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パナソニック、大ヒット「パームイン」の心臓部・彦根工場を公開

人とロボットの協働にもチャレンジ

 見学会では、今後導入していく人とロボットの協働作業のデモを披露した。自律走行搬送ロボット(AMR=Autonomous Mobile Robot)が人や物を避けながら部品の入ったケースを到着ステーションまで運ぶ。到着ステーションの部品を、ラピュタASRS用のケースにロボットで移載する。
 
自律走行搬送ロボットで部品を搬送

 デモでは、ビニール袋に入った部品を破ったり、落としたりすることなくスムーズに移し替えていた。シェーバーで使われる部品やその荷姿は千差万別。上部に搭載しているカメラが、荷姿や位置を把握しながらピックアップして移載する。移載したケースは、ラピュタASRSの保管場所へ自動搬送されていく。
 
ロボットで移載するデモ
 
移載した在庫はラピュタASRSに入庫

 次に、リニアモーターの新自動機組立機では、多品種の組み立てに対応した新規設備を導入した。従来は自動機生産3品番とセルライン生産3品番の合わせ技で組み立てていたが、今ではすべて自動機生産で7品番を組み立てている。生産能力は1割アップし、品種切り替えの時間は従来より8割も短縮した。
 
リニアモーターの新自動機組立機
 
新自動機組立機

 最後に、パームインシェーバー独自の組立ラインだ。グリップ式シェーバーはオーソドックスな一直線のI字ライン(23工程)だが、パームインでは、新たに人と協働するロボットを3台導入したU字ライン(19工程)を採用。導入効果から先に言うと、工程数は20%削減、従業員一人当たりの生産性は125%向上、ライン面積は30%削減という大きな効果を得た。

 U字ラインの流れはこうだ。まず半完成品の部品を供給する手段に協働ロボットを活用。ロボットが取り出した後は、半田づけ設備で基板に部品を半田づけする。その後、自動電流検査で人とロボットが協働して実施する。検査工程では部品の取り出しと、検査機への投入をロボットが自動で行う。
 
パームイン独自のU字ラインを採用
 
人とロボットが協働するU字ライン

 検査でOKだったものが次工程に流れ、人による外観や性能の検査を実施。完成品として出来上がったものを梱包する際は、作業支援カメラを活用する。取扱説明書やポーチなど漏れがなく入っているかをカメラでチェックする。箱詰めする際は、万が一抜け漏れがあっても検知できるように、すべてのパーツが入っていることを重量で確認した上で出荷となる。

 シェーバーのイメージを覆してユーザーに驚きと感動を与え、所有欲を刺激するパームインは、新しい需要の創造に成功して大ヒットを飛ばしている。そのモノづくりを支える彦根工場でも、匠の技術を継承するためのAIの活用や、人とロボットによる協働など新しい取り組みにチャレンジしつづけている。70年に及ぶモノづくりの現場における知見と、新たに挑戦しつづける姿勢が、パームインという斬新な製品を生み出した土壌になっているのだろう。(BCN・細田 立圭志)

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