家電量販店売上高トップのヤマダ電機は、ソフトバンクの子会社であるエンコアードジャパンと連携し、ホームIoTサービス「YAMADAスマートホーム」の取り扱いを、今年4月11日にヤマダ電機の全直営店で開始した。ヤマダ電機グループのヤマダホームズでも「YAMADAスマートホーム」を販売する予定という。

IoT・スマートホームは、従来が分かれていたカテゴリーを横断する

 YAMADAスマートホームは、エンコアードが提供するエネルギーIoTプラットフォーム「エネトーク」を活用したサービス。宅内の分電盤に取り付けたエネトークから得られる1秒ごとのエネルギーデータの波形を独自のAIで解析し、全体の電力使用量から主な家電の電力量を推定、生活パターンを予測し、専用アプリ「エネトーク」上で、効果的な節電のアドバイスなどを行う。

 名称こそ「スマートホーム」だが、メインの3サービス「でんき(電力消費量)の見える化」「見守り」「家電コントロール」は、さほど新鮮味はない。HEMSがあれば可能な「でんきの見える化」より、「見守り」を打ち出したほうが、小学生の子どもが帰宅した時刻や帰宅後の様子を知りたいという層にピンポイントで刺さりそうだ。
 
エンコアードの「エネトーク」をYAMADAブランドで提供。専用デバイスとスマホを連携させ、
各社のスマートホームサービスにほぼ共通する、「でんきの見える化」「家電コントロール」、
「見守り・不在時の確認」ができる

続々と登場するスマートホームサービス 「見守り」はGoogleやAmazonも着目

 「スマートホーム」と銘打ち、見守りサービスを提供しているサービスは非常に多い。また、照明やエアコンの電源の切り忘れ、電動窓シャッターの閉め忘れがないか外出先から確認し、忘れてた場合は遠隔操作したいというニーズも高く、各社から似たようなサービスが登場している。
 
三和シヤッター工業の窓シャッター「マドモア」は、パナソニックのHEMS「AiSEG2」と連携し、
スマホなどから個別または一括で電動窓シャッターを開閉できる

 スマートフォン(スマホ)で遠隔操作できる電動窓シャッターは今や数多く製品化されているが、TOSTEMブランドで今年、初めてスマホ対応製品を発売したLIXILによると、住宅オプションとして電動シャッターを採用した顧客の満足度は高いものの、そもそも採用率は約10%程度にとどまるという。特に東京都内に建築する場合、土地購入費が高いため、建物性能を落とす傾向が高く、生活の質(QOL)が落ちる要因となっている。
 
シャープが開始する新スマートホームサービス「COCORO HOME」は自社製品に加え、他社製品とも連携(今秋サービス開始予定)。例として、白物家電、テレビ、HEMS、シャッター、宅配ボックスなどを挙げている

個別見積の「住宅設備」を「家電」のように購入したいが……

 ヤマダ電機の店舗を訪れると、リフォーム事業にかなり本腰を入れて取り組む意図を感じる。エディオンやビックカメラも以前から積極的にリフォーム事業を展開している。給湯器やドアホンなど、一度設置したらなかなか更新しない「住宅設備」と、7~10年の買い替えが推奨される「家電」の境界線が分かりにくくなっている以上、家電量販店のリフォーム事業や、大手ECサイトの住宅設備機器・DIY製品の取扱い拡大には期待したいところだが、調べれば調べるほど、慣習が異なり、なかなかスムーズな連携は難しいように感じる。

 以前の記事(https://www.bcnretail.com/market/detail/20181112_93213.html)でも言及した通り、注文住宅の新ジャンル「スマートホーム」や、リフォーム・リノベーションによる「スマートホーム化」はデジタル製品好きをメインターゲットに据えるべきで、この層は「20%還元」「比較サイト最安」といったわかりやすい価格基準とスペック比較を好む。見積りをもとに交渉して価格が決まるような、従来の注文住宅や住宅設備の価格決定プロセスは合わないのだ。
 
エディオンをはじめ、家電量販店各社はリフォームに力を入れている

 ハウスメーカーの売り上げや満足度ランキングをみると、家電販売とのシナジー効果を狙ったヤマダホームズは成功しているとは言い難い中、トヨタとパナソニックは20年1月に新会社プライムライフテクノロジーを設立し、現在は子会社のハウスメーカー3社をグループ連結から外す。太陽光発電などの自然エネルギーを活用した「創エネ」を基準に、「住宅設備」「家電」に加え、自動運転を研究しているトヨタの「車」も連携した新しい街づくりを目指すという意気込みは、壮大なビジョンとして興味深いと思う気持ちと、住宅事業の売上面の改善が見込めないため、体よく切り離した結果だけとも思われる。
 
トヨタとパナソニックの新会社プライムライフテクノロジーが目指す、
「IoT+住宅+クルマ」の新たな暮らしの価値

 トレンドの移り変わりの激しい家電や車は、従来通り、「住まい」と切り離したままのほうがいいのか。リビングにゆとりがなく、65インチ以上の大型テレビは置きづらい、キッチン周りにコンセントがないため電気ケトルやコーヒーメーカーなどの調理家電が常設できないといった問題がすでに発生しており、進化する家電に家が追いついておらず、そもそも住宅は、建物外観や内装ではなく、通勤や子育てに便利な「立地」が全てという主張も強まっている。

 Googleは「Google I/O 2019」で、スマートホーム製品として、スマートカメラを搭載し、外出先からアプリを通じて自宅を見守れるスマートディスプレイ「Nest Hub Max」と「Nest Hub」を発表。スマートカメラのないNest Hubは日本でも発売予定だ。「GAFA」と呼ばれる世界4大IT企業は、スマートホーム分野に着目しており、やがて日本の住まいに関する常識は、世界の新しいトレンドに飲み込まれるかもしれない。大きく短期間で変わり予感がするだけに、現時点でのHEMS製品やスマートホームサービスの比較検討は難しい。(BCN・嵯峨野 芙美)