東芝の経営再建問題でメルコHDが今期業績予想を非開示

経営戦略

2017/05/08 15:54

 メルコホールディングスは、5月8日に開催した2017年3月期の決算説明会で、2018年3月期の業績予想を非開示にすると発表した。理由は、同社の売上高の31%を占めるHDDを中心とするストレージ事業で、部材の調達先の1社である東芝の事業再編の不透明感が強まっているためだ。


メルコホールディングスの松尾民男副社長

 業績予想の非開示は異例であり、松尾民男副社長は「大手家電メーカーのHDDは品質と供給量、価格面で安定していたが、これまで通りとなるかまったく不透明な状況になった」と話した。東芝のほか、Western Digital、SeagateからもHDDの部材を調達しているが、2015年の不正会計問題から端を発した、東芝の経営再建問題の行方によっては需給バランスが崩れる可能性が高い。

今年1月~3月にかけて環境が急変

 メルコホールディングスでは、例年通り、昨年12月から1月にかけて今期の事業計画を固めたが、その時点から3月をみただけでも、数字が大きく乖離している状況だという。「売上高でワーストケースは700億円から順調なケースで1000億円超。営業利益は20億円から60億円までぶれる。どの理屈も想定はできるが、着地の判断は、かえって投資家に誤った判断を与える」と、非開示の理由を説明した。

 東芝は、4月11日に二度延期した2016年4月~12月期決算発表を、監査法人の承認を得ずに発表。原子力事業などで最終損益は5325億円の赤字となり、自己資本は16年12月末時点で2256億円の債務超過に陥った。

 経営再建に向けて、白物家電事業を中国家電大手のマイディアグループ(美的集団)に売却し、さらに、稼ぎ頭のNAND型フラッシュメモリを製造する半導体事業の売却に奔走している。買収先として、鴻海精密工業やAppleなどの名も挙がっているが、最先端技術の国外流出を恐れる政府による仲介も取りざたされる。

 東芝のHDD事業の具体的な計画は示されていないが、半導体事業売却には合弁生産パートナーのWestern Digitalも絡むだけに、HDD事業の再編にも影響を及ぼすとみられる。メルコホールディングスは、予測可能となった時点で業績予想を公表するとした。(BCN・細田 立圭志)