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CCCの武井総司家電企画事業部部長、毎日2万人が来る「蔦屋家電」の秘密とは

 雑誌と家電を融合した斬新な売り場を展開して、世の中に小売業の新しいあり方を問うた東京・世田谷の「二子玉川 蔦屋家電」。2015年5月のオープンから売り上げは伸び続け、平日は2万人、休日は2万5000人の顧客で賑わう。オープン2年前から企画に参加してコンセプトを練り上げたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の武井総司 家電企画事業部部長が、蔦屋家電の成長の秘密を明かす。

取材/日高 彰、文/細田 立圭志、写真/瀬之口 寿一


CCCの武井総司家電企画事業部部長

■家電流通に一石を投じて2年
 毎日2万人が来る「蔦屋家電」の秘密

家電量販店の5分の1の品揃えで
なぜ売上高は伸び続けるのか

―― 蔦屋家電で雑誌と家電を一緒にした売り場を最初に提案されたときは、正直、この二つがマッチするのか疑問もありましたが、2年がたっても継続的に話題になっています。

武井 店内を見ていただければ分かりますが、本や雑誌はありますがコミックは一冊もありません。売り上げだけを追い求めればコミックを置く方が手っ取り早いですが、そうしていません。代わりにアートやインテリア、生活、食、料理などの絞ったカテゴリに関しては、洋書を含めて幅広く取り揃えています。ですので、普通の本屋と家電店をくっつけただけではありません。出版社から送りつけられてくる本は一冊ごとに選書するので、返本のほうが多いぐらいです。雑誌や本、家電が売れる、売れないではなく、お客様のライフスタイルの変革こそが、われわれの大切なコンセプトだからです。
 

―― 雑誌を読んで時間を過ごすと顧客の滞在時間は長くなりますが、収益に結びついているのでしょうか。

武井 家電量販店では、売上高のピークは新規出店の時で、その後は年々前年割れをするようですが、蔦屋家電の売上高はオープンしてから2年がたつ今でも伸び続けています。毎日約2万~2万5000人の方が来店されます。これは当初の想定を上回る数字です。悪く言えばセレクトショップ的な感じもあって、コンセプトとマッチしないお客様もいるのではないかと想定しましたし、また、通常の家電量販店と比べて、5分の1の品揃えしかありませんので。

―― エディオンの久保允誉会長は、広島のエディオン蔦屋家電のオープン時の記者会見で、家電の売上高は約9割と述べていますが、蔦屋家電も同じでしょうか。

武井 本と家電では単価が違うので、そのぐらいになるでしょうね。ブック&カフェスタイルで席数も圧倒的に多いので、確かに滞在時間は長いですし、多くのお客様が月に2回は来店されるなど、来店頻度も高いです。ですので、商品は入荷したらすぐに売れるような状況で、売り場もしょっちゅう変えていかないと新鮮さが落ちるので頻繁に変更しています。もっとも、広島と合わせて、まだ2店舗しかないですし、正直、ロットが小さいということもありますが、われわれと共通の価値観を持つメーカーと協力することで販売は順調に伸びています。

Tカードのビッグデータで商圏の顧客ニーズを反映

―― 想定を上回る顧客が訪れる要因は何でしょうか。

武井 創業者で社長の増田(宗昭)は「コンセプトが決まっていれば、オープン準備なんて3日でいい」とよく言います。大事なのは、どういうお客様にどのようなサービスを提案して、ライフスタイルをどう変えるのかというコンセプトです。このコンセプトワークに、ものすごく時間を費やします。

 物件が決まってから1年ぐらいかけて、徹底したブレストや分析を積み重ねて、その商圏に住むお客様に何が必要とされているかを一からプランニングするので、広島と二子玉川では雰囲気やコンセプトは似ていても中身は違うことが分かると思います。立地のいい物件が決まったからすぐに出店するのとは真逆のスタイルです。

―― プランニングする際にTカードのT会員のデータが大きく寄与しているのですね。

武井 6373万人(7月末現在)という、国民2人に1人が持つTポイントを使ったデータベース・マーケティングはわれわれの大きな強みです。もともとはレンタルビデオのカードですから住所と年齢は確実に把握できます。個人を特定することはできませんが、そのエリアに住む人がどのような映画や雑誌、本に興味を持っているかが分かります。雑誌や本にはたくさんのライフスタイルが載っているので、Tカードの過去の履歴を見ると、その人の趣味や嗜好の傾向値がつかめるのです。
 

Tポイントを使ったマーケティングが強みと語る

 雑誌の中身は、特集だけでなくすべてのタイトルが把握できます。またメーカーはTカードのデータとリアル店舗を使ってテストマーケティングもできます。

―― 具体的には。

武井 蔦屋家電に来店されたお客様のTカードをスキャンすると、どのようなライフスタイルに興味を持っているかが分かります。例えば、あるメーカーの試作品に興味を持つ一定数のお客様が、同じ雑誌を定期的に購読していれば、その雑誌に広告を出した方が早いのです。また売り場をつくる際は、その雑誌の世界観や風景をそのまま反映させます。そうすると、商品の右側に緑の植物を置くなどレギュレーションがつくりやすくなります。テストマーケティングしながら販売までサポートするのもわれわれの仕事です。データベースと新しいメーカーの商品、プラットフォームである蔦屋家電のリアル店舗のトライアングルがうまく機能しているのは、われわれCCCだけで、それこそが「企画会社」という概念の本質なのです。

<「だから家電は面白い」 売上高の半分が独自調達>に続く
 
■プロフィール
武井総司(たけい・そうし)
1974年生まれ。アメリカ・カリフォニア州出身(生まれは大分県日田市)。98年にカルチュア・コンビニエンス・クラブに入社。TSUTAYA店舗インストラクター、FC事業本部中四国支店長を経て、2014年に二子玉川 蔦屋家電の出店プロジェクトに参画。16年より家電企画事業部で店舗企画のみならず、幅広く家電事業のインフラづくりに携わる。17年1月より同部長(現任)
 
◇取材を終えて

 Tカードで得た購買履歴を駆使すれば、一人ひとりの顧客に対して、“売れる”と判断された商品をプッシュ提案することも可能ではないだろうか。武井部長に聞くと「将来的に取り組む可能性はありますが、今はまだやっていません」という。マーケティングの自動化で短期的な売り上げアップは達成できるかもしれないが、押し付けるような提案は顧客体験の質を下げかねない。“売れる”ではなく、“顧客の生活が変わる”商品をデータからはじき出せるようになれば、蔦屋家電もレコメンド型のマーケティングを始めるのかもしれない。(螺)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年10月号から転載

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