3月7日から10日までの4日間、流通業界向けの情報システムをテーマにした展示会「リテールテックJAPAN」(主催・日本経済新聞社)が開催された。採用難が業界共通の課題となる中、ITの力で現場の課題を解決しようとする動きが加速している。

流通向けのロボット、実用化進む

 通常のITイベントでは一般オフィスを対象とした展示内容が中心になることが多いが、リテールテックJAPANは流通向けシステムの専門展示会とあって、各ベンダーの流通向け事業部門が先進技術の提案に総力をあげていた。

 富士通は、棚卸しロボットシステム「MATEY(メイティ)」を今回の展示会で初めて公開。カメラを搭載した自走式ロボットと、サーバー上で動作する画像解析エンジン、既存の販売管理システム等との連携技術などから構成されており、ロボットが店内を走行しながら撮影した画像データをもとに店舗運営の最適化を行う。
 
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富士通の棚卸しロボット「MATEY」

 「棚卸し」を銘打つものの、当面は正確な在庫金額の把握よりも、品切れや陳列乱れの検知や、棚割りと売り上げの相関の検証などを目的に開発をすすめる。将来的には、AIを用いた最適な棚割の提案や、複数のセンサ技術を組み合わせた棚卸しの自動化などにも機能を拡張したい考え。あくまで研究段階だが、一部の小売店で夜間に自律走行を含むテスト運用を行っているという。

 NECは、IoT基盤技術のひとつとして力を入れる「顔認証」の流通向け応用製品を出展。店の入口にカメラ付きの顔認証端末を設置しておくと、得意先が近づいたとき、即座に顔を認識して端末上に「○○様 いらっしゃいませ」といったメッセージを表示する。同時に、来店客の氏名や過去の販売実績などの情報を店員の端末に通知することで、どの店員が接客するときも得意先に質の高いサービスを提供できる。
 
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NECが近く商品化を目指す顔認証端末

 同社ではこれまで主に入退室管理や監視カメラなどのセキュリティ分野で顔認証技術の導入実績を積み重ねてきたが、今後はリテール向けの提案も拡大していく方針。今回、展示した顔認証端末は2017年度中の商品化を目指すという。ゆくゆくは顔を認証手段としたキャッシュレス、カードレス決済システムの実現も視野に入れている。

 両社によれば、ロボットや画像認識といった先進技術は「本当に使い物になるのか」といった懸念から、コンセプト提案段階で終わってしまう例も少なくなかったが、最近では事務作業の効率化だけではなく、他社に対する競争優位性を高めるために最新ITの導入を検討する企業が流通業界でも増えているという。また、比較的安価なタブレット端末も性能が上がっているほか、クラウドの普及などで導入コストが下がっていることも、IT導入のハードルを下げる追い風となっている。

キャッシュレス決済の仕組みも続々と登場

 日立製作所は、銀行ATMなどに使われる指静脈認証技術を用いたキャッシュレス決済システムを提案した。ショッピングカートやレジなどに設置された端末のカメラに手をかざすことで本人確認が行われ決済が完了する。
 
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日立製作所の指静脈認証技術を用いたキャッシュレス決済システム

 優位性となるのは、専用のセンサが不要で、スマートフォンやタブレット端末などが搭載しているカメラを利用できる点だ。センサのコストやシステムの開発費用を抑えつつ、指静脈認証という指紋に比べて高度なセキュリティ技術を利用できる。

 モバイル端末を利用した店舗向けシステムでは、iPadをレジ端末として利用するリクルートライフスタイルの「Airレジ」が、わかりやすい画面デザインと利用料無料という特徴から大きなシェアを獲得している。
 
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シェアが拡大するリクルートライフスタイルの「Airレジ」

 同社がAirレジに関連した収益源として導入拡大を目指しているのが、小規模店舗でもクレジットカードや電子マネーに簡単に対応できる決済サービス「Airペイ」で、4月からApple Payへの対応を強化することから、展示会ではデモを行っていた。Apple Payでは、顧客のアカウントにひもづくクレジットカードの種類によって、実際にはSuica、iD、QUICPayのいずれかを経由して決済が行われる。従来は店員または顧客の操作でカードを選択する必要があったが、Airペイでは画面上のApple Payロゴを選ぶだけで自動的にメインカードから決済されるので、Apple Pay導入時の店員教育などを最小限にできる見込みだ。(BCN・日高 彰)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年4月号から転載