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注目の新ジャンル「AI搭載スマートスピーカー」がもたらす変化

オピニオン

2017/08/29 12:00

 LINEの「WAVE」の発売をきっかけに、新ジャンル「スマートスピーカー」が急速に立ち上がりそうな気配だ。これまで「スマートハウス」「スマートホーム」などといわれていた、スマートでエコな暮らしが現実味を帯びてきた。

 「スマートスピーカー」は「AI搭載スピーカー」とも呼ばれ、中核技術は、音声認識とクラウドを活用したAIアシスタント機能(音声エージェント)にある。ユーザーの行動履歴や検索結果などを学習し、ユーザーにあわせてアドバイスするクラウドAIは、企業と消費者のタッチポイントを増やすとも、逆に減らすとも予想される。AIによる自動化、効率化の先にあるのは、今以上に激しい「余暇時間」の奪い合いだ。
 

立ち上がり目前!? AI搭載スマートスピーカー
成長する「音声AIアシスタント」がもたらす変化

<ユーザーの視点>
学習するAIが日常のムダをなくす
時短・エコで、自由に使える時間を取り戻す

 今回は、ネットワークにつないだ家庭内の機器の音声制御・遠隔操作、クラウドAIによる音声コミュニケーション、音楽再生の3つの機能を備えたデバイスを「スマートスピーカー」と定義したい。操作は主に音声で行い、クラウドサービスと連携したAIは学習しながら進化する。

 2011年以降、本格的に普及し、今や生活に欠かせない存在となったスマートフォンがもたらしたさまざまな変化を、スマートスピーカーはさらに拡張する。音声操作の最大のメリットは、運転中や家事などの作業中でも操作できること。指先で細かい操作ができない高齢者でも利用できるので、よりユニバーサルデザインだ。面倒な工事なしに、後付けで簡単に設置でき、しかも、数万円という安さも魅力だ。
 

AI搭載スピーカーの最大の強みは、物理的なリモコンやスマートフォン用のアプリではできない「ながら」での操作。
リモコンやスマホ本体を探す必要がなくなり、時短が期待できる

 経済産業省がまとめた「電子商取引に関する市場調査」によると、物販系ECの売上高のうち、すでに31.9%がスマホによるものとなった。しかも、デジタルネイティブと呼ばれる若い世代ほど、スマホでの購入率が高いという。「ながら」でも操作できる利便性と使いやすさで、ますますオンラインショッピングが普及するほか、動画配信などの時間消費型のエンタテインメントコンテンツが拡大するだろう。

・リモコンを探すなど、ムダな時間がなくなり、自由に使える余暇時間が増える
・ネット上のコンテンツの主体が、「テキスト」から「動画・音楽」に変わる
・ECがますます拡大。スマホやスマートスピーカーからの購入が中心に

 

主な音声AI搭載スピーカー

<販売店の視点>
プラットフォーマーに依存するAI搭載製品
従来のサポートやアフターケアは難しく

 実用化済みの音声AIアシスタント機能は、PCやテレビ、スマホなどのデジタル製品だけではなく、自動車や白物家電などにも広がる見込みだ。Appleの「Siri」、マイクロソフトのWindows 10の「Cortana」に続き、今年5月、Android搭載スマートフォン向けに、Googleの「Google Assistant」日本語対応版の提供が始まった。米Amazonが提供する「Alexa(アレクサ)」も揃えば、主なサービスはすべて日本語で利用できるようになる。

 数は少ないが、ドコモの「しゃべってコンシェル」、シャープの「ココロエンジン」など、国内企業が開発した音声認識AIエンジンもあり、海外勢の独壇場というわけではない。LINEのスマートスピーカー「WAVE」に搭載されるAIクラウドプラットフォーム「Clova」は、日本語の解析に強みをもつという。

 自己学習する音声AIアシスタント搭載製品が増えると、従来の製品売り切り型のビジネスは厳しくなる。物理的に故障しない限り、買い替えを検討しなくなるからだ。

 また、地域の競合店やインターネット通販との差異化のポイントとして、「体験・体感型の売り場」「購入時や購入後の手厚いサポート」を挙げる家電量販店は多いが、AI搭載製品は接客時に高度な専門知識が求められ、音声機能を試すためにサイレントルームを設置するなど、新たな投資も必要となる。中核部分をクラウドAIのプラットフォーマーが握るため、サポートサービスの内容も見直さざるを得なくなるだろう。

・家電もスマホのように「アップデート」があたりまえになる
・AI対応に乗り遅れたメーカーの淘汰・再編が進むか
・従来の接客・サポートサービスは厳しく 売り場での「体験」がカギ

 

スマートスピーカーの音声認識を体感してもらうには、音声入力を試せる静かな環境が必要。
BGMが常に流れ続ける賑やかな家電量販店では、そもそも試せない

<理想のアシスト>
買い物から健康まで個々にアドバイス
完全なパーソナライズには懸念も

 スポーツウォッチなどのウェアラブル端末やスマホは、計測した活動量から消費カロリーなどを自動的に算出し、AIがユーザーに合ったトレーニングのアドバイスを行うなど、「健康意識を高める」機能を強化している。自分では意識が怠りがちな健康関連は、客観的に示すAIとの相性がいい。計測データは自動的に蓄積されるため、手間もかからない。

 ただ、他の分野については、必ずしもパーソナライズ化が最適とはいえない。AIが閲覧/視聴傾向などを分析して、おすすめコンテンツやおすすめの行動パターンなどを恒常的にリコメンドするようになると、傾向が片寄り、従来なら自然に目に入っていた重要な時事ニュースに触れないまま過ごす人が増えたり、全国チェーンの飲食店しか案内されず、個人経営店が廃れたりといった弊害が危惧されるからだ。日常のルーティンワークの効率化によって増えた時間を、リコメンドされるままに浪費しては、自発的に探す積極性や創造性も失われてしまう。
 

ドコモの「未来の家プロジェクト」のスマートハウス。AI搭載
スピーカーとは別に、スマートホームの実証実験も進んでいる

 AIや検索エンジンが情報を収集する範囲が広がり、リアルの行動までインデックス化された時、プラットフォーマーはそのビッグデータを活用した新たなビジネスを始めるに違いない。それがAI実用化の第一歩、スマートスピーカーがもたらす、最大の変化だ。(BCN・嵯峨野 芙美)
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年9月号から転載