LINEのスマートスピーカー正式版リリース、競合との差別化は?

新製品

2017/10/06 18:03

 LINEが7月に先行体験版を販売していたスマートスピーカー「Clova WAVE」の正式版がついに登場した。税込価格は当初の発表より1000円安い1万4000円で、10月5日15時からClova公式サイトとAmazon.co.jp、楽天市場で販売する。年内には家電量販店などにも販路を拡大する予定だ。


LINEが10月5日に発売したスマートスピーカー「Clova WAVE」

 先行版で「WAVE」だった名称は「Clova WAVE」に変更。今後、LINEが開発したスマートスピーカーは冠に“Clova”が付く。

 先行体験版では4000万曲以上の音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」との連携を軸にしていたが、正式版では「LINEニュース」と連携したニュースの読み上げ、テレビのリモコン機能、専用のLINEアカウントを利用したコミュニケーションなど、スキルが拡張している。また、先行体験版で要望があった会話に関する仕様も改良。一問一答形式ではなく、文脈を理解して連続した会話ができるようになった。
 

アップデートによる追加機能。今後も順次ソフトウェアを更新していく

 舛田淳 取締役CSMO兼Clova事業責任者は「現在はポストスマートフォンの時代。10年前にスマートフォンを媒介する『LINE』というツールがコミュニケーションを深めたように、次の10年は『Clova WAVE』がその役割を担う」とコメント。「Clova WAVE」を皮切りに、LINEキャラクターのデザインを生かしたモデルやディスプレイ搭載モデルも続々投入予定で、サードパーティ端末と合わせてClovaの勢力圏を拡大していく方針だ。
 

舛田淳 取締役CSMO兼Clova事業責任者(左)と今後ラインアップに追加される予定の端末

 競合も今週に入って相次いで日本市場への参入を表明した。世界でトップシェアを誇る「Amazon Echo」は、ショッピングだけでなくエンタメ系サービスを数多く自社で運営しており、スマートスピーカーとの相性は抜群。市場のリーディングカンパニーだけあってパートナー戦略も一歩先を行く。

 同日発表の「Google Home」も、提携サービスという点では「Clova WAVE」より優位にあるように思える。SpotifyやNetflixなどの人気コンテンツだけでなく、アイロボットのルンバやフィリップスのIoT電球などスマート家電との連携を早々に発表。販売開始時の販路も家電量販店からキャリアショップまで幅広い。

 「Clova WAVE」の最大の差別化ポイントは、本業であるコミュニケーションアプリ「LINE」との連携だ。専用のアカウントを用意し、家族間でメッセージのやりとりができるようにした。「WAVE」に話しかけることでメッセージの発信ができ、逆に外出先からスマホでメッセージを送信すれば「WAVE」が読み上げてくれる。
 

専用アカウントを利用した「LINE」との連携が最大の売り

 既存のアカウントと連携せず、専用にアカウントを用意したのは、プライバシーを尊重してのことだ。たしかに、個人アカウントのメッセージをすべて家族の前で読み上げられるのは抵抗がある。

 ソフトウェアのアップデートやユーザーの利用傾向・履歴で日々成長するスマートスピーカーは、最初に購入した端末を長く使用し続けるアイテムになるだろう。そうなるとスタートでどれだけ顧客を獲得できるかが極めて重要だ。LINEはシンプルに価格で勝負に出る。

 本体価格を先行して発表された「Google Home」と同額の1万4000円に合わせてきたこともそうだが、2018年1月31日まで期間限定で販売するキャンペーンセットは、本体+「LINE MUSIC」12か月分で税込1万2800円という大特価を打ち出した。
 

本体+「LINE MUSIC」12か月分で税込1万2800円の期間限定セットを提供

 「LINE MUSIC」は月額960円なので、実質本体は1000円弱になる。「音楽連携はスマートスピーカーの基幹機能の一つ。その魅力を多くのユーザーに体験してもらいたい」(舛田取締役)。まずは、来る年末商戦が今後の覇権争いを占う最初の山場になりそうだ。(BCN・大蔵 大輔)