ヤフーの親会社Zホールディングス(HD)とLINEの経営統合は、日本のインターネットサービス業界に衝撃を与えた。切磋琢磨してきた両社だったからこそ、注目度は高い。中でも気になるのは、ライバル同士が手を組むとどのような効果が得られるのかだ。11月18日に開かれた会見では、「シナジー効果(相乗効果)」という言葉が繰り返し飛び交った。

11月18日に経営統合に合意した
ZHDの川邊健太郎社長CEO(左)とLINEの出澤剛社長CEO(右)

 一つは、利用者基盤の強化。ヤフーの月間利用者数は6743万人で、ビジネスクライアント数が300万社以上、LINEは8200万人、350社以上を抱えている。ただ、両サービスの利用者の中には重複するユーザーも当然含まれる。これについて、ZHDの川邊健太郎社長CEOは「重複はするが、補完的な部分もある。LINEはアプリとして若い層に人気がある一方、ヤフーは創業20数年でPC時代からのシニアユーザーが多い」と、利用者基盤は確実に拡大するとの見方を示した。
 
ヤフーとLINEの規模

 もう一つは、サービスの補完だ。ヤフーは検索サービスを祖業として、メディア、eコマースなどを強化している。一方、LINEはコミュニケーションアプリとしてスタートし、ニュースやゲーム、音楽などを提供してきた。川邊社長は、「統合を果たした暁には、ヤフーが提供できていないメッセンジャーアプリはLINEが、LINEが強化しきれていないECはヤフーが担うことで、補い合うことができる」と話す。
 
異なる役割のサービスが多く、補完し合う関係にあるという

 近年では、双方がともにPayPayやLINE Payなどの金融分野やAI事業に力をいれており、ここでも相乗効果が見込める。なお、両サービスについては、今後1年ほどは競合関係を続け、より消費者の支持を得ているサービスを残す方針だと明らかにしている。キャンペーン合戦から路線を変更しようとしている両社は、あらゆるサービスのプラットフォーム化を目指しており、どのような違いが出てくるかが注目だ。

 経営統合により、両社の規模が拡大することも大きな相乗効果だ。「ZHDの株主であるソフトバンクとLINEが連携すれば、これまでソフトバンクのスマホユーザーのみが対象だった特典をLINEのユーザーが受け取れるかもしれない」(川邊社長)。他方、ソフトバンクからすれば、韓国No.1規模のポータルサイトを抱えるLINEの親会社NAVERと協力することで、世界市場への本格参入や、LINE ClovaなどのAI技術を活用することができるようになる。
 
グループ同士のシナジー効果も大きい

 人材も両社を合わせると2万人以上にのぼる。投資額は1000億円以上。川邊社長は、「東アジアのZHD/ヤフー、ソフトバンク、LINE、ネイバーがグループシナジーを生かして世界にはばたき、GAFAやBADなどに次ぐ第三極をつくっていきたい」と意気込みを述べた。

 統合後、サービスの中心になっていくのはAIだ。「IoTの時代になり、日常の情報はインターネット化する。意識せずにインターネットに触れ合う時代が到来する。その基盤になるのがAI」と、川邊社長はAIの重要性を説明し、「ユーザーの情報を活用するためにもプライバシー保護とセキュリティの強化は欠かせない」と、課題感を打ち明けた。将来的には「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」を目指すという。(BCN・南雲 亮平)