【不定期連載・重みを増す「ネット対策」~今、起きていること】 サンプルサイトと呼ばれる、さまざまなジャンルの商品を試せるサイトがある。メーカーからサンプルの提供を受け、Webサイト上で紹介し、申込者が指定した住所に配送する仕組みで、コンセプトは「お試し」だが、実際には格安販売サイトだ。

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2大サンプルサイト、「サンプル百貨店」と「モラタメ.net」
 

【連載第3回】「買う」ではなく「試す」 購入のハードルを下げるコト提案
おすそ分けで広がる口コミにも期待

 

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 取り扱いカテゴリは、食品や飲料を中心に、ロボット掃除機や調理家電などの家電製品やモバイルケーブルなどのアクセサリ、電球などの日用品、美容院などの体験サービスまで幅広い。口コミを投稿するとポイントがたまるなど、口コミサイトとしての側面もある。

 モニタサイトやポイント制サイトでも同様のサンプル提供を行っており、メーカーが運営するコミュニティサイトやオンラインショップの一部でも、自社製品のモニタ販売を実施している。こうしたユーザーと企業が直にコンタクトできるサービスの台頭は、ただモノを売るだけのオンラインショップ・店舗の隠れた競合といえるだろう。

物販系ECの市場規模は約7兆円、うち約3割がスマホ

 2016年6月に経済産業省が発表した「2015年度の電子商取引市場の調査の結果」によると、食品・飲料や生活家電、AV機器、書籍、映像・音楽ソフトなど、いわゆる「モノ」を対象とした物販系ECの市場規模は7兆2398億円で、前年に比べ4356億円増えて、初めて7兆円を超えた。伸び率は前年比で164.0%に達し、旅行やチケット販売などのサービス分野の193.7%、電子書籍や音楽配信、動画配信などのデジタル分野の180.9%ほどではないものの、着実に伸びている。また、物販系ECのうち、約3割がスマートフォンによるものだと推計している。
 
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※BtoC-ECの市場規模…個人消費のうち、インターネットを通じて行われた取引の金額を示す。決済方法は問わない

 サンプルサイトの代表は、「サンプル百貨店」と「モラタメ.net」だろう。食品のみだが、口コミ投稿サイトの「もぐナビ」も、メーカーから提供された商品を配送関係費のみで提供している。「モラタメ.net」の場合、商品自体は0円で、負担は「送料関係費用だけ」と強調。「サンプル百貨店」は、送料込みのお試し費用として、金額を提示している。送料込みでも、通常と同じか、安い場合がほとんどだ。

 メーカーは、属性情報やダイレクトな口コミを得ることができ、ユーザーは、新たに会員情報やクレジットカードの情報などを入力することなく、普段、店頭では見かけない珍しい商品や話題の新商品を手に入れることができる。

 サンプルサイトの場合、「買う」と「試す」という言葉の違いによる、心理的ハードルの低さも強みだ。特に、食品・飲料などは、たいてい、ケース単位などの大量販売となるため、一個あたりの単価は通常よりもかなり安い。とはいえ、数が多く、自分や家族だけでは賞味期限内に食べきれない分量が届くので、親戚や友人、会社の同僚などに配るユーザーが多いそうだ。メーカーは、そうした「おすそわけ」による広がりも期待して、サンプルを提供しているというわけだ。
 
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送料負担に見合った大量販売・セット販売が基本だ

 デメリットは、いわゆる通信販売ではないため、破損時などを除き、原則、返品できないこと。販売が終了した旧機種や賞味期限目前の飲食品も多く、一部のメーカーは、サンプルサイトを、新製品のPRではなく、余剰在庫の処分に利用しているようにもみえる。

 こうしたサンプルサイトも、広がるEC市場の一角を担う。製品化のための資金を募り、一定額に達すると販売するクラウドファンディングとも共通する特徴は、「期間限定」「先着・数量限定」といったイベント性と、メーカーとユーザーとの近さ。EC市場の拡大の要因の一つは、スマートフォンの普及やITリテラシーの向上、共稼ぎ世帯の増加といった環境要因だけではなく、買う/選ぶ行為を「楽しい」と感じさせる「仕掛け」にある。(BCN・嵯峨野 芙美)