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ドン・キホーテ色に染まったユニー、新業態の店舗戦略を探る

店舗

2018/02/23 18:40

 2017年11月に業務提携を発表したドン・キホーテとユニーが共同開発した第1号店が2月23日、神奈川県横浜市に「MEGAドン・キホーテUNY大口店」としてオープンした。ユニーのGMS事業再建の一歩目となる店舗は、ドンキのノウハウをどのように取り入れて変化したのか。フロア構成や仕掛けから店舗戦略を紐解いた。


「MEGAドン・キホーテUNY大口店」の外観

 大口は、学生からシニアまで幅広い層が住む人口密集地。多くのスーパーマーケットやドラッグストアが乱立し、「MEGAドン・キホーテUNY大口店」から視認できるエリアだけでも、サミットやスギ薬局、「コジマ×ビックカメラ 横浜大口店」など競合がひしめく。
 

店舗に背を向けると右手に「コジマ×ビックカメラ 横浜大口店」、左手に「サミット」と「スギ薬局」が見える

 売場面積は専門店を含めて約5300平方メートル。地下1階・地上4階で3階より上は駐車場。想定する商圏は3km圏内で、約30万人にリーチする。駅から徒歩5分の立地なので、車だけでなく自転車や徒歩による来店客も見込む。旧ピアゴ大口店で年2回だった定休日は年中無休に、営業時間は午前9時~午後9時から午前9時~午前2時に変更した。

 リニューアル後の最大の変化はターゲットとなる客層だ。旧ピアゴ大口店ではシニアに比重を置いていたが、新店舗では「MEGAドンキ」のストライクゾーンであるニューファミリーに焦点を絞る。

 店舗の外観はほとんど通常の「MEGAドンキ」。「UNY」のロゴも小さく入っているが、意識しないと気がつかない程度だ。大口店は周辺に建物が密集しており視認性があまりよくない。今回はそれを踏まえてドンキ色を強めたとのこと。2号店以降は、よりダブルネームを前面に打ち出した外観になるそうだ。
 

新業態店舗発表時のリリース資料の店舗イメージ

 入口をくぐって、最初に目に入るのはMEGAドンキ名物の「驚安コーナー」。旧ピアゴ大口店時代は地下1階の食料品コーナーに直行する顧客がほとんどだったのに対し、安売りのさらに上を行く勝負価格でまずは来店客の足を止める狙いだ。
 

MEGAドンキ名物の「驚安コーナー」

 集客の柱になる地下1階の食料品コーナーの導線は、変更がない。大きく変わったのは商品構成で、とりわけ精肉コーナーは顕著だ。ピアゴ時代の約1.5倍に売り場を拡張し、希少部位の品揃えを増やすなど、ニューファミリー向けにアピールする。
 

精肉コーナーは約1.5倍に拡張

 青果は地域の地場野菜、鮮魚は大田市場から直接仕入れ、品質を担保する。若い主婦層に向けて調理の手間がかからない干物や明太子などのラインアップが拡充しているのも特徴だ。惣菜はニューファミリーから支持の高い寿司の品揃えを増やした。また、ターゲットが食欲旺盛であることを意識し、「メガ盛りパック」も用意する。
 

惣菜は寿司に注力。「メガ盛りパック」などでニューファミリーにアピールする

 ドン・キホーテの得意分野であるドライフード(菓子・調味料・酒)も大幅に拡張。菓子は山積みワゴンを要所に配置。ドンキのPB商品「情熱価格」も多数展開する。酒類は売場面積を約2倍に拡大し、競合の価格と比較したプライスチェッカーも導入した。
 

ドンキならではといえる菓子の山積みワゴンやプライスチェッカー

 非食品を陳列する1階では、ほとんど取扱いがなかった家電商材を導入。近隣にはコジマ×ビックカメラがあるが、理美容や調理家電を大きく展開し、持ち帰り家電を中心に差別化を図る。家電コーナーは入口付近にレイアウトし、既存客にも広く周知していく。
 

入口側の家電コーナー。持ち帰り家電を手厚く

 コスメ関連は売り場を従来の3倍に拡充。近場にドラッグストアは数多くあるが、リサーチしたところ、コスメの品揃えはいまひとつで勝負できると踏んだ。価格は他店徹底対抗に対応し、食品に次ぐ第2の集客の柱にする考えだ。
 

第2の集客の柱に育てたいコスメ関連

 衣類や玩具を展開する2階はさらにドンキのエッセンスが凝縮している。いずれの売り場でもドンキの代名詞である手書きPOPが目を引く。他店ではあまりお目にかからないカラーコンタクトや電子タバココーナーなども象徴的だ。売り場が縮小した分、衣類は部屋着やスポーツウェアに絞る。トレーニング機器や健康機器も近辺に配置し、相乗効果を狙う。
 

他店ではあまり見かけないカラーコンタクトや電子タバコの専門コーナー

 これまで1階にあった自転車コーナーは一部を残して2階に移動。こちらも若年層のニーズを反映し、折りたたみやスポーツ用、電動アシスト自転車などを充実させた。
 

自転車は折りたたみやスポーツ用、電動アシスト自転車が充実

 こうしてフロアの上から下まで回遊してみると、品揃えや見せ方にいたるまでほとんどがドンキのノウハウに染まっていることがよく分かる。店員は25名体制で内10名はドンキからの派遣。各売り場の責任者もオープンから1年はドンキの社員が務める。ユニーの強みは生鮮食品の仕入れ力にあるので、バックヤードの部分では影響を与えているようだが、それにしても限定的だ。

 内覧会でユニーの佐古則男社長は「業務提携からオープンまで約半年。準備期間が十分にとれたわけではなかった。2号店以降はより両社のノウハウが交じりあった店舗になるはず」と語ったが、ダブルネームを冠する以上、ドンキでもユニーでもない第3の店舗像を打ち出さなければ意味がない。間を置かずに、3月9日に2号店の「MEGA ドン・キホーテ UNY 東海通店」、3月中にはさらに4店舗がオープンする。真の融合を果たした店舗が登場するにはもう少し試行錯誤が必要かもしれない。(BCN・大蔵 大輔)