カメラがついに「コロナ明け」、この勢いをどう生かす

 デジカメ市場がこの8月、ついに「コロナ明け」したものとみられる。販売台数こそ前年比で99.2%と、わずかに昨年8月に及ばなかったが、販売金額は125.7%と大幅な伸びを記録。コロナ禍からの着実な回復を見せはじめた。ミラーレス一眼が好調なレンズ交換型は、5月以降先んじて復調。一方、レンズ一体型のコンパクトは不安定な動きで足を引っ張っていた。しかし8月、販売金額前年比で102.8%とコンパクトも前年を上回った。カメラ市場全体が回復に向けて動いている。全国約2300店の家電量販店やネットショップなどの実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。


 デジカメ市場で、現在最も勢いがあるのがミラーレス一眼だ。レンズ交換型の中で販売台数の85.3%を占める。終息を迎えつつある一眼レフとは対照的に、この4月以降5か月連続で台数、金額そろって前年を大きく上回った。特に8月は、販売台数で124.7%、販売金額に至っては147.4%と昨年に比べ大幅に売り上げを伸ばした。平均単価(税抜き、以下同)も、昨年8月の12万800円からこの8月は14万2100円と大幅に上昇。このため、レンズ交換型全体の販売金額は、前年比137.0%を記録した。

 ミラーレス一眼の回復をけん引しているのはソニーだ。部品の調達難などにより一部製品の受注を停止していたが、5月から順次供給再開。特に昨年の大ヒット製品ZV-E10の販売を再開すると一気に売り上げを回復させた。ロングラン製品のα6400の売り上げも市場回復に貢献している。その他、7月に発売したキヤノンのEOS R10や8月に発売したニコンのZ30など、APS-Cセンサーを搭載し、比較的価格が手ごろな製品の登場も市場を盛り上げている。一眼レフ市場は前年割れが続いているものの、底打ちしつつあり、定番のキヤノンEOS Kiss X10が最も売れている。

 レンズ一体型も、このところジリジリと平均単価が上昇。昨年8月の2万6700円から、この8月は3万1600円まで上がっている。このため、販売台数は伸び悩みつつも、販売金額は前年を上回るところまで回復してきた。特に、リコーイメージングのWG-80やWG-7、ソニーのCyber-shot WX500やCyber-shot RX100 VIIなどが単価上昇に貢献している。富士フイルムのnstax mini Evoはプリンター付きのデジカメとして新たな市場を開拓している。
 

 カメラ市場全体のメーカーシェアでは、しばらくトップを走っていたキヤノンに代わって、販売再開のソニーが復活。7月、8月と2か月連続でトップシェアを奪取し息を吹き返した。富士フイルムは昨年12月、ソニーを抜いて一時2位に浮上したが製品供給で苦戦。それでも以降3位のポジションを維持している。4位のKODAKは低価格のコンパクトカメラでシェアを稼いでいる。

 コロナ明けしたとはいえ、スマートフォンの台頭によるカメラ市場の厳しい環境は変わっていない。世界市場では円安がプラス要因として期待できる一方、国内市場ではインフレによる需要の低迷も懸念される。コロナ禍を経て変わってきたライフスタイルが、カメラ市場の今後にどう影響するかも心配な要素だ。とはいえ、どん底からの回復過程で生まれた現在の勢いは久々。これをどう生かし次につなげるか。カメラ業界の正念場だ。(BCN・道越一郎)