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海外市場に再進出してブレイクスルーする――エレコム 葉田順治会長

インタビュー

2021/07/14 08:05

 6月23日に経営のバトンが柴田幸生社長に引き継がれて新体制がスタートしたエレコム。創業者の葉田順治会長は、今後はグループ全体を俯瞰するポジションからエレコムの成長をサポートする。葉田会長、柴田社長、BCNの奥田喜久男会長の3人による対談は、制限時間いっぱいまで続いた。

構成・文/細田 立圭志 写真/馬場 磨貴

エレコムの柴田幸生社長(左)と
葉田順治会長(右)とBCNの奥田喜久男会長

競争のパラダイムシフトが起きている

奥田 葉田さんがエレコムを1000億円企業まで成長させたのは本当に立派だと思います。1000億円はすごく高い壁でしたか。

葉田順治会長(以下、敬称略) 通過点にすぎません。私としては、やり残したことがいっぱいありますし、もっと賢くやれたのになぁという悔しさに近い気持ちがありますね。日本市場で必死になって経営してきましたが、世界と比べてさざ波のような心地いいところで甘んじていてはいけません。海外勢が力をつけてきたり、競争のパラダイムシフトが起きたりしていますから。

奥田 会長になられて何をするんですか。

葉田 やはり海外事業ですね。

奥田 どこから着手する予定ですか。欧州からですか。

葉田 米国ですね。eコマースとeスポーツです。

奥田 海外進出について新社長は心配ではありませんか。

柴田幸生社長(以下、敬称略) 大丈夫です。過去に何度も失敗して勉強していますから。

葉田 海外はリアル店舗ではなくeコマースに特化します。わかりやすく例えれば、海外の展示会には何億円投資しても出展するけど、拠点はつくるなということです。海外に拠点をつくって経営の重しになる失敗は、これまで何度も経験してきましたから。

柴田 ここ数年で海外事業を黒字化しました。赤字事業を黒字にする手法がわかったので、今度は黒字にできたものを伸ばしていきます。細かな点を改善しながら黒字化することが私のミッションでしたから、それはうまくいきました。ここから先、さらに大きく伸ばすには葉田の力を借りなければいけないと考えています。私は既存事業の土台をしっかり見て、葉田が新しい事業でブレイクスルーしていくという役割です。

奥田 それは見ごたえがありますね。
 
競争のパラダイムシフトが起きていると語る
葉田順治会長

挑戦者だったエレコム

葉田 本来なら、新型コロナによるテレワークとGIGAスクールバブルがなれけば、これまでの事業は前々期で終わっていたのではないでしょうか。

奥田 コロナがなければ、尾を引きながら継続していたかもしれませんね。

葉田 そうともとらえられますね。コロナになって会社の中を見てみたら、開発に問題があったことがわかり荒療治しました。

奥田 先ほどから開発の話題がよく出ますが、よほどご苦労があったようですね。

柴田 日本のモノづくりの悪い面といいますか、大企業病にかかっていました。エレコムが伸びていたころは、他社が考えない新しいことにチャレンジする挑戦者の立場でした。しかし、ある程度のシェアがとれるようになると、リアル店舗では後追いした方が手堅く稼げるビジネスになってしまうんですよね。それで守りに入ってしまったわけです。

 売り場などを面で押さえる営業力もあるので、余計な投資をしなくても失敗するリスクが低い分、こうしたやり方が効率的に見えてしまっていたのです。しかし、昔は違いました。そもそも製品の影響力が小さかったので、他社と違う新しい製品をつくらないと生き延びていけませんでした。

 ある程度のマーケットシェアがとれて開発体制が守りに入ってしまうと、そこから先が伸ばせなくなります。新しい破壊力のあるプレイヤーが出現して既存のマーケットをチェンジするようなときに、対応できなくなる恐れがあります。
 
挑戦者だったエレコムについて語る柴田幸生社長

葉田 ずっと昔にいた社員がつくったものをご誓文のようにいつまでも守っていたのでしょうね。あまりにもスピードが遅いから、私が入って解析をさせたらブレイクスルーできたなんてこともあります。

奥田 手法を変えたのですね。

葉田 この半年をかけて、グループの中身をきれいにしました。

柴田 新型コロナで課題が如実に現れたので整理しようと。

奥田 ご本人はずっと前からわかっていたんですよね。

葉田 そんなことありませんよ。やはり気づいていなかったところもあります。
 
BCNの奥田喜久男会長

これまでのエレコム、これからのエレコム

奥田 葉田さんがつくられてきたこれまでのエレコムのビジネスモデルは、どういうものですか。

葉田 とてもシンプルです。家電、IT、低単価、高単価、ローテク、ハイテクなどこれらを徹底的にサポートするモデルです。一見、単純そうにみえますが複雑で奥が深いです。

 また20数年前に大量に返品を受けてつぶれかけそうになったときの教訓から、単品販売ではなく委託販売というコンセプトを導入しました。売り場のスペースを運営するモデルです。これを採用してから回りだすようになりました。5年前からはBtoBにも力を注いできました。

奥田 ライフスタイル・イノベーションを打ち出しているように、私が印象に残っているのはシェアが小さい時も大きい時もデザインにこだわってこられたこと。人が評価するのはデザインだと。そして実際にトップになられた。これからのビジネスモデルはどうなりますか。

葉田 デザインについては、お客様が手に取って実際に使っていただいて初めて製品だと考えていましたからね。これからは海外事業で1000億円、さらにM&Aなども組み合わせながらBtoBで1000億円ぐらいやらないといけません。

 ちょっとこの2、3年は慎重になりすぎました。GIGAスクールやテレワークのバブルもあり、変に慎重になりすぎたように思います。もう少し無理してでも勝負し、もうあと1、2社はレバレッジを利かせたM&Aができたのではないかと。もっとも、コロナのおかげでいろんなことが見直せる機会でもありましたが。

奥田 今後の展望の中でeスポーツも挙げられました。

葉田 eスポーツは既に社会から認知されています。5年前からテクノロジーに強い人材を集めてきたこともあり、圧倒的に差別化できる製品がつくれるようになりました。

 ゲーム周辺機器はこれまでほとんど手掛けてきませんでしたが、別に突拍子もないことをするわけではありません。ゲームの入力デバイスととらえたら、マウスキーボードを扱っているエレコムがeスポーツ事業をすることに何の違和感もないはずです。そんなに難しい話ではありませんし、道筋は見えています。
 
エレコムの新体制がスタートした
初日に実現した3人の対談

社長のもう一つの大きな仕事

奥田 社長の大きな仕事の一つは事業をつくっていくこともそうですが、次の人をつくっていくこともありますよね。

葉田 社長交代を伝えるときに、自分は少しやりすぎたけど65歳をめどに、次の世代交代の準備をしておきなさいと伝えました。われわれは駅伝でいえば第一走者で、次にバトンを渡したから、さらにその次の準備をしなさいと。

柴田 創業者である葉田との大きな違いは、私はある意味、社長の期間が決められていることです。まずは63歳になる5年間で、やらなければいけないことを考えられます。逆算すれば目標が設定でき、その中に第3走者をつくることも含まれます。

 創業者である葉田の場合は、イチからすべてをつくって、自分がどこまでやらなければいけないのかを、自分で決めなければなりません。5年間でやるべきことが明確になったので、今では気持ちもずいぶんと楽になりました。

奥田 柴田さん、社長就任おめでとう。

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