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店舗の長時間労働がアプリで解消する理由 - 働き方改革を加速する「Airレジ」

特集

2017/03/31 16:07

 POSレジの新しいスタイルとして、従来のようなキャッシュレジスター機器ではなく、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末を活用する店舗が増えている。POSレジアプリ最大手のリクルートライフスタイルは、同社が提供するサービス「Airレジ」を導入することで、レジの設置スペースやコストが削減できるだけでなく、集客力の向上や、スタッフの労働環境改善にもつながるとアピールしている。レジ端末を替えることで、どうしてそのような課題解決が可能になるのか、同社の大宮英紀執行役員に聞いた。


「Airレジ」の導入イメージ

 最近では、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末をレジとして使う店舗が珍しくなくなってきた。タブレットと連動するキャッシュドロアやレシートプリンタ、バーコードリーダーなどの周辺機器と接続すれば、画面上の現計キーに触れるとドロアが開きレシートが出てくるという、これまでのレジと変わらない感覚で店舗オペレーションが可能だ。従来型の専用レジ端末に比べコンパクトで、しかも同等の機能をもつレジ端末に比べ低コストで導入できる。

 モバイル端末で利用できるPOSレジアプリは多数存在するが、国内最大手となっているのが、リクルートライフスタイルが提供するiPad/iPhone用アプリの「Airレジ」だ。同社によれば2016年末時点で26万7000アカウントの利用実績を有しているという。強みとなっているのは、アプリが備える全機能が無料で利用可能という点だ。同社では決済などのAirレジ関連サービスや、マーケティング支援などの他の店舗向けサービスから収益を得ている。Airレジはそれらのサービスの一環でもあるので、アプリ自体の使用料は無料でも運営が可能で、この先も有料化の予定はないという。

iPadに最適化した使いやすいアプリで、煩雑なレジ業務の負荷を削減

 ただ、リクルートライフスタイルでAirレジのサービス責任者を務める大宮英紀執行役員は、Airレジが多くの店舗から支持されている理由はコストだけではないと強調する。導入店舗から特に評価されているのは「Airレジの導入で、目の前に積み重なっている日々の業務が楽になること」(大宮執行役員)。アプリの設計にあたっては開発者が実際に飲食店で勤務し、店舗業務の課題を調べ上げたという。
 

リクルートライフスタイル 大宮英紀執行役員

 大宮執行役員は「お店の方々は従来型のレジを当たり前のものとして使われているのですが、私たちが実際にレジ締めなどを行ってみると、非常に煩雑な作業だと感じました。また、複数の店舗を回っているオーナーの方が、レジ締めが長引いたせいで終電を逃したことがあるといったお話も聞きました」と話し、従来のレジをタブレット上に移植する形で設計するのではなく、店舗経営者や従業員の作業負荷を軽減するために必要な機能や画面デザインを、ゼロベースで開発したと説明する。導入店舗では、毎日50分程度を要していた閉店後のレジ締め・売上精算作業を、10分の1の約5分にまで短縮できたケースもあり、深夜業務の削減に貢献したという。

 Airレジの画面は基本的にiOSの標準的なアプリと同じデザインポリシーで統一されている。iPadやiPhoneを使ったことがある人なら細かい説明を受けなくても感覚的に操作を理解できるので、教育・研修の手間がわずかで済み、レジ操作に慣熟していない新しい従業員が顧客を待たせるといったことも最小限に抑えられる。

お店の経営状態が目で見てわかる

 会計データはリアルタイムで集計されるので、iPadやiPhoneを通じて売上高や客数をいつでもどこでもチェックできる。レジ締め作業を大幅に短縮できるだけでなく、経営者が毎日店舗を回らなくても、手元の端末で現場のパフォーマンスを随時確認できるのが大きなメリットだ。また、小規模な店舗が従来導入していたエントリークラスのレジの場合、売上区分は「飲料」「雑貨」といったおおまかな分類でしか集計できず、いま何がよく売れているのかを正確に把握できないケースも多い。それに対してAirレジであれば、高価なPOSレジ端末と同様、1アイテムごとの売上登録・集計が可能となる。
 

売上管理画面で店舗のパフォーマンスを視覚的に把握することができる

 さらに、大宮執行役員は「スタッフの方々が生き生きと働いていて、業績が伸びているお店ほど、情報を現場で積極的に共有している」と指摘する。あるレストランでは、Airレジの売上分析画面を従業員にも共有たことで、特定のワインの売れ行きが鈍いことに店員が気づき、接客トークやあわせて提案するメニュー に変化を加え、客単価が1割以上アップする事例が生まれたという。現場の努力が収益向上につながることを数字で確認できるので、従業員のやりがいを高めるのにも役立っているようだ。

 リクルートライフスタイルでは、「カードも電子マネーも使えるおトクな決済サービス」として、1台の端末を追加するだけで主要クレジットカードや電子マネーによる決済を導入できる「Airペイ」を提供しているほか、順番待ちの不満を解決する受付管理アプリ「Airウェイト」、予約管理をシンプルにするWebサービス「Airリザーブ」など、Airレジからシームレスに使えるサービスを順次拡充している。大宮執行役員は、レジだけでなく店舗業務をトータルで支援する方向へ拡大させている理由を「お店の運営が毎日ルーチンワークのようになってしまい疲弊している方々に、少しでも健康的に働ける環境をご用意したい」と説明する。
 

決済サービスの「Airペイ」は、この春Apple Payへの対応を強化する

 店舗経営者であれば誰でも、自分ならではの理想の店を実現するため、サービスの改善や売り場づくりに力を注ぎたいと考えているはずだ。しかし、現実には経理をはじめとする作業仕事に日々時間を取られてしまい、商品や接客の充実に手が回らなくなるばかりか、深夜や休日まで店で忙殺される状況に陥っているケースは少なくない。POSレジアプリの分野でAirレジが飛び抜けた支持を集めているのは、単に既存のレジを置き換えるだけでなく、「レジを起点として店舗業務の効率を改善し、本来思い描いていた店づくりに取り組むための時間をつくる」ためのサービスとして開発されているからのようだ。(BCN・日高 彰)