• ホーム
  • トレンド
  • QRコード決済が狙う「FeliCa」非対応の格安スマホ 今年1月~6月でも4分の1占める

QRコード決済が狙う「FeliCa」非対応の格安スマホ 今年1月~6月でも4分の1占める

 2004年にサービスを開始した「おサイフケータイ」は、今年7月10日で15周年を迎える。公開中の15周年特設サイトでは、電子マネー「iD」「楽天Edy」「QUICPay」、交通系電子マネー「モバイルSuica」などの計6サービスのロゴをクリックすると、それぞれ決済音が流れる。その中の一つ、「モバイルWAON」の決済音「ワオーン!」は、特設サイトで初めて聴いただけに驚いた。

「おサイフケータイ」の特徴(おサイフケータイ15周年記念サイトより)

 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、今年1月~6月のスマートフォン(スマホ)全体の販売台数に占めるAppleのiPhoneのシェアは54.7%。そのうち、店頭で「Apple Pay」が使えるFeliCa対応機種の構成比は88.4%で、前年同期より増加した。AndroidとiPhoneを合わせたスマホ全体では、FeliCa対応機種の構成比は75.0%に下がり、「格安スマホ」とも呼ばれるSIMフリーモデルに限ると、21.1%にとどまっている。
 
4分の3がFeliCaに対応、残り4分の1位は非対応だった

 Androidスマホは、10年から早々におサイフケータイに対応(一部機種のみ)し、iPhoneも16年9月発売の「iPhone 7」以降、FeliCaに対応して待望のSuicaが利用可能になると話題になった。しかし、非対応の旧機種「iPhone 6s」もエントリーモデルとして販売を継続し、ワイモバイル、UQ mobileでは現在、最も多く売れている主力機種だ。

 今年10月1日の消費税率の引き上げに伴って、需要平準化対策として最大5%を還元する「キャッシュレス・消費者還元事業」が実施される。後発のPayPayがキャンペーンで話題になって以来、参入が相次ぐQRコード決済のメリットは、非接触型決済のFeliCaに比べて、店舗側の初期導入コストが低く、利用端末を選ばない汎用さにある。想定するターゲットは、iPhone 6s/iPhone SEを含む、おサイフケータイが利用できない格安スマホユーザーだ。
 
現状のQRコード決済サービスの乱立は、増税後の「キャッシュレス・消費者還元事業」が招いたものといえる

 7月1日のサービス開始直後から発生した、セブン-イレブン公式アプリ内から利用するスマホ決済サービス「7pay」のアプリの不正アクセス問題は、運営するセブンペイによると、7月4日までに判明しただけで、被害者約900人、被害総額約5500万円の規模となる見通し。SMSを使った二段階認証を用意しないなど、セキュリティと会員IDに対する甘い認識、謝罪会見の対応の拙さから、QRコード決済、ひいてはキャッシュレス決済全般に対する否定につながらないかと危惧される状況となった。
 
スマホ決済を含む国内キャッシュレス決済市場は、2023年度には約126兆円まで拡大すると予測されている

 どう、ひいき目にみても、QRコード決済はFeliCaを搭載したカード・専用キー、おサイフケータイによる非接触決済、サインレスのクレジットカード・デビットカード決済より、いつでもどこでも店頭でストレスなくスピーディーに決済できるとは言い難い。このため、おサイフケータイをはじめ、従来のキャッシュレス決済手段との使い分けが重要になるだろう。何度も噂が持ち上がっている、FeliCaを搭載したiPhone SEの後継機種「iPhone SE 2」の登場や、海外メーカー製SIMフリースマホの「おサイフケータイ」への対応を期待したい。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。