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若年層のコンパクトデジカメ離れが深刻化 ソニーが打ち出すスマートフォン連携機能

特集

2014/10/15 20:10

 コンパクトデジタルカメラの売れ行きが、下降の一途をたどっている。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で市場の動向をみると、2014年1~9月の販売台数前年比は2ケタ減で推移。スマートフォンに高性能カメラがついたことで、スマートフォンで写真を撮る人が増える一方、コンパクトデジカメが売れなくなっている。最近は、「“コンデジ”はオワコン(終わったコンテンツ)」という人もいる。コンパクトデジカメは本当に「オワコン」なのか、ソニーマーケティングで「Cyber-shot」を担当する北村いつかマーケティングマネジャーに話を聞いた。

北村マネジャーとレンズスタイルカメラ QXシリーズ

 まずは、コンパクトデジカメ市場の勢力図をみておこう。キヤノンが他社の追随を許さず、1位をキープ。2位以下は、団子状態で推移している。そのなかで、ソニーは2014年1~3月は2位だったが、4月にカシオに抜かれ、直近の9月は販売台数シェア12.9%で3位だった。
 

 
 北村マネジャーに、最新のコンパクトデジカメ市場について聞いた。「確かに、若い世代のコンパクトデジカメ離れは進んでいます。スマートフォンの高性能化が進み、写真を撮るならスマートフォンで十分という若い世代が多いことは事実です」と話す。特に、ソニーはスマートフォン「Xperia」シリーズのカメラ性能に力を入れていて、コンパクトデジカメ並みの高画素モデルが多い。コンパクトデジカメがスマートフォンとの差異化を図るには、カメラの性能をもっと向上させるか、新たな機能を追加していくしかない。
 

有効画素数約2070万画素でISO 12800を実現した「Xperia Z3 SO-01G」

 コンパクトデジカメの強みといえば、これまでは小さく、軽く、持ち運びがらくなことと、シャッターを押すだけの簡単操作できれいな写真を撮影できることだった。しかし、いまやその携帯性と簡便性は、スマートフォンに軍配が上がる。そこでソニーがコンパクトデジカメの新しい価値として提案するのが、「高倍率ズーム」と「高画質」だ。

 「どちらも、スマートフォンではできないこと。コンパクトで薄いスマートフォンには、物理的に高倍率ズームレンズを搭載できません。また、同じくサイズの問題で、大きなセンサを搭載することも難しい」と、北村マネジャー。そして、この高倍率ズームと高画質の代表が、光学50倍のズームレンズを搭載した「DSC-HX400V」と、フルサイズセンサを搭載した「DSC-RX1R」だ。
 

「DSC-HX400V」(左)と「DSC-RX1R」

 北村マネジャーは、「高倍率ズームモデルは、お子さんの運動会や旅行シーンに活躍します。特にこれまでのコンパクトデジカメユーザーに向けて、高倍率だと撮影シーンが増えることを訴求しています。また、フルサイズモデルは、高画質や美しいボケ味のある写真を求める人に向けて訴求しています」と、ターゲット別の訴求を行っているという。
 

スマートフォンとの共存、NFCとレンズスタイルカメラ



 もう一つ、ソニーが力を入れて取り組んでいるのが、スマートフォンとの連携だ。カメラやスマートフォン/タブレット端末にNFC(近距離無線通信)を搭載し、タッチすることでカメラで撮影した写真をスマートフォン/タブレット端末で簡単に確認できるようにした。

 写真撮影の専用機であるカメラで美しい写真を撮影して、それをスマートフォンで確認し、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などにアップする。カメラとスマートフォンとの連携を強化して、撮影から公開までの流れをスムーズにすることで、コンパクトデジカメとスマートフォンの「2台もち」を提唱する。ただし、この取り組みはソニーだけのものではなく、カメラ/スマートフォンメーカー各社が、Wi-Fi機能やNFCを搭載したモデルを多数出している。

 ソニーならではの取り組みとして、2013年9月から手がけているのが、「レンズスタイルカメラ QX」シリーズだ。「QX」は円柱形のデジタルカメラ。一見すると交換レンズのようだが、センサを内蔵し、シャッターボタン、電源ボタン、メモリカードスロット、バッテリを備えている。しかし、ファインダーや液晶モニタはなく、「QX」だけでは撮影前の画角や撮影した写真を確認することができない。この液晶モニタの役割を果たすのが、スマートフォンだ。

 「QX」は、Wi-Fiでスマートフォンとワイヤレスで接続し、スマートフォンからの操作で写真を撮ったり、撮影した写真をスマートフォンの画面で閲覧したりできる。スマートフォンに「QX」を装着すれば、ミラーレス一眼のように写真を撮影できるし、Wi-Fiで通信できる範囲なら、スマートフォンと離して撮影できる。つまり、スマートフォンに「QX」を加えることで、スマートフォンならではの手軽さを残したまま、高倍率ズーム撮影や高画質撮影を実現できるのだ。

 ソニーは、この10月、「QX」シリーズのラインアップを拡充し、光学30倍ズームを搭載した「DSC-QX30」と、レンズ交換ができる「ILCE-QX1」を追加した。また既存の光学10倍ズーム搭載モデル「DSC-QX10」にピンクモデルを投入し、女性ユーザー獲得を狙う。
 

左から光学30倍ズームの「DSC-QX30」、レンズ交換ができる「ILCE-QX1」、カラバリモデルを用意した「DSC-QX10」

 「『QX』シリーズは、新しいチャレンジです。いまはガジェット好きの人、カメラ好きの人が購入してくださっていますが、今後は、毎日持ち歩くスマートフォンに追加することで、手軽にきれいな写真を撮影できることを、さらに多くの人に知ってもらいたい。『QX』シリーズは、スマートフォンとカメラの架け橋になります」と。北村マネジャーは期待を込める。
 

淘汰が進むコンパクトデジカメ市場 「縮小ではなく、飽和の時代の終了」



 では、今後のコンパクトデジカメ市場はどうなるのだろうか。下降の一途をたどり続けるのだろうか。北村マネジャーは、「コンパクトデジカメが売れに売れていた頃、お店に行けば似たようなスペックの製品が並んでいました。売れていた、というよりも、飽和していたといえます。つまり、いまは正常値に戻りつつあるのです。販売台数の減少は、やがて緩やかになり、あるところで止まるでしょう。また、コモディティ化から脱却して、各社が特徴のある、おもしろいカメラを出してくると思います。ソニーは、センササイズの大きい『RX』シリーズ、そして新しいカメラのかたち、撮り方を提案する『QX』シリーズでシェア拡大を狙います」と、市場を展望した。(BCN・山下彰子)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。