「iPhone XR」のカメラは約1200万画素で、「iPhone XS Max」の広角側のカメラと同じ。「iPhone XS Max/XS/X」や「iPhone 8 Plus/7 Plus」とは異なり、シングル仕様となるが、人物写真向けの「ポートレートモード」では、ソフトウェア処理で、シーンによってはボケ感が加わり、まるでデジタル一眼カメラで撮ったかのように仕上がる。普通に風景やモノを撮っても美しく、以前のiPhoneに比べると、画質は格段に向上した。

「iPhone XR」で撮影した風景

 ノッチありデザインのiPhoneとして初めて触れた「iPhone XR」は、ホームボタンを一度押す代わりに、下から上へスワイプするなど、操作方法こそ変わったが、驚くほど違和感はなく、これまで慣れ親しんだ“いつものiPhone”だった。3D顔認証機能「Face ID」の認識スピードも速く、これなら安心して乗り換えられると太鼓判を押したい。

日常のスナップ写真なら十分のクオリティ

 6.1インチの「Liquid Retina HDディスプレイ」を搭載した「iPhone XR」と、6.5インチの「Super Retina HDディスプレイ」を搭載した最上位機種「iPhone XS Max」のスペック面の最大の違いは、ディスプレイとカメラ。パネルの特性上、液晶に比べ、黒を美しく表示できる有機ELは「iPhone XS Max/XS」のみ。「iPhone XR」は引き続き液晶だが、解像度1792×828の大画面は高精細で、文字や写真も見やすかった。

 防水・防じん性能は、「iPhone XR」では引き続きIP67等級だが、「iPhone XS Max/XS」のみ、最大水深2メートルで30分間まで耐えられるIP68等級に向上。次世代のNeural Engineを搭載したA12 Bionicチップ、顔認証やセルフィー撮影に効果を発揮するTrueDepthカメラシステムなど、その他はおおむね共通となっている。
 

 カメラ性能を比較すると、「iPhone XS Max」は広角・望遠レンズ(F値1.8/F値2.4)を組み合わせた約1200万画素のデュアルカメラで、最大2倍の光学ズーム、最大10倍のデジタルズーム、デュアル光学式手ぶれ補正に対応する。対して「iPhone XR」は約1200万画素・F値1.8・光学式手ぶれ補正対応のシングルカメラで、最大5倍のデジタルズームしか対応していないため、スペック面では劣る。

 しかし、「ポートレートモード」で撮ると、ソフトウェア処理でメインの人物やモノの背景部分が自然にボケたカットに仕上がるので、「撮る楽しみ」という点ではデュアルカメラ搭載機種とさほど差はない。ボケの度合い(被写界深度)は撮影後に自在に調整でき、Instagramなど、SNSに投稿するなら十分だ。
 
「ポートレートモード」で撮影。とてもシングルカメラとは思えないボケ感だ

 競合のAndroidスマートフォンに比べ、劣っていた撮影後の編集機能やセルフィ―向け機能もパワーアップ。F値2.2・約700万画素のインカメラの「ポートレートモード」では、「顔」を認識すると、自然光/スタジオ照明/輪郭強調照明/ステージ照明/ステージ照明(モノ)の5種類から、照明効果を選べるようになった。
 
撮った後に、「深度コントロール」でボケの度合い(被写界深度)や照明効果を調整することもできる

 ちなみに、他社のAndroidスマホの「ポートレートモード」では、スターバックス コーヒーのカップに描かれた、顔のシルエットを人物だと認識していたが、「iPhone XR」は人物とは認識しなかった。こうした被写体の自動判別は、AIと機械学習によるもの。どちらが賢いのか判断に悩むところだが、このところ話題のAIをさりげなく織り込み、意識せず使える点こそ、iPhoneらしい魅力の一つと感じた。
 
リアルタイムで高度な機械学習を行う「Neural Engine」と「A12 Bionic」を搭載。顔認識やAR表示も高速だ
(インテリア試着アプリ「RoomCo AR」で試したレースカーテン、リビングテーブルの設置イメージ)

 今やスマホは生活に欠かせないとはいえ、買い替え費用にも限りがある。子どもの運動会・ピアノの発表会といったイベントでは望遠ズームのデジタルカメラで撮影し、スマホでは日常のスナップ写真を撮るだけ、といった使い分けを前提にするなら、シングルカメラのスマホをあえて選ぶのも、賢い判断ではないだろうか。

「iPhone XR」は、両手で操作する大画面iPhoneの廉価版

 アクセシビリティ対応の一環となるiOSの機能「文字の拡大表示」は、「iPhone XS Max」と「iPhone XR」のみ対応し、5.8インチの「Super Retina HDディスプレイ」を搭載した「iPhone XS」は非対応。当初は気づかなかったが、「iPhone XR」は「iPhone 8」の後継機種ではなく、5.5インチの「iPhone 8 Plus」からコストアップ要因となるデュアルカメラを省いた、写真や動画が見やすい、大画面モデルの廉価版の位置付けなのだ。

 つまり、片手操作や携帯性を重視するなら、「iPhone 8」に近い横幅の「iPhone XS」がおすすめといえる。
 
フルスクリーンでブラウザや動画、写真が見やすくなった。
顔認証を利用すれば、画面に向き合うだけで、画面ロックの解除やID・パスワードの入力が一瞬で完了。
頻度が多いだけに、時短効果は大きく、「iPhone 8」にはないメリットだ

 ファーストインプレッションとして掲載した前編(https://www.bcnretail.com/news/detail/20181118_93885.html)のタイトルには、発売直後の販売台数ランキングや、インターネット上の口コミを見て、「iPhone XRは売れていないと決めつけるのは早い」という意味を込めた。iOSの場合、1~2世代前のハードウェアでも、最新OSにアップデートして新機能を利用できるため、ありていに言えば、最短で半年後、長くとも1、2年後には、「iPhone XR」は、便利でセキュアな「Face ID」が使える、最もコスパのいいiPhoneになり、じわじわとシェアも高まるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)


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