ヤマダ電機と同様に、少子高齢化による家電市場の縮小を見越して「脱家電」を急いでいるのはビックカメラだ。ただ同社の場合、急激な変化にキャッチアップしていこうとするスピード感が光る。東京五輪に向けたインバウンド需要がさらに高まり、2025年の国際博覧会の開催が決まったことで沸く大阪では、20年ぶりとなる家電量販店同士の熱い戦いも勃発する。

18年8月にオープンしたビックカメラ初の単独リカーショップ「ビックカメラリカー アクアシティお台場店」

 ビックカメラは以前から酒類やドラッグなどの非家電商品を扱っていたが、それを強烈に印象づけたのは17年6月に秋葉原の目抜き通りの中央通りにあった旧ソフマップ 秋葉原本館を全面リニューアルした「ビックカメラ AKIBA」だ。

 1階の売り場をそれまでのスマートフォンとアクセサリーから、ドラッグストア顔負けの薬や日用品、土産、菓子や酒などに大幅に変更し、業界関係者の度肝を抜いた。電気街のど真ん中に立地する家電量販店の「一丁目一番地」の1階フロアに、家電製品が全く見当たらなかったのだから無理もない。

 その後も、郊外のファミリー層向けに玩具の専門店、都心部で若い女子高生をターゲットにしたコンビニ程度の広さのセレクトショップを手掛けるなど、規模と業態ともに異なる新しい店舗を矢継ぎ早に出店した。

 その変化は、18年8月期の決算数字からも読み取れる。売上高が8440億円(前年度比6.8%増)、経常利益が292億円(20.0%増)、純利益が171億円(26.8%増)と、他社と同様にエアコンやテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの買い替え需要に支えられて好調だったが、注目すべきは非家電だ。

 ゲーム(19.3%増)、酒類(20.3%増)、医療品・日用雑貨(27.9%増)、スポーツ用品(23.7%増)、メガネ・コンタクト(11.4%増)など、非家電分野の伸びがいずれも著しかった。18年に入ってからも、8月にビックカメラ初の単独リカーショップとなる「ビックカメラリカー アクアシティお台場店」をオープンするなど手を緩めない。
 
「アクアシティお台場店」は約70平方メートルのコンパクトな売り場に約2000アイテムの酒類が並ぶ

 酒類販売ではヨドバシカメラも12月14日に新宿西口本店の地下2階に同社初となる酒類専門店「ヨドバシ酒店」をオープンして参戦した。先行する13日からネット通販「ヨドバシ・ドット・コム」でも取り扱いを開始し、酒類の全国無料配送に対応した。
 
18年12月にヨドバシカメラも酒類事業に新規参入

 ヨドバシカメラの森裕輝・食品飲料事業部部長は、「以前から店舗やウェブのお客さまから『なぜヨドバシでお酒を扱っていないのか』という要望が多かったので、ようやく対応できるようになった」と、満を持しての参入だったことを明かす。

 ネット通販のヨドバシ・ドット・コムでは一気に酒類だけで約7000アイテムを扱うが、店舗では約225平方メートルの売り場に約1500種類を揃える。その狙いについて森部長は「店舗では販売員が酒類の勉強をして知識を重ねながら、アイテム数を徐々に広げていきたい」と語り、リアル店舗では接客を重視してネットとの差異化を図る考えを示した。
 
ヨドバシ酒店では約1500アイテムの酒類を揃える

 ヨドバシ・ドット・コムは、ネット通販でアマゾンと互角に張り合うほど家電業界の中でも群を抜いているが、ビックカメラもネット通販事業に力を入れる。

 10月1日にECの物流体制を全国2拠点に増強。千葉県船橋市の1拠点だけだった物流センターを、新たに大阪・堺市でも稼働させて、関東の一部地域で実施していた「当日・翌日配送」を、大阪市内の一部エリアから開始して順次、拡大していく。関西の家電流通関係者も「堺の物流センターがオープンしてからビックカメラの関西向けの出荷量が一気に増えた。ECへの影響は明らか」と証言する。

 大阪でいえば、20年初春に向けて、エディオンとヨドバシカメラの南北での戦いが待ち構えている。「ミナミ」で先手を打つのはエディオン。19年夏に同社最大級の「エディオンなんば本店(仮称)」をオープンする予定だ。
 
19年夏のオープンに向けて工事が進む「エディオンなんば本店(仮称)」

 場所は、大阪市中央難波3丁目の旧市立精華小学校跡地。百貨店の「なんばマルイ」に隣接するエリアで、既にビルの上にはエディオンの看板が掲出されている。地下1階から地上9階で、売り場面積は1万5735平方メートルとなる見込みで、「エディオン広島本店」の本館と新館の2館あわせた約1万5510平方メートルを上回る。

 同店の周辺は、家電量販店の激戦区だ。すぐ裏手にある千日前商店街には「ビックカメラなんば店」があるほか、目の前の南海電鉄のなんば駅を沿うようにして建つ「なんばパークス」の先には、ヤマダ電機の都市型店舗「LABI1なんば」がそびえたつ。そこから少し足を延ばせば、地元・上新電機の「ジョーシン日本橋1バン館」などが立地する日本橋エリアが広がる。

 一方の「キタ」では、ヨドバシカメラが20年初春のオープンに向けて「マルチメディア梅田」の裏の「ヨドバシ梅田タワー(仮称)」の建設工事を着々と進めている。同タワーには地上9階から35階に客室数約1000室の阪急阪神ホテルズが入る予定だ。エディオンとヨドバシカメラが狙っているのは、大阪のインバウンド需要の取り込みである。
 
20年初春のオープンに向けて開発が進む「ヨドバシ梅田タワー(仮称)」

 18年6月の大阪北部地震や9月の台風21号で関西国際空港が閉鎖するなど、一時はインバウンドの客足が遠のいて大阪経済への影響が心配された。しかし、比較的回復が早く、10月はインバウンドの客数も前年を上回った。2025年国際博覧会(万博)の大阪開催が決定したことで、エリアが活気づくのは間違いない。

 ヨドバシカメラがヨドバシ梅田(マルチメディア梅田)をオープンしたのは2001年11月。同年5月にビックカメラなんば店がオープンしており、当時は、東京のカメラ系家電量販2社の大阪進出が大きな話題になった。約20年ぶりの「大阪の陣」も話題を集めそうだ。(BCN・細田 立圭志)