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チューナーレステレビはホントに安い? 実売価格で検証した

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2023/07/30 18:30

 チューナーレステレビが話題だ。放送波は見ないが、大きなディスプレイでインターネットの動画コンテンツは楽しみたいというニーズに応える。チューナーがないため、NHKの受信料を支払う必要がない。この点でも関心が集まっている。しかし、全国の家電量販店など約2200店舗の実売データを集めたBCNランキングの集計では、6月現在のテレビ販売台数に占める割合は0.9%とわずかだ。また、チューナーがないため価格が安いとされているが、それは本当だろうか。そこで、チューナーレステレビの現状をまとめた。

 チューナーレステレビが目立ち始めたのは昨年の夏。7月から本格的に販売が伸び始めた。テレビ全体に占める販売台数構成比は、この時点で0.2%。ごくわずかしか売れないニッチな製品だった。その後、販売台数を徐々に伸ばし、この3月には構成比が1.6%まで上昇。足元の6月では0.9%と再び1%を切ったが、一定の水準は維持しているといえるだろう。

 テレビ市場全体をみると、伸び悩みにあえいでいる。コロナ禍による巣ごもり需要で特需が生まれ、活況に沸いたものの、先食いした需要の反動減に苦しんでいる状態だ。2022年7月の販売台数を1とした指数では、最高でも22年12月の1.2、最低ではこの5月の0.6。この間を行き来している。6月のボーナス商戦も0.7とさえなかった。しかしチューナーレステレビは、この3月に最高の11.0を記録。6月も4.0と勢いがいい。ボリュームこそまだ小さいが伸び盛りの市場といえるだろう。
 
テレビ全体とチューナーレステレビの販売台数指数と
チューナーレステレビの販売台数構成比(右軸・%)

 NHKの受信料が不要という大きな魅力はあるものの、チューナーレステレビを購入すれば、自動的に受信料の請求が来なくなるわけではない。煩雑な手続きを経て、やっと受信料から解放される。チューナーレステレビを買ったはいいが、自家用車のカーナビにチューナーがついていて、結局受信料の支払いを継続するハメになる、ということも考えられる。受信料の問題はなかなか難しい。

 一方、チューナーがない分、安いという直接的な魅力はある。そこで、6月の実売で実際にどれくらい安いのかを検証。液晶テレビで画面サイズと解像度の2つの条件が同じテレビで、チューナーなしとチューナーありの価格を比較した。例えば、32型のフルHDテレビは、チューナーレステレビでは販売台数の24.0%を占め最も売れているタイプの製品だ。税抜き(以下同)平均単価は2万5500円だった。一方、チューナーありの同タイプテレビの平均単価は、2万7500円。チューナーレステレビが7.2%安かった。
 
チューナーレス液晶テレビの売れ筋タイプと
チューナーあり液晶テレビの価格比較 23年6月

 画面サイズと解像度以外の詳しい仕様は無視した、単純な価格比較である点には留意いただきたいが、特にチューナーレステレビの価格が安かったのが43型。59.5%も割安だった。そのほか、50型も47.2%、65型も44.1%安かった。チューナーレステレビは、比較的大き目な製品がお買い得という結果だ。製品別で具体的な価格を見てみると、必ずしもチューナーレステレビが最も安い、というわけではない。しかし、最も安い部類のテレビ、とは言えるだろう。

 チューナーレステレビを販売しているメーカーはまだ数社しかなく、販売台数こそ伸びてはいるが、まだまだこれからのカテゴリーだ。今後大きな市場に成長するかは、テレビの販売で高いシェアを握る主要メーカーが発売するかにかかっている。(BCN・道越一郎)