2018.8.13 17:00
スマホ・PCあのソニーまでイッチョカミする祭典、Maker Faire Tokyo 2018
毎年夏、楽しみにしているイベントがある。MFT(Maker Faire Tokyo)だ。今年も「MFT 2018」が東京・ビックサイトで8月の4日と5日の2日間開かれた。MFTに行くと、とても濃いブースが山のようにあるので見て回るのは大変。しかし、とても元気をもらえる。「日本のものづくりへのパッションは全然衰えていない」という事を実感できるからだ。一言で言えば、ものづくりを楽しむ人たちの夏祭り。趣味でコツコツやっている人もいれば、商品化を目指してガッツリ取り組んでいる人もあり。そこに市場性を感じて出展するメーカーありと、出展者はさまざまだが、共通しているのは、みんなものづくりを楽しんでいるという事だろう。
マジメなのかシャレなのかよく分からないものがごちゃまんと出展されているのがとても楽しい。たとえば、STEAプロジェクトが出展した「ビール適温化装置」。装置自体の完成度はとても高く、すぐにでも商品化できそうな雰囲気だ。熱伝導シートとアルミのヒートシンクでビールを覆うことで空気の145倍のスピードで熱を伝えることができる装置だという。室温のビールを装置にセットして「冷蔵庫に入れる」だけで、約25分で適温になった、というデータも示されていた。
STEAプロジェクトが出展した「ビール適温化装置」。
ビールを入れた状態で冷蔵庫に入れると通常よりも速く冷える
思わず「冷蔵庫で冷やすんかい」と突っ込みを入れたくなる。多少は速く冷えそうだが、25分なら別の方法でもいいような気もする。しかしキモは別にある。最新のIoTマイコンESP32を使い、ビールの温度を無線でサーバーに飛ばし手許のスマホで温度が監視できる点だ。これにより、適温に到達したことが瞬時にわかり、よりおいしいビールを飲むことができる、というのだ。発想は1982年にカーネギーメロン大学の学生が開発した「インターネットコークマシン」そっくり。歴史は繰り返す、ということだろう。
もちろん、現場で実際に大いに役立っている装置の出展も少なくない。最も有名なのは「きゅうり仕分け機」。静岡県できゅうり農家を営む小池誠さんの出展だ。きゅうり農家で課題になっているきゅうりの仕分けを、画像認識とAIの力を借りてスピーディーに行うというものだ。
昨年バージョンより処理速度が格段に向上したMFTの常連「きゅうり仕分け機」
一つとして同じ形のないきゅうりを、大きさや色合い別に選別したり、出荷に適さない傷や病気のあるものを除いたりするのは、実はかなり骨の折れる作業。これを自動でできないかとAIを活用することを思いついたのが2016年。Googleが開発した機械学習用のソフトウェアライブラリTensorFlowを活用して、試作3号機までたどり着いた。現在では3万2000本の学習データを元に仕分けできるため、昨年バージョンに比べ、格段に仕分けスピードが向上したという。
仰々しい音楽と怪しい風貌で注目を浴びていたのはAzb.Studioが出展した「エクスカリバー傘」。聖剣エクスカリバーを模したIoT傘で、剣の形をした鞘に傘が収まっており、ラズベリーパイを通じて得た天候情報に基づき動作する。説明書きによると「雨の日になると光り輝いて持ち主にその日が雨であることを伝えるとともに聖剣を抜く勇者のような高揚感を与え、憂鬱な雨の日の外出を未知の冒険へと様変わりさせて」くれるという。要するに雨の日に限って抜くことができる傘なのだが、何とも贅沢なテクノロジーの無駄遣い。ものづくりを楽しむこんな発想が、とんでもない物を生み出しそうでワクワクする。
仰々しい音楽とスモークの中、怪しい風貌の男が決然と傘を抜く!
ワクワクすると言えば、自分がおっさんだからかもしれないが、D.Geek Lab.の「Monroe-skirt SHOES」もくだらなくておもしろい。スカートをはいて靴に仕込まれたファンを回すことでスカートの内側に空気を送り込み、あのマリリン・モンローの気分を味わおうというものだ。腕にコントローラーを仕込んで、ダンスをしながら風量をコントロールする。もっと激しく舞い上がらないとマリリン・モンローにならないじゃないかと思いつつ、なるほど、確かに風になびくスカートは妙に胸がときめく。お祭り気分が盛り上がる一品だ。
マリリン・モンローの気分を味わえるD.Geek Lab.の「Monroe-skirt SHOES」。できればもっと派手に舞い上がって欲しかった
こうしたMakerたちの動きをめざとくとらえたのがソニー。そう。あのソニーだ。アルディーノに互換性のあるマイコンボード「SPRESENSE」をひっさげての堂々の出展。位置づけとしては、IoT向け低消費電力プロセッサ「CXD5602」を売り込むためのツールとしてのマイコンボード。しかし、これまでなら大口顧客向けだけ提供していたテスト環境用のボードを、詳細データとともに一般にも公開。税抜き5500円で販売を始めたという。アルディーノ互換の拡張ボードやカメラユニットも用意し、プロだけでなく、ものづくりを楽しむアマチュアにも積極的に提供している。読み方がよく分からないネエーミングセンスは気になったが(スプレッセンスと読ませたいらしい)、ボードを使ったロボットや小型携帯音楽プレーヤーも展示されており人気を集めていた。
あのソニーもMake市場に参入。超低消費電力のIoTプロセッサ「CXD5602」を売るためのマイコンボード「SPRESENSE」を一般にも販売
