最初の感想は「なんじゃそれ」。洗濯物をたたむだけの専用機、ランドロイドだ。洗濯が終わって乾いた衣類を突っ込むと、1枚15分ほどかけて分類しながらたたんでくれる、ただそれだけの機械だ。AIとロボティクス技術を駆使したという大型冷蔵庫のようなボディや185万円という庶民に無縁の価格は迫力十分。多くの見本市はもとより、ショールームまで設けて製品のアピールを続けていた。いよいよ発売日を発表するというCEATEC JAPAN 2016では、これまでにない製品ということで黒山の人だかり。当時最も人気と話題が集める製品だった。しかし発売することはできず、開発元のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは4月23日、結局破産手続き開始の申し立てに追い込まれた。すでに予約を開始しており、2019年中には必ず発売するとしていたが、そこまで持ちこたえることはできなかった。

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは、
CEATEC JAPAN 2016でも舞台にランドロイドの実機を登場させ華々しくプレゼンテーションを行った

 一方、17年に米国ラスベガスで開かれたCESには、洗濯物をたたむ機械の試作品「FoldiMate」を展示する小さなブースがあった。同じ機能を実現する機械にもかかわらず、ランドロイドとの極端な違いに思わず笑ってしまった。かたや技術の粋を結集させたという雰囲気を醸しだし、未来の機械として派手に宣伝を繰り返す、高価でどでかい機械。かたや手作り感満載で実用一辺倒の試作品。大きさは4分の1程度、1000米ドル以下を目指すという価格は10分の1以下。スピードも1枚数秒とはるかに速い。「これでいいじゃん」いや「これがいいじゃん」そう思った。本体の外側に衣類を広げて吊していくと、内部に衣類を引き込んで折りたたむという単純な構造だ。ごちゃごちゃとした洗濯物を取り上げて広げたり表裏を判定したり分類したりすることはできない。ランドロイドが目指した機能には及ばないが、本質の洗濯物をたたむということはできる。
 
CES 2017でこぢんまりとデビューした「FoldiMate」の試作初号機

 ランドロイド失敗の本質は欲張りすぎたことにある。製品の完成が遅れたのは、滑りやすい素材の衣類をロボットアームでつまみ上げることができなかったからだという。たたむという本来の機能の問題ではなかった。選び出したりつまんだりするのが難しければ、人間がやればいい。AIやロボティクスといった先端技術を一旦忘れて「洗濯物をたたむ」という本質に集中していれば、もっとスムースに製品を市場投入できていたに違いない。

 一方、たたむ機能に特化しているFoldiMateだが、実はまだ発売できていない。大きめのドラム式洗濯機と同じぐらいまでボディを大型化し、構造を大幅に変更した試作2号機を製品化して今年中の発売を目指している。予定価格は980米ドル。こちらもかなり苦戦しているようだ。ランドロイドが、まずはたたむことだけに特化していたら、もしかすると今頃は、もっと安く小さくしながら世界初の洗濯物たたみ機として発売できていたかもしれない。余計な機能が製品の足を引っぱる……。他の分野でも同様のことが起きていないだろうか。(BCN・道越一郎)
 
2019年中の発売を目指す「FoldiMate」の最終試作機。
初号機に比べかなり大型化した