生活リズムを自動で整えられるバッテリー型スマートブラインド”IKEA FYRTUR”レビュー

【木村ヒデノリのTech Magic #008】 「FYRTUR(フィルトゥール)」はIKEAが開発した遮光電動ローラーブラインドだ(※日本ではロールカーテンと呼ばれているが、以下IKEAの製品名称と合わせてローラーブラインドと記述)。単体でもリモコンで動作するが、同社から発売されている専用ゲートウェイTRADFRI(トロードフリ)を使えば、スマートフォンからアプリを介してさまざまな操作を行うことができる。
 
IKEAの遮光電動ローラーブラインド「FYRTUR(フィルトゥール)」。
数あるスマートブラインドの中でも充電式は珍しい(価格は税込で2万2990円~)

 遮光機能が必要ない場合は少し安価な「KADRILJ(カドリリ)」というタイプもある。電源は充電式で、国内メーカー品のように電源を取る必要がない。静音性にもすぐれ、開閉音で起きてしまうということもない。窓の活用法を見ると、日本では常に薄手のカーテンを閉めておくことが多い。しかしリノベーションに携わっている筆者の経験からすれば、明るいうちは開けておく方が断然、空間の気持ち良さを上げられる。FYRTURならスケジュールを組むことで、朝には自動的で開き、プライバシーが必要な時間帯には自動で閉まってくれるので、空間が閉塞的になることがない。スマートブラインドがもたらす生活へのメリットは想像以上だった。
 
FYRTURなら電源を取らなくて済むためどこにでもスッキリ設置でき、
部屋を広く見せられる

国内では意外となかったロールブラインドという選択肢

 国内では簡易的にカーテンを開け閉めできるガジェットから、本格的な電動カーテン、ブラインドまでさまざまな商品が出ているが、このFYRTURはポイントを押さえたかゆいところに手が届く製品だ。カーテンや通常のブラインドと「気持ちの良い空間を作るために窓を活用する」という視点で比較するとロールブラインドに軍配が上がる。
 
実はロールブラインドのメリットはカーテンや通常のブラインドと比べて多い

 しかし、窓がそれほど大きくなく1部屋のスペースも限られている日本の家こそローラーブラインドが向いているのに、あまり設置されているのを見かけない。海外よりも人目やプライバシーを気にするせいか、シアーカーテン(薄手のカーテン)とドレープカーテン(厚手の遮光カーテン)の二重吊りや、閉じたまま採光できるベネシャンブラインド(スラットと呼ばれる横型の羽で遮光し、角度を変えることで採光することもできる製品)が主流となっている。そのせいかIoT化された製品もこれらに準ずることが多く、ローラーブラインドのIoT製品という選択肢自体が少ないのが現状だ。

電源のことを考えずに設置できる手軽さ

 ほとんどの製品が後付けを想定しているのに電源を取らなければならない仕様になっていることにも疑問を感じる。電源を取らなければならない時点でDIYに慣れている人でもかなり躊躇するのではないだろうか。その点、FYRTURは単独でバッテリー駆動するので気軽に既存のカーテンから付け替えられるのが魅力だ。

 どのくらいの頻度で充電しなければならないのか実験してみたところ、2600mAhの充電式バッテリーは充電せずとも半年以上使用できた。これは十分に実用的と言えるだろう。当初筆者はこの点を気にしていたが、気苦労に終わった。
 
バッテリーは「ブラウニト」というmicroUSBで充電する製品で単体購入も可能(税込1999円)

 静音性が高さも魅力だ。他社製の電動ブラインドを使ったスマートハウスを見学した際に「こんなに大きな音が鳴るのか」と驚くことがあった。FYRTURは一番大きいもので140×195cmで、現在主流の日本の窓だと小型を2個設置しなければならないものの、駆動音はかなり静かで感動した。
 
