2017年、繰り返し話題となった「格安4Kテレビ」。6月にドン・キホーテが50型で5万4800円(税別、以下同)という商品を発売し、10月にはノジマが49型・5万3800円でこれを追撃。11月末にはグリーンハウスが50型・4万9800円、ディスカウントストアのミスターマックスが49型・4万8800円と、各社が競うように大型4Kテレビの安値を更新する製品を発表していった。

 これらのうち、50型としては最安値で、早々に完売となったグリーンハウスの製品は、同社直販サイト以外ではゲオの専売商品として流通したことも異色だった。DVD・CDレンタルやゲーム販売を主力とするゲオが、あえてこのタイミングで大型家電の販売に乗り出したのはなぜか。ゲオで家電販売事業の企画を担当するメディア商品部 メディア商品4課の鍋倉正嗣マネージャーに、今回の取り組みの背景を聞いた。
 
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ゲオが12月13日に発売した「業界最安」の50型4Kテレビ「GH-TV50A-BK」(グリーンハウス製)

話題性のある商品の取り扱いで新規顧客層を開拓

 ゲオの親会社、ゲオホールディングスが11月30日に発表したニュースリリースは、今回の4Kテレビ販売について「ゲオショップ初の大型家電取り扱い」と題しており、同社の事業をレンタルやソフト販売から、ハードウェア販売にも拡げていこうとする姿勢を感じさせる内容だった。

 同社直近の決算(2018年3月期第2四半期)は売上高で過去最高、営業利益で前年同期比180.2%と好調だったが、その要因は任天堂の「Switch」やゲームソフトの話題作などで、言わば“特需”によってもたらされた好業績だった。コンテンツ市場においてはパッケージメディアからネット配信へのシフトが進んでいるし、ゲームの世界でもスマートフォンアプリの比率が高まっている。新たな事業領域を開拓していかなければ、会社の将来性に黄信号がともりかねない環境にある。

 このため、今年度から新たな試みとして、物販での取り扱い商品カテゴリの拡大を検討。売り上げアップもその目的のひとつではあるが、これまでゲオを利用していない新たな顧客を店舗に呼び込みたいという意図も大きい。

 同社の事業構造について鍋倉氏は「ゲオの事業は会員制のビジネスモデルだ」と説明する。レンタルビジネスでは、DVDやCDのメディアそのものを顧客に貸与するため、本人確認を行った会員が顧客基盤になる。もちろんゲームなど物販利用のみの顧客もいるが、リピート利用の期待できる客層を増やしていくためには、新規会員の継続的な獲得が重要となっている。

 さまざまな商品を検討するなか、ポータブルDVDプレイヤーなどでゲオと取引のあったグリーンハウスから、年末商戦に向けて格安4Kテレビを準備中という情報が入り、ゲオがねらう新しい物販事業にうってつけの商品ということで取り扱いが決定した。

 「当社が主力としているDVDやゲームは、当然だが、テレビがなければ楽しむことができない商品。また、売り場にも予告映像などを上映するテレビが設置されており、多い店だとその数は20台にも上る。ゲオにテレビがあるのは何も不自然ではない。その意味で、テレビはこれまでの当社の事業とも非常に親和性の高い商品だと考えた」(鍋倉氏)
 
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ゲオ メディア商品部 メディア商品4課 鍋倉正嗣マネージャー

 12月13日の発売時には、「ゲオショップ」約50店舗に加え、2010年にゲオの100%子会社となった(現在はゲオに吸収合併)リユースショップ「セカンドストリート」約300店で計1700台を販売。また、同社ではこの日、中古スマートフォンなどを販売するECサイト「ゲオモバイルオンライン」を、ゲームなども取り扱う「ゲオマート」にリニューアルしており、オープン記念の目玉商品として300台を販売した。

 「格安4K」の販売はねらい以上の反響を呼び、発売日には開店前の行列だけで入荷分が完売してしまう店もあったという。ECサイトでは1日以内、その他の店でも遅くとも入荷から3~4日で完売となった。

 「私も発売当日にある店舗の様子を見に行ったが、大型テレビが格安で買えた喜びを誰かに伝えるためか、駐車場までテレビを一緒に運んだ店員に、スマホで記念撮影を依頼されたお客さまがいらっしゃった。正直、この価格では収益面はギリギリだが、儲ける儲けないの話よりも、お客さまがこれだけ喜ぶ商品をお届けできたことが、私としても嬉しかった」(鍋倉氏)
 
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店頭では「日本最安値」を大きく打ち出した(一宮インター店)

試行中のアイテムではドラレコがヒット

 最初の打ち上げ花火は成功となったが、課題となるのは次の一手だ。これはゲオに限らない課題だが、格安4Kテレビの調達は部材供給や製造委託先の状況に大きく左右される。あるタイミングで数千台が届き、次に来るのは数カ月先、という動きになるため、常に店にある状態にはなり得ない。大手メーカーが定番商品として揃えている4Kテレビとは大きく異なる点だ。

 ただ、鍋倉氏は「今年度、テスト的にいくつかの商品を店頭で販売してきたが、ゲオで売れるものはいろいろあることがわかった」と話し、時期によってさまざまな商品を組み合わせることで、ゲオ各店における物販売り上げを徐々に高めていけるという見通しを示す。

 例えば、今年ヒットとなったのがドライブレコーダー。カー用品店が推すのは1万円以上の製品だが、ゲオでは5000円前後のエントリーモデルを販売し、好評を得た。一部店舗でのテスト販売の後、現在は取扱店を一気に拡大して全国約700店舗で販売している。「高付加価値の商品を求める方は専門店に足を運ばれると思うが、専門店へ行かないお客さまにも大きな需要がある商品は多いと考えている」(鍋倉氏)。そのほか、耳にかけると周りの音を大きく聞けるシニア向け機器「集音器」も人気を集めた。

 家電量販業界では近年、「『モノ』売りから『コト』提案へ」というビジネスモデルの転換が盛んに叫ばれている。消費者の嗜好が細分化する一方、圧倒的な品揃えを誇るECサイトが台頭した現代、単純な商品販売ではもはや店舗の独自性を発揮することはできない。商品そのものよりも、その利用シーンを軸に提案を図り、関連するサービスなどをトータルで提供することで、顧客1人あたりの収益性を高めていくべきという考え方だ。

 その一方で、「ジェネリック家電」と呼ばれるような低価格の家電や、単機能のシンプルな家電がヒット商品になるという現象も生まれている。高付加価値の訴求という、供給側の論理と、消費者が本当に求めているものの間に、ギャップが生じているようにも見える。ゲオの家電販売事業は、このギャップを埋めるような商品を揃えていく戦略をとるようだ。“本業”である会員制ビジネスに好影響を与えられるのであれば、家電販売で無理に売り上げや利益を追求しなくても良いという点も同社の強みとなる。

 また、「ゲオ」ブランドの直営店だけでも店舗数は全国1000店以上に上り、しかも前述の通り、属性を把握しているレンタル会員が顧客層の中心。メーカーにとっては、正確なマーケティングデータを取れる販売チャネルとしても魅力的だ。レンタルビジネスのノウハウを活用すれば、家電をレンタル提供して気に入った客にはそのまま販売、といったサービスも提供できるだろう。まだまだ規模は小さいが、ゲオが家電販売事業をどのように発展させていくのか、今後の動きに注目したい。(BCN・日高 彰)