ヨドバシカメラが4月14日から当面の間、緊急事態宣言の対象である7都府県のうち兵庫を除く6都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、福岡)の16店で一時休業すると発表した。14日正午のマルチメディアAkibaの前は、いつも開いている店が閉まっていることに戸惑う客の姿があった。全国の主要家電量販店・ネットショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」の日次データでも、東京都が休業要請施設を明らかにした4月10日以降、リアル店舗の販売金額は急落、一方でネット販売が急増している様子が鮮明になっている。

4月14日に一時休業になったマルチメディアAkibaの正面玄関

ヨドバシの7割の店舗が「営業一時休止」の衝撃

 東京都の休業要請の対象施設に、家電量販店についての具体的な言及はない。ヨドバシカメラは休業対象の1000平方メートルを超える商業施設に当てはまるが、例えば、ホームセンターなどは休業の対象外だ。

 実際に家電量販店では、ショッピングセンターや百貨店、スーパーのテナント店で臨時休業になっているケースがあるが、最大手のヤマダ電機を含めて、そのほかの店は営業時間の短縮で対応する場合が多い。わかりやすく言えば、ヤマダ電機のLABI1日本総本店 池袋もビックカメラの有楽町店も、営業時間は短縮しているが休業ではない。

 メーカーの販売促進員に新型コロナウイルスの陽性反応が1人出て一時休業になったマルチメディア横浜は理解できるが、東京や大阪、神奈川などの主力店舗16店の一時休業は、ヨドバシの全23店の実に7割を占めるもので対応が厳しすぎはしないか。
 
新型コロナで4月10日から一時休業になっているマルチメディア横浜

 ヨドバシの経営の屋台骨を支えるマルチメディアAkibaやマルチメディア梅田などの一時休業は、売り上げに置き換えたら、店舗比率の7割を上回るインパクトを与えることだろう。もっとも、東京都の発表を受けた最初の週末に、ヨドバシでは通常22時までの営業時間を19時に変更する時短営業を発表して実施していた。週が明け、一時休業に至ったのはなぜだろうか。ヨドバシカメラに確認すると、「東京都の休業要請とお客様、従業員の健康と安全などから総合的に判断した」との回答だった。

「一時休業」でも動いてる「マルチメディアAkiba」

 14日正午にマルチメディアAkibaを訪れると、既に入口に営業一時休止の案内が掲示されるとともに、数人の従業員が来店客にその旨を説明していた。
 
マルチメディアAkibaに張り出された営業一時休止の案内

 ただ、ピンチのときのヨドバシカメラのたくましさが感じられるのが、リアル店舗がダメならネット通販のヨドバシ・ドット・コムで対応する気概だ。マルチメディアAkibaの正面玄関は、ネットで注文した商品を店舗で引き取る専用カウンターが一斉に並べられていた。

 「店に商品は全てあるので、自宅でゆっくり買い物が楽しめるヨドバシ・ドット・コムを利用していただきたい。またすぐに必要なら、スマートフォンで注文して密集を避ける形で店舗で商品を受け取ることも可能」(ヨドバシカメラ)とECの活用をアピールする。

 実は今回の一時休業対応でも、ヨドバシの従業員は休むことなく働いているという。マルチメディアAkibaの地下駐車場に、納品トラックやヨドバシ・ドット・コムの配達を担う「ヨドバシエクストリーム」のバイク便や軽トラックが頻繁に出入りするのが確認できた。
 
 
ヨドバシ・ドット・コムのヨドバシエクストリームの
バイク便や軽トラックが頻繁に出入りしている


 従業員は、店内でネットの注文商品のピッキングなどにあたっている。つまり、店舗が緊急時の対応として、まるでEC専用の物流センターのように機能しているわけだ。「通常でもやっているサービスなので特別なことではない」というものの、ヨドバシカメラの緊急時の対応力の強さが光る。
 
納品トラックが出入りして、「一時休業」でも稼働していることが分かる

 一時休業の16店でもネット通販用の「受け取りカウンター」は朝9時30分から夜19時まで営業している。マルチメディアAkibaやマルチメディア梅田、マルチメディア博多の3店舗では、これまでと同様に「時間外受け取りカウンター」も稼働しているため、24時間、いつでも商品を取りに行くことができる。

都の休業施設の発表後にネットが急増

 ヨドバシカメラが今回の一時休業によってECシフトを鮮明にしているような動きは、ほかの家電量販店でも確認できる。BCNランキングにヨドバシカメラのPOSデータは含まれないものの、4月1日以降の日次ベースのデジタル家電市場全体の販売金額を追っていくと、日を追うごとにネット比率が高まっている。
 

 4月6日に緊急事態宣言の翌日発表という「事前予告」が発表されると、在宅勤務やリモートワークの対応やしばらく外出できなくなるからか、リアルとネット共に前年を大きく上回る動きが顕著になった。とくにリアルの伸びが顕著で、4月6日はリアルが113.8%と前日の86.4%から大きく反転し、前年同期と比べて2桁上回る結果となった。

 4月7日に緊急事態宣言が発令された後も、ネットとリアル共に前年を上回る動きが続いた。このときはまだ、具体的な休業要請の対象店舗が明らかではなく、調整中だったこともあり、リアルでも前年を上回る動きがみられた。

 しかし、4月10日に東京都が休業要請の施設を明らかにすると、ECシフトが鮮明になった。4月11日は、ネットが153.6%に対し、リアルが105.5%。4月12日は、ネットが149.2%に対し、リアルが87.3%だった。リアル店が臨時休業や時短営業に追い込まれる一方で、ネット販売は好調に推移していることが分かる。

 もっとも、リアル店の方が全体金額に占めるウエートが大きいため、全体でみると前年を割れている点は注意を要する。今後は、いかにECに注力していくかがカギとなりそうだ。またヨドバシカメラのように、スマホで注文して店に取りに行くような、緊急事態を逆手にとった新しい家電の買い物の形が広がるかもしれない。(BCN・細田 立圭志)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからPOSデータを通じてスマートフォンやデジタルカメラ、4Kテレビなどの販売台数・金額データを毎日収集・集計しているデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。