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ヤマダ電機、インショップ型店舗にみる「テックランド」の新戦略

 ヤマダ電機は、従来の郊外型家電専門店だった「テックランド」から、住宅やリフォーム、日用雑貨を融合させた「家電住まいる館」への業態転換を急いでいる。その一方で、新規出店ではテックランドの新戦略ともいえるスーパーやGMSにインショップで展開する形をとっている。9月28日に神奈川県横浜市でオープンした「テックランド イオンフードスタイル港南台店」も、そんな出店戦略に沿った店舗だ。

3階にヤマダ電機のテックランドが入る「イオンフードスタイル港南台店」

商圏の約半分が2~3人世帯のファミリー層

 同店は、JR根岸線の港南台駅の駅前にある地下1階~地上4階建ての旧ダイエー港南台店が、9月28日にリニューアルオープンした「イオンフードスタイル港南台」の3階に店を構える。同じフロアには、メガネショップやPC教室、スポーツ用品、寝具、フィットネスクラブなどが並ぶ。

 地下1階は、生鮮食料品や総菜、お酒、ワインなどが売られている。1階は、「港南台キッチン」と呼ぶ、約500席の開放的なフードコートが広がる。フードコート用の飲食店として、マクドナルドやうどんの丸亀製麺、ラーメンの魁力屋、ちゃんぽんのリンガーハット、KFCなど7業態のテナントが入っている。隣接するファミレスのサイゼリアも、窓や壁の仕切りが少ない開放的なつくりだ。
 
1階のフードコートは約500席のオープンなスペースが広がる

 なお、2階に衣類や雑貨、生活用品、4階に100円ショップやトラベル、リラクゼーション、クリニックなどが入っている。

 「イオンフードスタイル」のコンセプトは、「料理したい」「食べにいきたい」「健康でありたい」と地元客に思ってもらうための商品やサービスを提供するというもの。店舗から1キロメートルの商圏内には約3万人、1万3000世帯が暮らす。60代の年配層ばかりでなく、最近は駅前にマンションが建ったり、住宅地に新築の戸建てが建ったりということで、30代のニューファミリー層や40代も暮らしており、全世帯の約半分が2~3人世帯で占めるという。
 
開放的な売り場の「テックランド イオンフードスタイル港南台店」

 ヤマダ電機の売り場も、店舗入口に壁や仕切りがなくオープンなつくりになっている。売り場は、壁面に沿ってL字型にレイアウトされ、約1252平方メートルの売場面積と小ぶりながらも、テレビやAV機器、季節家電、スマートフォン、冷蔵庫、洗濯機、調理家電などの人気商品を揃えている。駐車場は共用で313台が停められる。従業員は約20人体制だ。
 
オープンを前に目当ての商品を購入しようとチラシを手に並ぶ地元の顧客

 オープン当日、金曜日の平日とあって、年配客の様子が多くみられ、午前9時の開店時間を前に、既に長蛇の列ができていた。先着400人に振舞われたオープン記念の「シマヤだしの素」は、開店から30分程度で配布完了。その後も行列が続いた。来店記念品は3日間で合計1000個を用意するなど、地元客にとっての期待の大きさがうかがえた。
 
開店から約30分で400個の来店記念品の配布が終了

 港南台周辺は、車で足を延ばせばテックランド横浜本店(港南区下永谷)やLABI上大岡、テックランド戸塚店、テックランド磯子店などがあるが、車に乗れない年配客にとって、周辺の家電量販店といえばノジマNEW港南台店ぐらいしかなかった。駅前にテックランドがあれば、仕事帰りや夕方の買い物ついでに立ち寄るケースも増えるだろう。

 それまでテックランド磯子店に勤めていたこともあって地域に明るい村田秀司店長は、「皆さまが出入りしてお買い物をしやすい売り場にして、小さな店だけどお客さまに喜ばれる厳選された人気商品を品揃えした」と語る。
 
地域に明るい村田秀司店長
チラシに掲載されたエアコンの説明を聞く来店客

ヤマダホームズとの連携は?

 港南台駅から200mほどのすぐ近くには住宅展示場があり、10月1日付けでグループの住宅・建築関連の連結子会社4社を合併したヤマダホームズのスマートハウスが展示されている。

 店舗の規模が小さいこともあり、テックランド イオンフードスタイル港南台店では住宅関連の商材を大きく扱うことはできず、住宅展示場と密接に連携できないのは少し残念な点だが、そこは3月21日にオープンした売り場面積6933平方メートルを誇る家電住まいる館 YAMADA 横浜金沢店との連携でカバーする。

 最近増えているインショップ型の出店について、「当社は家電で集客ができるテナントとして(スーパーやGMSなどからの)評価も高い」(ヤマダ電機広報)という。イオンスタイルや西友とのコラボが多いように見受けられるが、その点については「とくに特定しているわけではなく条件次第」とし、今後も条件があえばインショップ型の出店を加速していくとみられる。(BCN・細田 立圭志)