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新型コロナで逆風のビック酒販、新社長が実践する「O2O」戦略

販売戦略

2020/08/23 18:00

【なぐもんGO・60】 新型コロナウイルスの影響で大勢で居酒屋に行く回数が減った代わりに、近所の酒屋やECで酒を買って自宅で楽しむ“宅呑み”需要が高まった。1992年の事業開始から順調に成長してきたビックカメラの酒販事業もこの波に乗っているかと思いきや、決算短信を見ると苦戦している。この状況を打開するのが、6月に就任した新社長 細山祐一氏の目下の課題。キーワードはオンラインとオフラインの行き来を促すO2O(Online to Offline)戦略だ。

「ECを強化していく」と話すビック酒販の細山祐一社長

「夜の店」、インバウンド、オフィス需要が蒸発

 ジェーシービー(JCB)とナウキャストが公開した国内消費動向指数「JCB消費NOW」によると、巣ごもり消費・宅飲み需要で「酒屋」は全体的に成長傾向にあった。一方、ビックカメラの2020年8月期第3四半期(2019年9月1日~20年年5月31日)決算では、酒類・飲食物の売上高は53億6200万円で、前年同期比12.8%減だった。ビックカメラの売上高に占める構成比は0.9%と低いが、細山社長は「大きく成長させていきたい」と意気込む。

 ビックカメラの店舗でも、オンライン呑み会向けの商品を集めた売り場を設けたりして、宅飲み需要を取り込んでいた。ただ、同社の店舗は大都市の駅前立地。「在宅勤務や外出を自粛している状況では、そもそも駅まで来る人が減ったので、来店者数自体が少なくなっている」という。また、「よくビック酒販を利用していた“夜の店”も営業時間の短縮などで消費が減り、インバウンド需要も“蒸発”状態と、厳しい状況が続いている」と現状を説明する。
 
ビックカメラの「オンライン飲み会」売り場

 リアル店舗での買い物が減ったことで、代わって消費者が買い物をするようになったのはECだ。ビックカメラも例にもれず、酒販のECを強化する方針をとっている。急務なのは、酒類の商品紹介ページを整えること。現状では家電のテンプレートを流用しており、酒の「詳細スペック」や「仕様詳細」を紹介してしまっているからだ。
 
ビックカメラECの酒類の紹介ページ

サイトの改善やインフルエンサーを活用

 「ECで買い物をする際、お客様は商品紹介のWebページを参照する。しかし、当社は今のところ、家電量販店のWebサイトのデザインでお酒を紹介している。こうした点を少しずつ適したかたちに変えていくことで、印象も変えていきたい」(細山社長)。

 Webサイトを最適化するだけでなく、コンテンツの拡充も進めている。細山社長は、「ソムリエの阿部誠さんをインフルエンサーに据え、認知度の向上を図っている。現在、ビック酒販のコンテンツとして『阿部誠のワイン三昧』というページを運営している。好みに応じてワインを選びやすいよう紹介しているほか、日常でも口にする食材とあうワインをソムリエが厳選して掲載している」と、ワインを身近に感じてもらうためのオンラインの取り組みも力を入れている。
 
ソムリエ阿部誠さんの特設コーナー
「阿部誠のワイン三昧」

 ほかにも、日本産ワインの取り扱いを強化することで、「コロナ禍で出かけにくいので、日本各地のワインを通じて少しでも現地の旅行気分を味わってもらいたい」と話す。消費者がワインを手に取って確認できない不安を解消するため、製造者や産地を動画で紹介する取り組みも始めた。
 
店頭でも日本のワインを幅広く取りそろえる

ECの取り組みをリアル店舗へ

 これらのオンラインでの取り組みは店頭にも反映させている。「ビックカメラ新宿西口店」の試飲カウンターでは、将来的な施策として、利用者に対してお酒に合う缶つまを湯煎して、オリーブオイルを少し垂らして提供する、といったセット提案も計画している。宅飲みを楽しくするアイテムも日々充実しているので、機会があれば店舗を訪れてみると、新たな楽しみが発見できるだろう。
 
感染対策を徹底している試飲カウンター

 ちなみに、細山社長のおすすめは、最近仕入れた日本では珍しいアゼルバイジャンのワイン「シャビアン」。赤と白を揃えており、味わいの幅もある。オイルサーディンの缶つまなどがよく合うという。記者もワインと缶つまを購入しおすすめの通り湯煎して肴にしたら、魚が苦手な家族にも評判だったので、参考にしてもらいたい。(BCN・南雲 亮平)