「第4のキャリア」に名乗りをあげた楽天の勝算は?

オピニオン

2018/03/14 18:30

 楽天は2017年12月、通信設備や回線網を自社で保有するMNOとしての携帯電話サービス参入を表明し、総務省が新たに割り当てる第4世代携帯電話システム(4G)用周波数(1.7GHz/3.4GHz帯)の取得を申請した。3月13日現在、認定申請中であり、周波数割り当ての結果は3月末までに公表される予定。

 現在展開中のMVNOサービス「楽天モバイル」との位置づけや、公表している設備投資額でMNOとして全国展開が可能なのか、できない場合にどうやってフォローするかなど、さまざまな疑問が浮かぶが、ドコモを筆頭とする、現状の3キャリア体制を崩す可能性は高いとみる。理由は、楽天銀行、楽天証券、民間調査で9年連続顧客満足度1位の楽天カードなどをグループ内に抱え、金融・決済や保険などのファイナンス分野に強いからだ。
 

新規参入といっても、サービス内容は、展開中の楽天モバイルに準じたものになりそうだ
(写真は、「honor 9」の製品発表会にゲストとして登壇した、
楽天の大尾嘉宏人 執行役員 通信&メディアカンパニー 楽天モバイル事業 事業長)

 設備面に関しては3月6日、東京電力グループが以前から実施している設備貸出事業を活用し、東京電力グループが保有する鉄塔や電柱などを携帯電話基地局として活用することで合意したと発表。携帯キャリア事業の立ち上げに必要な設備投資を最大限効率化し、他の電力会社とも連携を検討しているという。この報道を受けて、なるほどと思ったが、うまくいくはずがないとする、厳しい見方もあるようだ。

 世界規模で次世代5G通信の商用サービス開始への取り組みが加速するなか、第4の携帯キャリアに名乗りを挙げた理由は、現在の楽天の主要顧客層の拡大、若返りとシニアシフトを同時に図るには、どうしても「ケータイ会社」の看板が必要だったからではないだろうか。
 

楽天の強みであるSPU(スーパーポイントアッププログラム)のポイント倍率は、
2017年10月に従来の最大7倍から8倍にアップ。さらに、今年3月からは条件によって11倍にアップした

 新キャリアといっても、楽天スーパーポイントを核とした「楽天経済圏」に、MVNOより安定したデータ通信が期待できる「フルサービスの移動体通信事業」が加わるだけ。しかし、それだけで、親がスマホ関連の料金を支払っているためMVNOに興味がなく、PCは学校の授業のレポート作成にしか利用しないスマホネイティブ層にリーチできるようになる。

 また、大手3キャリアからの乗り換えを促すためには、リアル店舗でのサポートサービスを手厚くする必要がある。そうした今まで楽天のサービスをまったく使っていなかった層に、おいしいお取り寄せグルメや、「楽天銀行と楽天証券の連携(マネーブリッジ)による優遇金利」は魅力的に映るはずだ。

 現金を使わずに済むFeliCaを活用したモバイル決済やQRコード決済など、スマホを決済インフラとしてみなす動きも高まっており、楽天にとっては追い風だ。最低限の懸念点をクリアできれば、十分に既存の3社と戦えるだろう。(BCN・嵯我野 芙美)