日立、「協創の森」から生まれる家電製品のデザイン改革

 日立グローバルライフソリューションズが10月9日に開催した、ドラム式洗濯乾燥機「ヒートリサイクル 風アイロン ビッグドラム BD-NX120E」の発表会は、通常の都内イベント会場などとは違う、一風変わった場所で行われた。JR中央線の国分寺駅北口から徒歩約10分、商店街の途中を左折して閑静な住宅街の奥に緑の木々が生い茂る、広大な敷地「協創の森」にある「日立製作所 中央研究所」だ。

東京都国分寺市にある日立製作所の中央研究所

 AIやIoTのテクノロジーを使って、持続的な社会発展に向けた課題解決をするために政府が提唱するSociety 5.0を実現するためにつくられた日立の研究開発拠点で、地上4階の「協創棟」の延べ床面積が約1万6000平方メートル、建築面積が約6000平方メートルある。

 2019年4月に開設した協創の森では、世界中から顧客やパートナーを招き、日立のクラウドIoTプラットフォームのLumadaを使ったアイデアソンやハッカソンなどを開催し、アイデアの創出から素早い試作、実証などを繰り返して事業シナリオなどを構築する。そして、ここに日立の家電製品のデザイン改革に取り組んでいる部隊もあることから、この場所での会見となったのだ。
 
閑静な住宅街に広大な緑が広がる
 
創業者の小平浪平翁の志を後世に伝える「小平記念館」を通り抜けると「協創棟」が現れる

 これまでの日立の家電製品は、最大公約数のユーザーに受け入れられるような保守的なデザインが多かった。デザインで日立の家電製品を選ぶ消費者が少なかったのは、同社の幹部も認めているところだ。そこで、デザイン改革では「Less、but Seductive」とし、一見控えめでも人を魅了するデザインをキーコンセプトにしている。

 また、「ひとりひとりの暮らしに寄り添い、暮らしをデザインする」という家電製品のコンセプトも、機能を必要以上に多く搭載するのではなく、ユーザーが必要とする個別のニーズに、機器が合わせるような仕組みを取り入れている。ハード面の機能よりも、ユーザーがしたい「コト」に合わせて、スマートフォン(スマホ)のアプリ「洗濯コンシェルジュ」でメニューを選択して家電とコネクテッドして、暮らしをサポートするイメージだ。

 BD-NX120Eのデザインでは、部品の凹凸などをなくした清掃性の高いシンプルな構成や、サニタリー空間と調和する魅力的な色や素材、仕上がりの表現を実現した。
 
家電製品のデザインに力を入れる日立
 
ソフトウェアのUIのデザインもこだわる

 例えば、本体表面の仕上げを、金属の質感を生かしたステンレス調のヘアライン鋼板に、サニタリー空間と調和する温かみのあるシャンパン色を採用したりしている。また、本体の天面は部品の分割や段差などを減らしてシンプルにしている。

 また、前述したように、ハードのデザインがいくら優れていても、コネクテッド家電でユーザーが操作するときのアプリのUIが使いにくかったら元も子もない。日立のデザイン改革は、こうしたアプリのメニュー画面にも、一目で分かりやすく、思わず触りたくなるようなグラフィックUIにこだわっているという。

 BD-NX120Eは工業製品やサービス、システムなどの優れたデザインを称える「GOOD DESIGN AWARD 2019」を受賞した。11月16日の発売後、ユーザーにどのように受け入れられるかが注目だ。(BCN・細田 立圭志)