昨年の後半から怒涛のように押し寄せたキャッシュレス決済の波。どうして急に……と不思議に思っている人も多いのではないだろうか。この“ゴリ押し”ともいえる促進活動には政府や行政の後押しが大きく影響している。

突然のキャッシュレス押しに戸惑う人が続出した18年。
19年の動向を予測してみた

2018年、良くも悪くも盛り上がったキャッシュレス決済

 キャッシュレス決済の普及が日本で叫ばれ始めたのは2014年。経済産業省は「『日本再興戦略』改定 2014」の中で、少子高齢化・人口減に伴う店舗の無人化や省力化、現金資産の見える化、支払いデータ活用による消費喚起などを目的にキャッシュレスを推進すると発表。

 さらに、2年後の「日本再興戦略 2016」では20年開催の東京五輪を視野に入れ、外国人観光客への対応という要素も加わった。キャッシュレス比率4割という目標の達成時期が27年から25年に前倒しされていることからも、行政が喫緊の課題として優先度を高く設定していることがうかがえる。

 そして18年4月、経済産業省が中心となり「キャッシュレス・ビジョン」が発表された。これには「QRコードを使った決済基盤を提供する事業者に補助金を供与」「際標準のあり方を探りつつ、年内にも仕様を統一する」「QRコードの表示などキャッシュレス決済を新たに導入する企業を対象に、一定期間は減税する仕組みを検討する」などの具体的な施策が盛り込まれ、各企業の事業化に拍車をかけることになった。

 その後の各企業のキャッシュレス決済参入や店舗のサービス導入に関するニュースについてはここで触れるまでもないだろう。楽天やOrigami、LINEなどの先行者は導入店舗やサービスを拡充、ヤフーなどの後続が大々的なキャンペーンで猛烈な追い上げをみせ、銀行やコンビニなど非テクノロジー企業もサービス運用を発表している。
 
各社の大規模キャンペーンについては「BCN+R」でもたびたび取り上げた

本当の問題は「増税後」 キャッシュレス優遇施策終了後のシナリオ

 さて、18年の振り返りが長くなってしまったが、ここからが本題。19年のキャッシュレス決済の周辺はどうなるのか。

 まず、なんといっても注目せざるを得ないのが、19年10月に予定する消費増税に伴うポイント還元施策だ。これは中小店舗でクレジットカードやスマホなどでキャッシュレス決済を利用すれば、原則5%、大手系列チェーン加盟店であれば2%のポイント還元を行うというもの。

 すでに大手コンビニ3社(セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン)が、対象にならない直営店分を自社で負担し、全店で実施する方針を発表するなど、対策が講じられ始めている。こうした動きは、おそらく19年前半に次々に発表されることになるだろう。

 キャッシュレス利用者が爆発的に増えるであろう、この増税のタイミングをにらんで、決済サービスを展開する各社の動きも慌ただしくなりそうだ。昨年12月に実施されたスマホ決済サービス「PayPay」の100億円還元キャンペーンは記憶に新しいが、こうしたキャンペーンはサービスを問わず頻繁に開催されることが予想される。
 
お祭り騒ぎになった「PayPay」の100億円還元キャンペーン。
19年は同規模のキャンペーンがもっと増えるかも?

 しかし、ご承知の通り、「PayPay」のキャンペーンはクレジットカード不正利用といった問題で、キャッシュレス決済の不安要素を露呈することになった。正確には“キャッシュレスだから発生した問題”というわけではなかったが、世間はそうは受け取らない。問題が次から次に発生すれば逆効果で、普及の足かせにもなりうる。こうした問題は新しいタイプのサービスには付き物で、トライ&エラーを繰り返すしか解決の道はないが、その影響をどこまで最小限に抑えられるか。利便性だけでなく、セキュリティーの堅牢性をいま以上に訴えていく必要がありそうだ。

 それよりも大きな問題は、増税を経て、ポイント還元の狂騒が去ったあと、キャッシュレス決済が真に普及するのかということだ。導入店舗・消費者が利便性を認めて、キャッシュレス決済比率が高まる。この流れを受けて、導入に至っていない店舗や消費者にじわじわと広がる。これなら政府の後押しも正解、万々歳のシナリオだろう。

 しかし、さまざまな施策が終了したあとでキャッシュレス決済比率が伸びず、導入店舗数は頭打ち、サービス自体が存続できず衰退、という事態になれば最悪だ。そして、その可能性は十分にありうる。懸念する理由はいろいろとあるが、大きなものでいえば、スマホ決済サービスの乱立があげられる。

 現時点で十を超えるスマホ決済サービスがあるが、19年はますます増えるだろう。そうなると、消費者はどこの店でどのサービスが使えるのか、把握しておく必要が生じる。取りこぼしを防ぐために導入企業は片っ端から複数のサービスを導入する。数年は手数料の減額もしくは無料をうたっているサービスがほとんどなので、影響は少ないだろう(それでも、一部の層は複雑な構造に嫌気がさして離脱するかもしれないが)。しかし、導入店への優遇が終了した後には、その代償が大きく店舗側にのしかかってくる。

 加えて、キャッシュレス決済はQRを用いたスマホ決済だけではない。一周まわって、結局はクレジットカードによる決済が主流にあるというシナリオもありうる。また、無人店舗が普及してくれば、今度は新たなキャッシュレスアプリを用意する必要がでてくるかもしれない。コストと手間をどれだけ費やしても、店舗と消費者は「これさえあればキャッシュレス決済は完璧」という状態にならないという悪循環。これこそ今年のうちに論じておくべき課題なのではないだろうか。

 ネガティブな憶測ばかりとなってしまったが、キャッシュレス決済が真に普及すれば、日本が抱えているさまざまな問題にプラスの影響を与える、という思惑自体はズレていないはずだ。その分岐点となる今年、キャッシュレス決済が正しく世の中に広がっていくのを願うばかりだ。(BCN・大蔵 大輔)