新iPod間もなく発売、ファーストインプレッション

レビュー

2010/09/08 10:01

 9月2日、アップルiPodシリーズの新ラインアップを発表した。今週の発売に先立って、新製品を試用する機会を得たので、iPod nanoを中心にファーストインプレッションをお届けしよう。


最も大きな変化を遂げた「iPod nano」



 今回アップルが発表したのは、iPod touch 第4世代(touch)、iPod nano 第6世代(nano)、iPod shuffle 第4世代(shuffle)の3製品だ。中でも一番大きな変化を遂げたのがnanoだ。2005年9月、当時売れ筋だったiPod miniに変わって登場した初代nano。同社のスティーブ・ジョブズCEOがジーンズのポケットから取り出して、その薄さをアピールしたパフォーマンスは、今でも強く記憶に残っている。

第4世代のiPod shuffle(左上)、第6世代のiPod nano、第4世代のiPod touch(右)

 それ以降、nanoは長方形のボディ上部にディスプレイ、下部にクリックホイールという構造を踏襲してきた。07年に発売した第3世代で一度正方形に近い形状を採用したこともあるが、翌年の第4世代で縦長に戻し、第5世代はそれを継承している。こうしたnanoのデザインは、iPodのある種の完成形ともいえるものだった。

 今回登場した第6世代のnanoは、これらの流れをすべて断ち切り、まったく新しい形に生まれ変わった。miniからnanoに変化したように、新たな名前を与えてもいいほどのフルモデルチェンジだ。

第5世代nano(左)との比較。まさにフルモデルチェンジだ

 最も大きく変化したのは、その形状。前モデルに比べ、大きさ、重さともに半分のサイズにした結果、ほぼ正方形のボディになった。そこへ、iPhoneiPadで市民権を得たマルチタッチインターフェースを組み込み、ほとんどすべての操作を、対角1.54インチの小さなディスプレイに触れて行う仕様にしている。

 これで、01年に誕生した初代iPodから受け継がれてきたクリックホイールを搭載するモデルは、iPod classicだけになった。時代の流れとはいえ、直感的ですぐれたインターフェースが徐々に姿を消していくのには、一抹の寂しさを覚える。

音楽を聴くという原点に回帰



 今回のnanoには、前モデルから搭載しているFMラジオや歩数計も組み込んだ。また、ディスプレイの大きさが男性用腕時計の文字盤と同程度の大きさであることからか、アナログ時計機能も新たに搭載。また、これまでshuffleのみに採用していたクリップを初めて備え、ポケットの少ない服を着ることが多い女性の使い勝手を向上させた。

本体のボタンは、上面にあるスリープ/スリープ解除ボタン(上)とボリュームボタンだけ。クリップがついて持ち歩きが便利になった
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 一方、動画の撮影や閲覧機能、ゲーム機能などはすっぱりと削ぎ落とされ、お世辞にも音がいいとはいえなかった内蔵スピーカーもなくなった。四六時中操作をするデバイスではなく、純粋に音楽を楽しんだり、フィットネスに利用したりする用途に特化し、ときどき写真なども楽しめるという、音楽プレーヤーの原点に回帰したモデル、ということができそうだ。

動画対応ではなくなったが写真の閲覧機能は残った

 今回のiPodのラインアップでは、ゲームや動画など、多機能端末としての用途はtouchに任せ、音楽中心の用途はnanoとshuffleで引き受けるという具合に、用途を整理した。

 nanoはマルチタッチディスプレイを採用していることから、OSはiOSを搭載しているのではないかとの期待もあったが、これは外れに終わった。したがって、今のところアプリケーションを購入して増やしたりすることはできないようだ。

小さすぎる?



 音楽を聴いているときはいいが、それ以外のときに困るのが、イヤホンの収納だ。これまでのnanoであれば、その細長い形状を利用して、イヤホンコードをぐるぐる巻きにしてカバンにしまう、という人も多かったのではないだろうか。しかし、今回のnanoは小さすぎる。付属のイヤホンはなんとか大丈夫だが、もう少し太くて長いケーブルのイヤホンにしたら、イヤホンの取り扱いにかなり困った。

付属のイヤホンならぐるぐる巻きになんとか耐えられる?

