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パナソニック、大ヒット「パームイン」の心臓部・彦根工場を公開

匠の技を継承するためにAIでディープラーニング

 次の公開ポイントは、匠の技を要する「外刃開孔検査」。刃穴の開き具合や変形・欠けなどの不具合を、この道20年の熟練工が触感や目視で確認する検査だ。その精度は、数マイクロミリの欠陥を瞬時に見つけ出すほど。この基準をクリアした熟練工が、次から次へと流れてくる外刃の全数を検査している。最高品質の刃だけを製品化するというこだわりがある。
 
匠の技の外刃開孔検査
 
開孔検査の不良サンプル

 初公開では、新しい取り組みとして、匠の技術を継承するために、熟練工の目視でチェックする経験値を、AIでディープラーニングさせている工程を披露した。「全自動ディープラーニング画像検査装置」という装置にAIと高解像度の4Kカメラ7台を設置し、1枚の刃にある「ひげを切る面」と「肌に触れる面」の不良品を選別する。
 
開孔検査の内部カメラ
(パナソニック提供)
 
全自動ディープラーニング画像検査装置
(パナソニック提供)

 具体的には、7台のカメラでとらえた7系統の光学系の高画質画像を、前処理と後処理に分ける「ハイブリッド判定処理」をする。前処理では、サイズや破れなど比較的簡単で高速に判定できるものでOK/NGを判定する。このとき、OK/NGを識別できずに「不明」となったものは、後処理の複雑で低速のディープラーニングによる判定に移行する。微細な傷やバラつきを見ながらOK/NGを判定する。最後に1カ所でもNG判定なら、除外となる。

 実は、全数を後処理のディープラーニングで判定する手法も考えられるが、その場合、処理時間が遅くなる上、設備投資も高額になる。ハイブリッド判定処理は、コストと生産性を考えた上での現状での最適解というわけだ。

 もっとも、技術が進歩すれば全数のディープラーニング判定も可能になるだろう。これまでも、光の特性を高速処理する画像検査技術の向上や光学機器、通信速度の向上、AIの発展など日進月歩で進化するテクノロジーにより、「不可能」とされていたことを可能にさせているからだ。

 膨大で複雑かつ微細な匠の技による判定をAIに学習させることで、検査効率は50%向上したという。
 

自動倉庫の導入で保管スペースを約3分の2に圧縮

 最後の工程が、製品組み立て工程における組立式の立体自動倉庫システム「ラピュタASRS」の導入と、パームインの基幹デバイスであるリニアモーターの新自動機組立機とU字型のパームインシェーバー組立工程だ。

 順を追ってみていこう。ラピュタASRSの導入で、仕掛在庫の置き場の効率化と、作業の効率化を実現した。以前は在庫の置き場を入庫、保管、出庫の三つのエリアで平置きしていた。増産体制を敷くときの仕掛在庫の対応が課題となっていた。
 
25年9月に導入した立体自動倉庫システム
「ラピュタASRS」

 立体的な空間を有効に使えるラピュタASRSは入庫、保管、出庫を自動で同時に行える。具体的にはロボットが部品を入れるケースの下に入ってケースを持ち上げて自動搬送する。約1700カ所あるスペースのうちの1カ所を指示して入庫・保管・出庫する。これらピッキング指示を自動化したことで、作業の効率化と人的ミスを大幅に削減した。

 刃は約20品番、成型部品は約60品番ある。一つのシェーバーは外刃や内刃、リニアモーターなどブロック単位では15~20からつくられる。電子部品などを含むと桁違いの数に及ぶ。これらの仕掛在庫を、ラピュタASRSがさばいていく。
 
ラピュタASRS

 自動倉庫の導入により、天井高を最大限にいかす立体的な保管が可能になった。実に、従来の約3分の2の面積に圧縮、約150平方メートルのスペースを創出した。そのスペースに生産設備を拡充して、生産効率を上げるのだ。

 ラピュタASRSの導入では、グループ会社のパナソニック コネクトとの連携も見逃せない。自動倉庫というハードを導入するだけでなく、人とロボットが協調するシステム面での連携や、ロボット制御プラットフォームとの連動、さらに経営全体の上位システムであるERPとの連携など統合的な連携が欠かせない。組織の壁を越えた全体のシステム連携には、パナソニック コネクトの知見が反映されている。

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