サイズは全部で5種類がラインアップ、窓のサイズに合わせて選べる

意外と便利な物理リモコンでの操作

 ワイヤレスのリモコンがついているのも重宝する。FYRTURは前述したゲートウェイと組み合わせるとアプリでも音声でも開閉することができるようになるが、常にどれか一つの方法でしか開閉できないわけではなく、生活シーンに合わせてリモコンを使用することもできる。例えば、布団に入っているときはアプリや音声でコントロールしたいが、二つ以上同時に手早く開閉する際にはリモコンが便利なときもある。そういった意味でもリモコンという選択肢があるのは実用的だった。
 
リモコンは磁石や両面テープでどこにでも設置できるので便利だ

本当に役立つのかどうか生活の中で試験運用してみた

 筆者の家ではすべての窓にFYRTURが設置されており、専用ゲートウェイを介してHomekitとAmazon Echoにリンクされている。実際に使用してどれだけ快適になったのか具体的に紹介したい。
 
FYRTUR4台がゲートウェイと接続され、アプリとリモコンで操作できるようになっている

 平日は6時15分になるとまずキッチンのロールカーテンが開く。6時15分には妻の弁当の調理を開始しなければならないので、カーテンが開くまでにシャワーなど支度を済ませておくという使い方だ。キッチンのカーテンが開くと少し明るくなるので妻も起きてくる。6時50分にはすべてのブラインドが開放され、娘が自然と起きる。

 先に妻を送り出してから娘をスクールに送り、9時から仕事開始。15時に娘を迎えに行き、戻って17時までは再び仕事をする。16時45分には部屋全体のライトが点灯するので、それを目安に仕事の区切りをつけ始め、17時にはすべてのロールカーテンが閉まるので仕事を終え、娘が遊んだおもちゃなどを片付ける、というサイクルで生活している。
  
複数のIoT機器をスケジューリングして動かすことで、人間のルーティーンも保ちやすくなる

 筆者の場合はロールカーテン以外にも複数自動化したガジェットを組み合わせて日々のルーティーンが円滑に回るようにしているが、カーテンを自動化したことによって自分以外の家族の行動に変化があらわれた。このことからも、カーテンによる空間の雰囲気の変化が、無意識下及ぼす影響は非常に大きいと感じた。

便利だがリモコンに関しては改善して欲しい点も

 ただ、機能面で改善してほしい点もある。一つは物理リモコンの反応で、まれに1回押しただけでは反応しないときがある。音声やアプリからの操作では問題ないので、単純にリモコンと本体の通信の問題だと思うがファームウェアアップデートなどで対応してほしい。

 もう一つは1台につき一つのリモコンとしかペアリングできない点だ。各窓単体で操作するリモコンの他に部屋全体を一括で動かすリモコンを作りたい、となっても作れない。逆に一括で動くようにすべてのFYRTURを一つのリモコンに登録してしまうと窓単位で動かすことができなくなってしまう。アプリからはグループ化の設定ができるため必要ないのかもしれないが、リモコンでもさまざまな設定ができればより便利だと感じた。

各社サービスとの統合性が高くさまざまなニーズに応えられる完成度

 細かな要望はあるものの、総合的に見て実用度の高い製品だと言えるのが、HomekitやAmazon Echoをはじめ、各社のサービスとシームレスに連携できる点だ。これによってユーザーはブラインドの開閉を「日の出」や「日の入」に合わせることもできるし、それぞれのサービスの進化によって別の連携の可能性も出てくる。

 自動化と聞くと怠けを助長するように聞こえるかもしれないが、毎日定期的に動いてくれるものを作ると、人はそれに合わせて動くようになる。ローラーブラインドという製品の特性上、起床のサポートやプライバシー確保など、機能性に目がいってしまいがちだ。しかしそれ以上に大きいと思ったのは「行動を律してくれる」という効果だ。自動化を上手に取り入れることで“怠けない自分の習慣化をサポートできる”という新しい発見ができた。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。