【なぐもんGO・21】 キャッシュレス決済の普及を進めようと、全国各地でさまざまなプロジェクトが動いている。球場内で“完全キャッシュレス化”した最先端の「楽天生命パーク宮城」がある、宮城・仙台市もその地域のひとつ。市の担当者は「消費者の利便性を高めるため、またインバウンド需要を取り込むためには欠かせない取り組み」と話すが、課題は多いという。担当者の話とともに、商店街の現場の声も聞いてみた。

東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地でキャッシュレス決済普及の課題について聞いてきた

 日本のキャッシュレス化の浸透は、世界からみると遅れてる。キャッシュレス推進協議会がまとめた資料では、2015年の18.4%から16年の19.8%と、わずか1.4ポイントの伸長にすぎない。他方、隣の韓国は16年に96.4%、中国は65.8%と普及率は高い。アメリカやフランス、イギリス、スウェーデンなども40%を越えている。

 仙台市経済局地域産業支援課の担当者は「キャッシュレス決済の導入を進めようとしているが、仙台の商店街の利用者には年配の方も多く、そもそもスマホを持ってなかったり、クレジットカードを使うことに抵抗を感じたりする方もいる。こうした事情から、キャッシュレス決済の利用者は決して多くなく、導入に魅力を感じていない事業者もいる」と現状を語る。

 実際に街を歩いてみても、全国チェーン店や大型店舗を除いて、キャッシュレス決済、とりわけスマホ決済に対応している店舗は少ないことがわかる。まばらにある対応店舗の中でも目立つのは、スマホ決済「PayPay」や「WeChatPay」「AliPay」に対応している店舗だ。
 
商店街の鞄専門店では「PayPay」「WeChatPay」「AliPay」に対応していた

 PayPayに対応している鞄専門店に導入した理由を聞いてみると、「お客さまに便利に買い物をしていただくのが目的。手数料がかからない点も魅力」と話す。ただ、「使う人がまだ少ない」と苦笑しながら、「飲食店でもまだたまに見かける程度」だという。

 鞄専門店では海外からの来店客に対応するため、WeChatPayやAliPayも積極的に導入しているが、「PayPay以上に利用者がいない」とこぼす。市の担当者は「インバウンド需要を逃さないために、中心にある商店街にはWeChatPayとAliPayの導入を進めている」と話していたが、本格的に導入されるまでは、まだ少し時間がかかりそうだ。

 話しを聞くうちに、キャッシュレス決済をする利用者が少ないので、導入する店舗が少ない。消費者はキャッシュレス決済が使える店舗が限られるので利用しない、という負のスパイラルが生まれているように感じた。

 この状況から抜け出すための一つのきっかけとして期待されているのが、「キャッシュレス・消費者還元事業」だ。消費増税後の需要平準化に向けて10月以降の9か月間、キャッシュレスで決済した消費者に会計金額の2%、もしくは5%をポイントで還元する政府の施策だ。

 キャッシュレス決済を利用しなければ増税の2%分を支払うことになるので、利用を促進する効果があると期待されている。どのような影響を与えるのか、今後も注目していきたい。

完全キャッシュレス化した球場の近くでも普及はまだ

 仙台の街を歩いてもっとも気になったのは、「楽天生命パーク」のおひざ元のわりには、楽天の決済サービスを導入している店舗が目立たなかったことだ。「楽天生命パーク」では、今シーズンから球場内で現金が使えなくなっており、支払いは、クレジットカードや楽天ペイ、楽天Edyなどに限られる。

 完全キャッシュレス化を導入するにあたり、楽天は説明員の増員や楽天Edyを無料で配るなど、現場での混乱を避けるために対策を打ってきた。おかげで導入後の大きな混乱はないという。
 
今シーズンから完全キャッシュレス化した楽天生命パークで観戦者に配布していた
15周年記念の楽天Edy

 楽天Edyの球場での販売価格は300円~。今シーズン中は子どもに無料で配っているほか、今シーズン初旬には来場者に無料で楽天Edyを配布。楽天ペイで決済すると割り引きを受けられるキャンペーンも展開している。

 楽天は、一方的に押し付けるのではなく、大勢のスタッフを導入したり、手厚くサポートしたり、特典を付けたりと、さまざまな施策で来場者のキャッシュレス決済体験を後押しした。球場という閉じられた空間での施策ではあるが、商店街でキャッシュレス決済を推進する際のヒントにもなりそうだ。(BCN・南雲 亮平)