ITメーカーの買収に次ぐ買収。自動車メーカーのデータ改ざん前問題など、「日本のものづくりは終わった」と感じるニュースが巷に溢れている。だからといって、日本人はものをつくるというパッションを失ったのかというと、決してそうではない。実感できるのがMFTだ。
将来は日本を背負って立つものづくりのキーパーソンになっているかもしれない
一見馬鹿馬鹿しいものもあるかもしれないが、思いつきを形にしてしまう姿はとても美しくうらやましい。まずは形にすること。つくってみること。それができる環境が整ってきたのだ。ゆくゆくは彼らのパッションが日本のものづくりを大きく変え、支えていくという、強い予感がする。ここからスティーブやビルや昭夫や大や喜一郎や幸之助が生まれてくるという、強い予感がする。(BCN・道越一郎)
会場では親子連れも多かった
マジメなのかシャレなのかよく分からないものがごちゃまんと出展されているのがとても楽しい。たとえば、STEAプロジェクトが出展した「ビール適温化装置」。装置自体の完成度はとても高く、すぐにでも商品化できそうな雰囲気だ。熱伝導シートとアルミのヒートシンクでビールを覆うことで空気の145倍のスピードで熱を伝えることができる装置だという。室温のビールを装置にセットして「冷蔵庫に入れる」だけで、約25分で適温になった、というデータも示されていた。
ビールを入れた状態で冷蔵庫に入れると通常よりも速く冷える
思わず「冷蔵庫で冷やすんかい」と突っ込みを入れたくなる。多少は速く冷えそうだが、25分なら別の方法でもいいような気もする。しかしキモは別にある。最新のIoTマイコンESP32を使い、ビールの温度を無線でサーバーに飛ばし手許のスマホで温度が監視できる点だ。これにより、適温に到達したことが瞬時にわかり、よりおいしいビールを飲むことができる、というのだ。発想は1982年にカーネギーメロン大学の学生が開発した「インターネットコークマシン」そっくり。歴史は繰り返す、ということだろう。
もちろん、現場で実際に大いに役立っている装置の出展も少なくない。最も有名なのは「きゅうり仕分け機」。静岡県できゅうり農家を営む小池誠さんの出展だ。きゅうり農家で課題になっているきゅうりの仕分けを、画像認識とAIの力を借りてスピーディーに行うというものだ。
一つとして同じ形のないきゅうりを、大きさや色合い別に選別したり、出荷に適さない傷や病気のあるものを除いたりするのは、実はかなり骨の折れる作業。これを自動でできないかとAIを活用することを思いついたのが2016年。Googleが開発した機械学習用のソフトウェアライブラリTensorFlowを活用して、試作3号機までたどり着いた。現在では3万2000本の学習データを元に仕分けできるため、昨年バージョンに比べ、格段に仕分けスピードが向上したという。
仰々しい音楽と怪しい風貌で注目を浴びていたのはAzb.Studioが出展した「エクスカリバー傘」。聖剣エクスカリバーを模したIoT傘で、剣の形をした鞘に傘が収まっており、ラズベリーパイを通じて得た天候情報に基づき動作する。説明書きによると「雨の日になると光り輝いて持ち主にその日が雨であることを伝えるとともに聖剣を抜く勇者のような高揚感を与え、憂鬱な雨の日の外出を未知の冒険へと様変わりさせて」くれるという。要するに雨の日に限って抜くことができる傘なのだが、何とも贅沢なテクノロジーの無駄遣い。ものづくりを楽しむこんな発想が、とんでもない物を生み出しそうでワクワクする。
ワクワクすると言えば、自分がおっさんだからかもしれないが、D.Geek Lab.の「Monroe-skirt SHOES」もくだらなくておもしろい。スカートをはいて靴に仕込まれたファンを回すことでスカートの内側に空気を送り込み、あのマリリン・モンローの気分を味わおうというものだ。腕にコントローラーを仕込んで、ダンスをしながら風量をコントロールする。もっと激しく舞い上がらないとマリリン・モンローにならないじゃないかと思いつつ、なるほど、確かに風になびくスカートは妙に胸がときめく。お祭り気分が盛り上がる一品だ。
こうしたMakerたちの動きをめざとくとらえたのがソニー。そう。あのソニーだ。アルディーノに互換性のあるマイコンボード「SPRESENSE」をひっさげての堂々の出展。位置づけとしては、IoT向け低消費電力プロセッサ「CXD5602」を売り込むためのツールとしてのマイコンボード。しかし、これまでなら大口顧客向けだけ提供していたテスト環境用のボードを、詳細データとともに一般にも公開。税抜き5500円で販売を始めたという。アルディーノ互換の拡張ボードやカメラユニットも用意し、プロだけでなく、ものづくりを楽しむアマチュアにも積極的に提供している。読み方がよく分からないネエーミングセンスは気になったが(スプレッセンスと読ませたいらしい)、ボードを使ったロボットや小型携帯音楽プレーヤーも展示されており人気を集めていた。
ITメーカーの買収に次ぐ買収。自動車メーカーのデータ改ざん前問題など、「日本のものづくりは終わった」と感じるニュースが巷に溢れている。だからといって、日本人はものをつくるというパッションを失ったのかというと、決してそうではない。実感できるのがMFTだ。
一見馬鹿馬鹿しいものもあるかもしれないが、思いつきを形にしてしまう姿はとても美しくうらやましい。まずは形にすること。つくってみること。それができる環境が整ってきたのだ。ゆくゆくは彼らのパッションが日本のものづくりを大きく変え、支えていくという、強い予感がする。ここからスティーブやビルや昭夫や大や喜一郎や幸之助が生まれてくるという、強い予感がする。(BCN・道越一郎)
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