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次世代補聴器「オーティコン モア」は何が凄い? 実際に聞いて分かった世界を一変させるアプローチ

販売戦略

2021/03/12 18:00

 2月24日にオーティコン補聴器が世界初の専用DNNを搭載した補聴器「オーティコン モア(以下、モア)」を発表した。同社は2016年に「オーティコン オープン(以下、オープン)」を発売し、補聴器業界に革新をもたらした。今回の「モア」は「オープン」、2019年発売の「オープン S」の系譜に連なる次世代モデルという立ち位置だ。5年の時を経て、どのような点で進化を遂げているのか。オーティコン補聴器のプロダクトマネジメント部 渋谷桂子氏とアドバンスト・オーディオロジー・センター 高橋礼美氏への取材と実際の試聴から明らかにした。

2月24日にオーティコン補聴器が世界初の専用DNNを搭載する補聴器
「オーティコン モア」を発表(世界初は2020年11月末時点)

 まず、前段として2016年発売の「オープン」について説明しておきたい。当時、同製品が画期的だったのは、一般的な補聴器のスタンダードである「指向性」を脱却し、騒がしいなかでも360°の音を処理する技術を導入したことだ。それまでは騒がしい場所では目の前で話す人の会話には集中できたが、それ以外の周囲の音には注意を払うのが難しかった。それがオープンでは全方向の音が届くことで、目の前の会話以外の声も把握することができるようになった。
 
オープンは賑やかな場所でも「指向性」ではなく、
360°からの音を届けるという新しいアプローチを取り入れた

 この画期的なアプローチの基礎となっているのがオーティコンの補聴器開発の原点にある「BrainHearing(ブレインヒアリング)」という考え方だ。われわれは耳で音を聞くと思いがちだが、実際のところは脳で音を理解している。同社独自の研究から、「オープン」は音を聞く脳の働きを高性能チップによって最大限にサポート。脳への負担を減らし、ユーザーが快適かつ明瞭に音を聞きとることができるようにしている。

さらに近年近年の研究では、脳には周囲の音をそれぞれまとまりとして「捉える」システムと「集中する」システムがあることが判明しているという。このような研究からも、まずは脳で音の情景の全体像を描けるように「周囲のあらゆる音を届ける」という、ブレインヒアリングの考え方に基づく同社の製品開発の妥当性が裏付けされている。
 
近年の研究によって、音を理解する脳の仕組みが判明してきた

 新製品である「モア」もその根底にある考え方はオープンと同じだ。アドバンスト・オーディオロジー・センターの高橋氏は「モアが画期的なのは、DNN(ディープニューラルネットワーク)、つまり脳の神経回路を模した高度な人工知能を世界で初めて補聴器本体に搭載したこと。DNNに1200万の現実世界の音情報を学習させているため、あらゆる状況でリアルかつ極めて自然でクリアな音を届けることができる」とその仕組みを説明する。
 
モアの革新性を説明してくれたプロダクトマネジメント部の
渋谷桂子氏とアドバンスト・オーディオロジー・センターの高橋礼美氏

 従来の「オープン」や「オープン S」では、音を主に「音声」と「騒音(ノイズ)」に分類し、騒音を抑えることであらゆる方向からの音声を自然に耳に届けるアプローチをとってきた。さらに「モア」では、あらゆる音のコントラストを際立てることで、音声以外の音をただ単に不要な音と切り捨てるのではなく、それぞれが何の音でどこから聞こえているのか、というディティールまでしっかりと届けられるようにした。

 「会話のように集中して聞きたい音とは別に、車の音や虫の音色のように“なんとなく聞こえていたい”という音がある。モアではDNNが学習済みの情報に基づき、環境音も含めたすべての音をバランスよく処理することで、音の情景の全体像を正確に捉えることができる」(渋谷氏)。
 
DNNが学習した1200万の現実世界の音情報がより自然な聞こえをもたらす

 なかなか言葉だけでは理解しづらいかもしれないので、記者が実際に指向性の補聴器と「モア」をそれぞれ装用して感じた音について紹介したい。試した場所は「車が行き交う大通り沿い」。かなり騒音が交錯している環境だ。まず、指向性の補聴器を使用した場合、正面の人の話し声はクリアに聞こえるが、周囲の騒音は解像感が低い。「これは何の音なのか」「どこから聞こえているのか」、疑問と不安がつきまとった。

 一方、「モア」の場合だと、こうした疑問や不安が薄らぐ。「さっき分からなかった音は近くの線路を走る電車の音だったのか」「このエンジン音は右からきた車のもの、これは左からきた車のもの」といったようにそれぞれの騒音の正体が判るようになるからだ。ノイズの情報も不快ではなく明瞭になることで、先ほど渋谷氏のコメントにあった「音の情景の全体像」をありありと脳内にイメージできた。
 
「モア」は非常にコンパクトで装用してもほとんど目立たない
 
全方向からのすべての音が何なのか判ることで、
音に対する不安がなくなった

 最新の補聴器としてモアが特出しているのは周囲の音の聞き取りやすさだけではない。デジタル機器のBluetoothと連携することで、スマホの通話や音楽視聴、テレビ視聴を補聴器から明瞭な音で聞くなどの機能も備えている。スマートホームプラットフォーム「IFTTT(イフト)」にも連携可能で、「補聴器に電池を入れたら部屋の電気をつける」などの応用技術も使える。以前の「オープン」ではスマホの直接接続はiOS端末に限定されていたが、モアでは一部のAndroid端末も新たに対応するようになり、使いやすくなっている。
 
デジタル機器と連携する最新の機能も

 最後に補聴器を取り巻く最新の環境について触れておきたい。2020年は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、外出の機会が減ったが、実は補聴器に対する潜在的な需要は高まっている。「電話やウェブ会議をすることが増えたことやマスク越しの会話がスタンダードになったことで、もっと音をよく聞き取りたいという方は増えている」(高橋氏)。

 昨年ごろからより柔軟なフィッティングのあり方として、遠隔からでも補聴器の調整やカウンセリングが可能な「リモートケア」が広がり始めている。補聴器はプロダクトだけでなく、その付き合い方も含めて変化が加速しているのだ。いまだ昔ながらの印象が根強い補聴器だが、聞こえに悩みをもつ人や補聴器が気になっている人はぜひ先進補聴器を試して、イメージをアップデートしてほしい。(BCN・大蔵大輔)

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