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<エアコンメーカー座談会・2017>「省エネ」の次のキラーワードは?

特集

2017/02/24 18:00

 家電量販店の売上高で高い構成比を占めるエアコン。IoTやデザインなど、先進的な取り組みに注目が集まるが、実際の顧客ニーズとは乖離があるようだ。「省エネ」の次の
キラーワードは何か、各社は試行錯誤を重ねている。

エアコン市場の動向とトレンド

省エネ意識はやや低下 次なる訴求ポイントは?

 日本冷凍空調工業会(JRAIA)の発表によると、2016年の家庭用ルームエアコンの国内出荷台数は、前年水準付近を行ったり来たりし、平均すると微増。前年比103.1%の835万台だった。

 長年、エアコン購入基準の上位項目であった「省エネ」だが、各メーカー担当者は徐々に意識が薄れつつあると語る。現在は「快適性」を求める顧客が多く、要求に応えるべく付加機能を模索しているという。
 

家電量販店のエアコン売り場

 各社の切り口はさまざまだ。エアコンとしての本質である空調性能に寄与する独自気流から付加機能としての空気清浄まで、自社の強みを生かしたアプローチを図る。省エネならば、ゴールは一つだが、何をもって快適とするかは個人によって認識が異なる。座談会参加者からは、「ユーザーのニーズが多様化しており、多くの需要を満たす機能を見極める必要がある」という意見があがった。

 ユーザー意識の変化を受けて、各社が力を入れているのが「分かりやすさ」の追求だ。顧客に対してはもちろん、販売員が売り場で説明しやすいように、販促物や研修体制を強化。故障による買い替えが多数を占めるなかで、指名買いを引き出すためにはどうすべきか、工夫している。

 ただ、エアコン売り場は設置形態が限られ、コト軸の提案が難しいという問題がある。したがって、イメージやコンセプトを訴求し、ブランド力の強化に注力しているメーカーは多い。フラッグシップだけでなく、幅広いラインアップをブランドに包括するなど、まずは認知を高めることを重視する。
 

シャープの健康・環境システム事業本部空調・PCI事業部第一商品企画部の南條博紀主任

視線集まるIoTやデザイン 需要喚起には時間が必要

 スマートフォン連携を軸とするIoTやインテリア空間に馴染むデザイン、これらは他の白物家電同様、エアコン業界でもトレンドになっている。しかし、周囲の盛り上がりをよそにメーカーサイドの見方は厳しい。

 まず、IoTは需要の喚起が十分にできていないこともあるが、機能拡張や収益化が現時点では難しいという問題がある。「スマホ連携はハードルが高い。エアコン単体で普及を目指すのは難しいだろう」。これは各社ともに共通見解だった。また、成長が早い領域ゆえに、新製品に採用した機能が2~3年で時代遅れになってしまう懸念もある。当面の課題はいかに他の家電を巻き込み、一貫したソリューションを提供できるか。まだまだ普及に向けた障壁は累積している。
 

ダイキン工業の空調営業本部事業戦略室の谷内邦治住宅用事業担当課長

 次にデザインだが、こちらは他社と差異化したい(=売り場で目立たせたい)という思惑はあるものの、実際に自宅に設置するには難があるというジレンマを抱えているようだ。コンセプト商品としてはともかく、「売れるモデルにする」ためのハードルは高い。

 しかし、例に挙げた2例は今後の市場を活性化する上で、避けられないトピックでもある。実用性に適ったモデルケースの創出が待たれる。(BCN・大蔵 大輔)

 
<エアコンメーカー座談会・2017>
開催日:2017年1月25日
場所:BCN 会議室
参加メーカー:シャープ、ダイキン工業、東芝ライフスタイル、日立ジョンソンコントロールズ空調、富士通ゼネラル(50音順)

▼記事一覧
https://www.bcnretail.com/market/detail/20170224_42313.html
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年3月号から転載