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開放型なのにノイキャン対応。ファーウェイの完全ワイヤレスイヤホン「FreeBuds 3」を試す

 昨年10月末に突如、アップルが「AirPods Pro」を発売したことで、アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホンに注目が集まっている。その中で、ファーウェイが発売した「FreeBuds 3」はオープン型のハウジングを採用する珍しいノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレスイヤホンだ。本機のタッチ&トライレポートをお届けしよう。

ファーウェイ初のアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホン
「FreeBuds 3」

珍しい開放型ハウジングを持つノイズキャンセリングイヤホン

 FreeBuds 3のレポートを始める前に、オープン型ハウジングを採用するイヤホンの特徴やアクティブ・ノイズキャンセリング(以下、ANC)機能とは何かを整理しておこう。

 イヤホンのハウジングは心臓部であるドライバーを包み込む音響室の役割を果たしている。オープン型とは、ハウジングの中にスムーズな空気の流れを作るため、小さな孔を設けた構造を指す。オープン型構造の特徴は透明感のある中高域が再生できることや、イヤホン本体の軽量化が図れるところなどにある。反対に構造次第では空気孔から音漏れが生じる場合もある。

 FreeBuds 3やAirPods Proが搭載するANC機能とは、イヤホンの本体に搭載されているマイクと電気回路を使って、音楽を聴く環境周辺のノイズを消去するというものだ。イヤホン内部ではマイクが拾った環境音と、再生中の音楽をミックスして解析処理をかけて、ノイズ成分に逆相の音をぶつけて消すという演算処理を素速く行っている。

イヤホンのハウジングが開放型であるということは、普通ならば「外の音が盛大に漏れ聞こえてくる」ということを意味している。通常はハウジングを限りなく密閉して、シリコン製のイヤーピースなどをノズルに装着してパッシブな遮音性能を高めることによって、外から内・内から外に漏れる音を防ぐものだが、FreeBuds 3は「開放型+ANC搭載」という仕立てになっている所が面白い。実機を借りて効果を試してみた。

タッチセンサーにワイヤレス充電、モバイルアプリ対応など機能面も充実

 FreeBuds 3は、AirPodsと同じスティック形状の本体を外耳のくぼみにフィットさせるデザインだ。充電ケースは正円形。イヤホンは1回の充電で連続4時間の音楽再生が可能。充電ケースでチャージしながら使えば最長約20時間も連続して音楽再生が楽しめる。ワイヤレス充電も可能だ。ファーウェイのMate 20 Proなど、自身がワイヤレス充電器になれるスマホと組み合わせながら使うと便利だろう。
 
正円形の充電ケースをAirPodsの充電ケースとサイズを比較。
コンパクトなサイズ感を実現している
 
左側がFreeBuds 3。イヤホンの外観はAirPodsとどことなく似ている
 
FreeBuds 3のハウジング。
通気孔の役割も担う、音抜けを生み出す孔が配置されている

 FreeBuds 3には14mm口径のダイナミック型ドライバーが搭載されている。本体の側面がタッチセンサーリモコンになっていて、タップ操作で音楽再生とハンズフリー通話のコントロールができる。ANC機能のオン・オフもタップで切り替えられる。イヤホンの詳細な機能設定にはAndroidアプリの「HUAWEI AI Life」を使う。今のところまだアプリがiOSに対応していないため、FreeBuds 3を楽しむならAndroidスマホとの組み合わせがベターだ。
 
Android対応の「HUAWEI AI Life」アプリで本体設定やバッテリーの残量が確かめられる

 さらにファーウェイ独自のユーザーインターフェースであるEMUIの10.0以上を搭載するスマホなら、アップルのAirPodsと同様に、イヤホンとスマホの電源をオンにして互いを近づけるだけでペアリングができるポップアップ&ペアリングや、イヤホンを耳から外すと音楽再生が一時停止する装着検知の機能が働く。

 ANC機能の効果はアプリから強弱が調整できる。ダイアル形状のUIをドラッグして消音レベルの強弱を変えるのだが、強度を示す目盛りがなく、ダイアルが際限なく回ってしまうため強弱の変化が目で追いづらい。アップデートなどによるユーザーインターフェースの微調整が必要だと思う。
 
ノイズキャンセリングの強弱はダイアルで設定可能

ノイズキャンセリング機能を試す

 ノイズキャンセリング効果が最大値と思われるポジションに設定して、屋外でANC機能の効果を試した。本機がオープン型のイヤホンであることを前提に評価すると、十分に高い消音効果が実現できていると思う。ロックやEDMの楽曲はビートの力強さが足下から伝わってくる手応えがあるし、ボーカルやピアノ、ギターのメロディも活き活きと鳴り響かせる。
 
Google Pixel 4 XLにつないで音質を確認した。
オープン型のイヤホンとしては十分な消音効果が得られた
 
現在はアプリに対応していないが、iPhone 11 Proでも音楽再生を楽しむことは可能

 オープン型イヤホンならではの中高域の切れ味も鋭い。ハイトーンの余韻が爽やかで音場の見晴らしもクリアだ。このオープン型ならではと言えるリスニング感を大事にしながら、アウトドアの再生環境でも音楽を聴きやすくするためにANC機能を信念を持って搭載したのであれば、ファーウェイの狙いはきちんと成果を上げていると言えそうだ。

 一方でやはり開放型ハウジングなので、ANCの効果を最大にしてもやはり外の環境音は聞こえやすい。そして音量を上げていくと自分が聴いている音楽も外に漏れ聞こえてしまう。静かなカフェやオフィスで使う場合は周囲に十分気を配りたい。

開放型であることのメリットも

 ただ、外の環境音が聞こえてくることは、ふだん使いのイヤホンとしては大きなメリットにもなる。例えば街を歩きながら音楽を楽しみたい時や、自宅で家族と過ごす時間にBGM代わりとして音楽をながら聴きしたい時もある。

 遮音性の高い密閉型イヤホンで音楽を聴き始めるとつい孤立してしまいがちだが、オープン型イヤホンならば音楽を聴いている間も周囲の音に注意が向けられる。日常環境で音楽を楽しむ際にはANC機能をオフにして、少し賑やかな場所に移動したら再生中の音楽のボリュームにも気を配り、ANC機能をオンに切り換えて没入感を得るという使い方が正解かもしれない。

 本機はマイク以外にも骨伝導センサーや風切りノイズを低減するダクト構造を併用して、ペアリングしたスマホによるクリアなハンズフリー音声通話を実現している。

 アップルに続き、ファーウェイやアマゾン、グーグルが自社で開発したワイヤレスイヤホンを次々に開発して世に送り出している背景には、2020年以降本格的に立ち上がる5G通信時代のモバイルコミュニケーションを「スマホとオーディオ一体」の価値として訴求する狙いもあるのだろう。FreeBuds 3はファーウェイがオーディオの方面にも高い技術力を確立してきたことを証明している。(フリーライター・山本敦)