<インタビュー・時の人>アイファイジャパン 代表取締役 田中大祐

特集

2012/07/10 10:58

 ワイヤレスメモリカード「Eye-Fi」を市場に投入し、デジタルカメラで撮影した写真の用途を広げたアイファイジャパン。製品の販売が好調な状況にあって、同社が力を入れているのは、写真を楽しむための画像や動画の効率的なデータ管理だ。ハードだけにこだわらず、ベンダーとの協業や自社ブランドでの展開を含めてサービスの提供を模索。田中大祐代表取締役に今後進む道を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

◎プロフィール
田中 大祐(たなか だいすけ)
1975年、ブラジル生まれ。一橋大学卒業後、富士通に入社。02年、インターネット写真販売会社のフォトクリエイトを設立。08年、アイファイジャパンを設立し、代表取締役に就任。現在に至る。

写真を楽しむ効率的な画像管理を追求
サービスの提供も視野に入れる



Q. 2008年末にワイヤレスメモリカード「Eye-Fi」を発売して、3年半が経過した。ビジネスの状況は。

A.
 発売当初と比べると、市場に受け入れられていることを実感している。今年に入ってから、販売枚数は前年同月比3倍以上で推移している。この勢いで、今年度(2012年12月期)の売り上げは、前年度比2~3倍の成長を見込んでいる。


Q. 好調の要因はどこにあるのか。

A.
 これまでは、デジタル機器に詳しい人たちが購入している傾向があった。しかし最近は、知識のあるなしに関係なく購入者が増えている。昨年からのスマートフォンの普及で、スマートフォンで写真を撮ってTwitterやFacebookなどのSNSにアップしてシェアするというスタイルはあたりまえになりつつある。さらに一歩進んで、スマートフォンではなく、デジタルカメラで撮影した写真をシェアしたいというケースが出てきている。そのような人たちが、「Eye-Fi」のユーザーになってくれていると捉えている。

Q. 好調の一方で、「Eye-Fi」は「初期設定が複雑だ」との声があるが……。

A.
 そのネックを解消するために、「Eye-Fi Mobile X2 カード for ドコモ」を4月に発売した。この製品では、Android OSを搭載した端末だけでセットアップが完了するという簡単設定を実現した。敷居を低くすることによって、さらにユーザーのすそ野が広がると確信している。また、通信キャリアの直営店であるドコモショップでの販売という新しい販売網も、ユーザー層を広げる力になるはずだ。

Q. 今後も、「Eye-Fi」のラインアップを増やしていくのか。

A.
 もちろん増やしていく。ただ、当社はメモリカードの会社と思われているかもしれないが、実はそうではない。写真の楽しみを広げ、画像や動画などのデジタルデータをいかに効率よく簡単に管理できる世界をつくるかに重きを置いている。その一環としてメモリカードを出しているに過ぎない。今後はメモリカード関連のビジネスだけでなく、例えばキャリアを通してのサービスの提供や、デジカメやスマートフォンに当社の技術を採用してもらうなど、パートナーシップの深耕にも取り組んでいく。

Q. 自社ブランドでクラウドサービスの提供なども行うのか。

A.
 はっきりとした予定は立てていないが、現段階ではストレージサービスとして「Eye-Fi View」を提供している。ハードとソフト、クラウドサービスをつなぐことが当社が構想する環境を実現する方策だと考えている。だからこそ、当然ながらサービスの拡充は念頭に置いている。

・Turning Point

 父親の仕事の関係で、一家は海外を転々としてきた。田中大祐氏は、ブラジルで生まれ、欧米での生活も経験。最終的に日本に落ち着いた。富士通に入社し、システムエンジニアとして富士フイルムの社内システム構築プロジェクトを担当した。カメラという日本を代表するプロダクトを開発・生産する企業での経験は、海外生活が長かった田中氏の「日本に対する強い思い」をかき立てた。これがターニングポイントだ。

 富士通の研修で、シリコンバレーへ。今度は米国のベンチャー企業の活躍を目のあたりにする。その経験を生かし、独立してデジタルカメラ関連のベンチャーを立ち上げた。その後、アイファイジャパンの設立へとつながっていった。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年7月9日付 vol.1439より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 
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