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大原孝治ドンキホーテHD社長が明かす、神保町店「スピード撤退」のなぜ

インタビュー

2017/12/02 17:00

 ドン・キホーテの出店拡大が止まらない。11月22日には国内外のグループ店舗数400店を達成。2020年までの中期目標に掲げる500店まであと一息のところまできた。

 ところで、今年10月、出店ではなく“閉店”が話題になった。舞台は東京・千代田区、古書店・学生街として有名な神田神保町に今年2月にオープンした「ドン・キホーテ神保町靖国通り店」。

 同店は17年10月に閉店。わずか8か月でのスピード撤退は業界だけでなくネット上でも話題になった。その理由は、またなぜそれだけ早い決断が可能だったのか。ドンキホーテホールディングスの大原孝治 社長兼CEOに直接聞いてみた。
 

オープンからわずか8か月で撤退した「ドン・キホーテ神保町靖国通り店」

オープンから2週間で閉店を決断 スピード撤退もダメージはゼロ

―― 17年2月にオープンした「ドン・キホーテ神保町靖国通り店」を10月に閉店しました。なぜこれだけ早い決断が下せたのですか。

大原 閉店のときはいつもこれくらいのスピード感です。神保町靖国通り店はオープンから2週間後には「これは失敗だ」と思い、結論を出しました。ただ閉店の手続きに8か月かかっただけです(笑)

―― 失敗だと判断した要因は。

大原 まず歩いている人がみんなネクタイを締めている。それに土日には人が少ない。すごく緊張している街なんです。ドン・キホーテはラフに買い物をする店舗ですから、歓楽街はめちゃくちゃ繁盛する。でも、オフィス街はまるでダメです。

 実は僕にとってオフィス街への出店の失敗は2度目なんです。1回目は新橋の「ドン・キホーテ銀座ブランド館」(2004年5月~2006年7月)で、こちらも神保町靖国通り店と同じく周辺に緊張感が漂っていました。男性はネクタイを着けていて、女性はハイヒールをはいている。みんな早足で、疲れている。ラフじゃないんです。
 

オフィス街出店の最初の失敗談を語るドンキホーテHD大原社長

―― 仕事から解放されて、ちょっと一杯というサラリーマンも多そうなイメージですが。

大原 あと100m先まで歩いていけばそうなんですが、店舗があった場所はまだ仕事の話をしているエリア。「今日のミーティングさー」とかね。100m通り過ぎて、ようやく「一杯いく?」という話になるんです。そこも神保町靖国通り店と同じですね。

―― 閉店によるダメージは出店戦略に影響を与えないのでしょうか。

大原 神保町も新橋も所有物件なのでノーダメージです。われわれは不動産で損をしたことはありません。閉店したら不動産事業に転換すればよいので、即座に決断が下せるのです。所有物件に限らずダメージを負った閉店というのはこれまでありませんね。

積極展開・スピード撤退を可能にする三つのロジック

 ドンキホーテホールディングスの2017年6月期(16年7月~17年6月)の新規出店は32店舗、閉店が5店舗。「ドン・キホーテ」以外に「MEGAドン・キホーテ」「ピカソ」といった業態をもち、商圏やロケーションに沿った出店が可能であること、居抜き物件を中心に出店してコストを抑えていること、「個店主義」によって周辺の系列店と棲み分けていることなどが、積極出店を継続できる要因になっている。

 今回の神保町靖国通り店スピード撤退も、出店に対して強力なロジックを構築しているドンキだからこそできた経営判断といえそうだ。(BCN・大蔵 大輔)