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エントリークラスでも“全方位が聞こえる”、オーティコン補聴器の「Oticon Zircon」が革新的な理由

販売戦略

2022/05/13 17:00

 難聴者にとって欠かせないツールである補聴器は、ここ数年で目覚ましい進化をみせている。高性能チップやAIを搭載することによって音の聞こえ方はより自然なものとなり、小型軽量化によってライフスタイルに溶け込むデバイスとして洗練されてきた。

 ただ、最先端テクノロジーの恩恵をしっかりと享受できるのは、これまでグレードの高い補聴器に限定されていた。性能や機能に惹かれつつも予算の都合で手が出なかったユーザーも多いはずだ。そんな人にこそ注目してほしいのが、4月14日に発表されたオーティコン補聴器の「Oticon Zircon(オーティコン ジルコン)」だ。エントリークラスの補聴器で搭載機能によって価格が異なる「ジルコン1」「ジルコン2」の二つのモデルを用意。スタイルは耳かけ型4種類、カラーは5色を展開する。
 
エントリークラスながら360°の聞こえを作り出す
「Oticon Zircon(オーティコン ジルコン)」

エントリーでハイエンドと同じプラットフォームを採用

 Oticon Zirconはオープン価格で販売されているため、正確な価格は記載できないが、普及価格帯の補聴器の価格は片耳で「15万~18万円」というのが主流(総務省「小売物価統計調査」を参照)。Oticon Zirconもそのレンジに該当する。ちなみに補聴器メーカー各社のハイエンドクラスは100万円近くすることもある。

 Oticon Zirconが革新的なのは、エントリークラスながらハイエンドクラスのOticon More(オーティコン モア)と同じ「ポラリスプラットフォーム」を搭載しているということだ。これにより従来のエントリークラスにおける聞こえ方の水準を大きく引き上げることに成功した。
 
最近の補聴器の処理性能は想像以上に高いレベルに達している。
「ポラリスプラットフォーム」はそのなかでも特に先進的だ

 「ポラリスプラットフォーム」の根底にあるのはオーティコン補聴器の前世代チップから共通する「ブレインヒアリング」という考え方だ。われわれは普段耳で音を聞いていると認識しているが、実際は耳で拾った音を脳が処理することで何の音を聞いたのかを認識している。オーティコン補聴器はそのメカニズムに着目し、音の情報をいかに正確に脳に届け、理解できるかにフォーカスした。
 
オーティコン補聴器が重要視している「ブレインヒアリング」という考え方

 その象徴ともいえるのが、ユーザーの360°の聞こえを処理するオープンサウンドナビゲーター(「ジルコン1」にのみ搭載)。従来の補聴器は一方向(たとえば会話している相手)の音を拾うことに特化した指向性のものが一般的だったが、オーティコン補聴器は全方位の音を拾って処理することで、音の全体像がくっきりと認識できるようになった。

 具体的なシチュエーションをあげてみよう。たとえば、大人数の集まる会食の場で前方の人と会話しているシーンを想像してみてほしい。指向性の補聴器だと会話相手の声は聞こえるものの、周囲の音は閉ざされている。もしかすると後ろの人が話しかけているかもしれない。左後ろからウエイターが食事を運んできているかもしれない。全方位の音を拾う補聴器であれば、こうした周囲の状況も常に把握することができる。
 
指向性の補聴器・Oticon Zircon・Oticon Moreの聞こえ方の違い

 安全性という観点からみても、オープンサウンドナビゲーターによる恩恵は大きい。指向性の補聴器だと外を歩いていて後ろから車が迫ってきていても、気が付かない、あるいはどの方角から来ているのか分からないということがある。しかし、オープンサウンドナビゲーターであれば周囲360°からの聞こえが担保されるので、こうした不安が解消される。

 360°という表現の補聴器は他社も展開しているが、これは「360°から特定の一方向の音に指向性を合わせる」もので、「同時に複数の音にアクセスする」のがオーティコン補聴器の特徴だ。ブレインヒアリングをはじめとした聞こえ方の本質まで捉えて開発を行っているからこそ、音の自然さや精度の高さは卓越したものになっている。現時点(2022年5月)でエントリークラスにおいて全方位の音を処理できるモデルがOticon Zircon以外に出回っていないことからも、同社が一歩抜きん出ていることがうかがえる。
 
オーティコン補聴器はデンマーク本社に聴覚の研究センターを構えている。
聞こえに関する基礎研究をリードし、
豊富なエビデンスが多数あることも高い信頼につながっている

ライフスタイルに寄り添った最新テクノロジー

 また、Oticon Zirconは最新テクノロジーを多数取り入れることで、より現代のライフスタイルに寄り添った使い方が可能となっている。たとえば、スマートフォンとの連携機能を使えば、ハンズフリーで電話したり、聞こえ方をアプリ経由で調整したりできる。さらにオーティコンのリモートケアアプリを用いれば、販売店を訪問することなく、補聴器の調整者とオンラインでつながり、補聴器のフィッティングを行うこともできる。
 
スマホ連携で生活の利便性が上がる機能を搭載

 Oticon Zirconでは、ハイエンドクラスのOticon Moreに搭載されている音楽を楽しむためのプログラム「Oticon MyMusic(オーティコン マイミュージック)」も使用可能だ。補聴器は基本的に会話の聞き取りを重視するため、音楽視聴となると表現力に欠ける部分があったが、Oticon MyMusicであれば広い周波数帯での強弱や繊細な音の変化までしっかりと再現することができる。補聴器ユーザーにとっては、楽しみが広がるうれしい機能だ。
 
音楽視聴に特化したモードを用意するなど、
これまでの補聴器にはない新しいアプローチも目立つ

 今回はエントリークラスのOticon Zirconに焦点をあてたが、もっとも先進的なOticon Moreも4月にラインアップを拡充した。ミニBTEスタイルが追加されたことで、ユーザーのより細かいニーズに対応できるようになった。新たなミニBTEスタイルでは3.5時間の充電で1日の使用が可能な充電式タイプと従来の空気電池タイプの2種類が用意されている。
 
最上位モデル、世界初の人工知能搭載補聴器「Oticon More(オーティコン モア)」は
4月にラインアップを拡充。見た目はOticon Zirconとほとんど変わらない

 Oticon Zirconで360°のオープンサウンドナビゲーターがもたらす新しい聞こえの世界を体験するか、Oticon Moreでその先を行く自然な音の世界を体験するか。予算に合わせて選択できるようになったことは、補聴器の購入や買い替えを検討しているユーザーに大きなメリットになるだろう。販売店では試聴体験なども行っているので、まずはその聞こえの変化が自分自身の生活にどのような影響を与えるか想像しながら試してみてほしい。(BCN・大蔵大輔)