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新体制で新年度をスタート、新しい道へと進む「駅すぱあと」

経営戦略

2019/07/19 08:00

【「駅すぱあと」の今までとこれから・最終回】 経路検索サービス「駅すぱあと」をベースに経費精算など、一般オフィスで働くスタッフの業務効率化に寄与してきたことに加え、モビリティサービスを切り口に新しいビジネス領域へと進み始めたヴァル研究所(ヴァル研)。新年度となる2019年7月1日、新しい体制でスタートを切った。取締役兼事業統括本部本部長の菊池宗史氏が社長に就任。社長の太田信夫氏は会長に就き、グループ会社のVISH代表取締役にも就任した。これによって、ヴァル研は既存の文化とビジネスを継続しながらも新しい道へと進んでいく。

新社長の菊池宗史氏(左)と元社長の太田信夫氏

 社長に就任した菊池氏は40代。「創業者(故・島村隆雄氏)の意思を継承しつつ、若返りを図りたかった」と元社長の太田氏は語る。しかも、菊池氏はヴァル研がビジネス領域を広げるために力を注いでいるモビリティサービス関連の責任者としてプロジェクトを指揮してきた。菊池氏は、「これまでの事業を維持していきながら、新しいことにも取り組んでいく」と意欲を示す。

 ヴァル研は、「世の中の当たり前を変える」というコンセプトのもと、1988年に「駅すぱあと」を市場に投入。経路検索の先駆者として、個人や法人を問わず、ユーザーから高い信頼を得てきた。このコンセプトに加え、「思考の一歩先を提供する」という考えから、モビリティサービス関連ビジネスに着手。ユーザーにとって適切な情報を先回りして提供する製品・サービスを具現化しようとしている。

 「技術の進化によって、情報提供の方法は大きく変わろうとしている。しかも、都心への人口集中と混雑、逆に地方の過疎化など、環境や課題に合わせた新しいモビリティの在り方が検討されている」(菊池氏)。経路検索サービスも変化する必要があるとの判断から、今の時代に最適なモビリティサービスの提供にチャレンジしていくわけだ。
 
「新しいことにチャレンジしていく」と意気込む菊池宗史氏

 菊池氏の社長に就任によって、太田氏は会長を務めながらVISHを指揮していく。「まずは、VISHの社員が働きやすい環境をさらに構築していく」(太田氏)という。VISHは、社員数が約20人のベンチャー企業。太田氏は、「自由奔放なベンチャー気質の勢いを生かしながら、体制を整えていきたい」との考えを示している。

 また、VISHはクラウド型バスロケーションサービス「バスキャッチ」などを提供している。ヴァル研の描くモビリティサービスと親和性が高いことからも、今後はさらに両社の連携が加速していきそうだ。
 
クラウド型バスロケーションサービス「バスキャッチ」

 さらに、さまざまな企業とのパートナーシップも強化していく。IT業界内での提携や協業に加えて「鉄道をはじめとした公共交通機関、自動車、シェアリングなどをキーワードに企業とのアライアンスを進めていく」と菊池氏はいう。

 これまでも、小田急電鉄が展開する小田急MaaS「MaaS Japan」への開発支援を通じて小田急電鉄を含めて、タイムズ24、ドコモ・バイクシェア、WHILLなどと連携・協力。また、地域モビリティの普及に向けて、MaaS Tech Japanと新たなサービス開発を目的としたプロジェクトを始動している。

 このほか、静岡県静岡市の「居住者を対象としたMaaS実証実験」で相乗りタクシーと鉄道・路線バスの複合経路検索サービスを提供するなど、いくつかの地域で取り組んでいる実証実験にも参画。8月5日には、JR東日本グループが実施する「案内AIみんなで育てようプロジェクト(フェーズ2)」共同実証実験で経路検索API「駅すぱあとWebサービス」を提供するなど、「駅すぱあと」をベースとしたビジネス領域の拡大に余念がない。

 菊池氏は、「1年以内に、複合経路検索、パーソナライズ、リアルタイムなど、まずは当社が描くモビリティサービスの第一弾を提供する」としている。歴史が長く“今まで”があるからこそ、“これから”の「駅すぱあと」に期待が高まる。