健康管理ワークフロー

 この二つを組み合わせることで、猫の腎臓系の疾患の管理は劇的にしやすくなる。筆者の経験からも言えることだが、一体いつから疾患の兆候が出ていたかは本当にわかりづらい。毎日トイレの掃除をしていても、どのくらいの量飲んで、正常に排泄しているかは感覚でしか把握できないからだ。

 こうした悩みにこれらの製品はうってつけで、組み合わせることで一気に問題が解決する。Pawbo Springが知らせてくれる飲水量に対して、CAT LINKで記録されたトイレの回数が少なかったり、平均と比べて明らかに飲水量が減ったり、逆に増えたりした時はすぐにかかりつけの病院に相談する、といった具合だ。トイレの頻度が減った場合でも、環境や体調に問題がないかすぐにチェックができる。

 自動化の便利さは手間が減るところだが、異常に気付くのが遅れてしまう欠点もある。CAT LINKやPawbo Springならこうした欠点を解消しながら飼い主の手間も減らしてくれるので安心して効率化ができるわけだ。

価格や大きさはデメリットとなるか?

 すぐれた製品ではあるが、読者はやはり価格や大きさが気になるかもしれない。CAT LINK・Pawbo Spring双方共に普通のトイレや水飲みトレイに比べればかなり大きいし価格も段違いだ。また、両方ともどこかから電源を取らなければならない制約もある。こうしたことからワンルームのような限られたスペースで猫と生活する人には向かないこともあるだろう。

 ただし、スペースや電源の問題があるからといって見過ごせないのはトイレや給餌周りの清潔さだ。臭いなど飼い主側への影響も大きいが、猫は綺麗好きなのでトイレが汚いと、使わなくなることがある。ご飯や水も同様で新鮮でないと食べなくなってしまう。こうしたことが原因で何らかの疾患が現れることも少なくないため、猫がストレスなくすごせる状態を保つことが重要だ。したがって手軽にこうした状態を保てる自動化製品は十分に検討の余地がある。

 特にCAT LINKは税込5万9950円と高額に思うかもしれないが、従来の自動トイレが10万円を超えてくることを考えれば、アプリの記録にも対応してこの価格は非常にリーズナブルだ。給水器に関しても従来なかった各種モニタリング機能が備わっていると考えれば妥当な金額だろう。

 同様の機能がついている給餌器よりも実用的で使いやすい印象だったので、給水のみを目的とする他の給水器との価格比較はナンセンスだ。双方とも初期投資としては大きいが、ただのトイレや給水器と考えるのではなく、通院などの医療費を抑えられ、愛猫の健康を保てると考えればむしろメリットの方が大きい価格なのではないだろうか。

 今回のレビューを通して昨今のPET TECHの進化にとても驚いた。特にCAT LINKとPawbo Springの組み合わせは、自ら伝えるすべを持たない猫と飼い主のコミュニケーションを高め、健康維持に大きな効果をもたらす「飼育の必須アイテム」になると感じた。

 私事で恐縮だが、このレビュー期間中に8年間一緒にすごした猫が亡くなった。原因は慢性腎不全だ。以前から疾患に関しては病院で指摘されており、通院や点滴で元気に過ごしてはいたが、容体が急変し看取ることとなった。猫の腎臓疾患は特に原因がないとも言われており、気付きにくさも指摘されている。もしこうしたテクノロジーがもっと早く世に出ていれば筆者の猫も救われたかもしれないと考えると悔やまれるが、この記事を通して読者にPET TECHの可能性が伝われば嬉しい。ぜひ愛猫の健康管理に活用してもらえたらと思う。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。

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