 また、これは慣れの問題かもしれないが、小さなディスプレイでマルチタッチ操作はやや使いにくい。実際のところは、指を払う「スワイプ」と画面を90度ごとに好きな角度に変更する「回転」、写真の拡大・縮小で使用する「ダブルタップ」ぐらいしか用途はないので、実際に音楽を聴いている場面ではほとんど問題はない。逆に、iPhoneを使い慣れている人にとっては、同じような操作で音楽を楽しめるので、使いやすいのかもしれない。

マルチタッチディスプレイに触れて操作。小さいので慣れが必要だ


touchとshuffleも新たに進化



 機能を絞り込んだnanoとは対照的に、touchはよりパフォーマンスが上がり、多機能端末としてのパワーが向上した。iPhoneにも搭載しているA4チップや3軸ジャイロセンサーを搭載。さらにRetinaディスプレイも採用し、解像度の高い映像が楽しめる。また、ニつのカメラを搭載することで、WiFiを使ったビデオ通話が可能になり、HDビデオの録画にも対応した。
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 touchには、これまでもゲーム機としての側面があったが、今回「Game Center」機能を新たに搭載。友人やネット上のプレーヤーと対戦してゲームを楽しむこともできるようにして、さらにその機能をアップした。

 iPhone 4とほとんど同じような仕様で、3G契約をしたくない人向けのiPhoneともいえるtouchだが、ただ一つ、大きな違いがある。本体の形状だ。iPhone 4は角ばった形状で、9.3mmの厚さがあるのに対し、touchはこれまで通り丸みを帯びた鏡面加工の裏面が特徴で、厚さはわずか7.2mmしかない。ゲームに夢中になっていると、本体を折ってしまうのではないかと心配するほどだ。手に取ると、手のひらに吸い付くような感覚が心地いい。

 一方、もっと安価に、音楽だけを楽しむためのshuffleも、形状が大きく変わった。前モデルでは、本体から音楽コントロール用のボタンを一切なくし、細長いキャラメルのような形状を採用していた。非常に小さく、小物好きにはたまらない魅力ある製品に仕上がっていたのだが……。リモコン付きのイヤホンを使うか、専用のアダプタを使わなければ操作できないという仕様が一部の不興を買っていたようだ。

新しいnano(左)とshuffle。いずれもほぼ正方形の形状になった

 新shuffleは、本体を1世代前の形状に戻し、nanoよりひと回り小さいほぼ正方形にシェイプアップして再登場した。バッテリ駆動時間を5割以上伸ばしながら、5000円を下回る価格で販売する。

そしてPingがもたらす音楽の広がり



 新製品と同時に、音楽管理ソフトの新バージョン「iTunes 10」も発表された。今回は大きな変更が施された。それは「Ping」だ。TwitterやFacebookのような機能をもつ音楽専用のSNS機能だ。これをiTunesに組み込んだ。iTunesのIDでそのまま参加できる手軽さも手伝って、サービスを開始してわずか2日で100万人のユーザーが参加登録を行ったという。

早くも100万人単位で会員が増えている新機能「Ping」

 Pingの意味は大きい。CDショップであれ音楽配信であれ、気に入った作品に出会うチャンスが意外に少ないのが音楽の世界。数が膨大なうえに、ある一定の時間を割いて実際に「聴いてみないとわからない」からだ。オンラインでの試聴が一般的になったとはいえ、単に視聴するだけでもかなりの時間がかかる。

 そこで、有効なのがコミュニティだ。自分と趣味が合う人、信頼できる人からのオススメ情報は、すばらしい楽曲と出会うチャンスを格段に広げてくれる。その結果として、アーティストもファンが増え、さらにいい楽曲を創作する原動力になる……。いいことづくめなのだ。こうした広がりの中から、新しい音楽のムーブメントも生まれてくるかもしれない。

 iTunesとiPodが切り拓いた携帯オーディオの世界は、ハードウェアとしては円熟のときを迎えつつある。これから重要になるのは、ハードとソフト、さらにネットワークとコミュニティを駆使してつくり上げる「音楽環境ソリューション」ではないだろうか。テーマは「楽曲やアーティストとの出会い」。携帯オーディオの進化は、新たなフェーズに入ったといえるだろう。(BCN・道越一郎)

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