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料金と一緒に考えたい携帯の通信品質、音声でソフトバンクが世界1位を獲得

 菅義偉首相が掲げる“一丁目一番地”の携帯料金値下げが話題になる一方で、気になるデータがある。英オープンシグナル社が発表した世界のモバイル通信の調査で、日本の通信品質の高さを評価しているのだ。日本政府が諸外国よりも高い携帯料金を問題視する一方で、新型コロナウイルスでニーズが急増している動画配信やテレビ会議などの品質はこれまで以上に重要になってくるだろう。販売が開始されたばかりの最新iPhone 12が5G対応したことで、大容量データ通信時代がいよいよ日本でも幕開けとなるからだ。

iPhone 12の発売は日本の5G推進のきっかけになる

品質で大健闘する日本勢

 データは、英国の調査会社であるオープンシグナルが9月に発表した「グローバル・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・アワード2020」。世界のスマートフォン(スマホ)やネットワークにおけるユーザー体験が優れた企業を表彰するものだ。

 それによると、「音声アプリ・エクスペリエンス」部門でソフトバンクが世界1位、KDDI(au)が4位、NTTドコモが6位を獲得。「4Gアベイラビリティ」部門ではauが世界1位、楽天とNTTドコモが同スコアで2位、ソフトバンクが5位を獲得した。
 
「音声アプリ・エクスペリエンス」部門でソフトバンクが世界1位、
「4Gアベイラビリティ」部門でKDDI(au)が1位を獲得
 
「音声アプリ・エクスペリエンス」部門でソフトバンクが世界1位、auが4位、NTTドコモが6位

 また「ビデオ・エクスペリエンス」部門では、ソフトバンクが世界3位、NTTドコモが9位、auが15位に入るなど、日本の携帯キャリアの品質が世界から高く評価されている。
 
「ビデオ・エクスペリエンス」部門でソフトバンクが世界3位、NTTドコモが9位、auが15位に入った

 他にも、「ダウンロード・スピード・エクスペリエンス」部門でNTTドコモが世界10位、auが14位、ソフトバンクが19位だったり、「アップロード・スピード・エクスペリエンス」部門で楽天が18位だったりと、日本勢の活躍が目立つ。

 では、この調査は、どのように行われているのだろうか。オープンシグナルのサイトによると、世界中の1億台以上のスマホから毎日数十億もの個別測定値を365日、24時間収集しているという。シミュレーションや予測、テスト条件などではなく、スマホユーザーから収集して、実際のネットワーク・エクスペリエンスを評価しているのが特徴だ。移動中や働いているとき、寝ているとき、室内、室外を問わずに調査できるという。

 そして、ビデオ・エクスペリエンスは、ビデオの読み込み時間、ストール、解像度を考慮したモバイル・ビデオの品質を評価する。音声アプリ・エクスペリエンスは、LINEやスカイプ、Facebookのメッセンジャーのようなモバイルボイスアプリの体感を評価したものだ。

 いずれも、新型コロナによるテレワークなどの浸透でなじみのあるアプリばかりだ。オンラインでコミュニケーションをとる際に、こうしたアプリの音声品質がどれだけ重要かは理解していただけるだろう。音声が途中で切れてしまったり、ノイズが混ざったりしていたら、イライラ感が募るばかりか、重要な商談や会議が滞る原因になるからだ。

 動画の品質についても、ZoomやTeamsといったオンライン会議だけでなく、おうち時間を楽しむYouTubeやNetflixなどのストリーミング動画サービスが広まっていることで、これまで以上に重要な指標になるだろう。

ところでフランスの品質は?

 一方で、携帯料金の値下げの議論でよく引き合いに出されるのが、日本の通信料がフランスのパリの3倍とする総務省が6月に発表した「電気通信サービスに係る内外価格差調査」だ。日本のスマホの月額料金(MNO)で、世界6都市(東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウル)の中で、中位から高い水準にある。
 
総務省の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」

 データ容量月20GBに限ってみれば、MNOは6都市の中で最も高い。一番安いパリが月額2055円だったのに対して、東京は6877円で3倍の差があったというのだ。これと同じ調査は、18年9月にも発表されており、当時の菅官房長官が同年8月に「携帯料金は4割下げる余地がある」と発言した背景にあったデータとされている。

 気になるのが、今回のオープンシグナルの調査結果でフランスの通信企業は、Orangeが「ダウンロード・スピード・エクスペリエンス」部門で20位に入っているだけで、それ以外の部門で上位に入っていない。二つの調査から危惧されるのは、いくら料金が安くても、通信の品質が低くていいのかということだ。

 もちろん、ユーザーにとっては品質が高く、料金が安いサービスに越したことはないだろう。しかし、なかなかそのようなサービスの実現が難しいことを、オープンシグナルの調査は示しているといえそうだ。

 10月23日、5G対応のiPhone 12がいよいよ発売となった。iPhoneユーザーが多い日本で、5Gサービスの本格的な普及の後押しになるのは間違いない。調査時期からしてオープンシグナルの調査結果は4Gネットワークのものではあるが、これから5Gに移行するからこそ、ストレスフリーなストリーミング動画の再生や音声の品質は、議論の俎上にあがってもおかしくないし、キャリア選びの一つの参考にしたい。少なくとも料金だけに焦点をあてて、品質を無視した議論は公平な評価とはいえないだろう。