売れる高級PCケース、背景に新しい自作派、「高くてもいいものが欲しい」

特集

2008/03/14 01:23

 オーディオ製品のような高級PCケースが売れている。なかでも人気が高いのはアメリカのAntec製品。なんと1年半もの間、ずっと販売台数シェア1位を走り続けている超人気モデル「SOLO W/O PSU」もこのメーカーのものだ。ここしばらく2ケタ成長を続ける自作PC市場は、こうした本物・高級志向にも支えられているといえそうだ。「BCNランキング」でPCケースを中心に自作市場の動向をまとめた。

●06年冬からずっと1位のAntec、秋葉原にPCケース専門ショールームも

 AntecのPCケースは、なんといってもカッコいいのが特徴。価格はやや高めだが、オーディオ製品のような高級感が独特の雰囲気をかもし出している。さらに性能面でも実現が難しいとされる冷却性と静音性を両立。配線を束ねてすっきりさせることで内部の空気の流れをよくするとともに、ファン部分にはスピード調節が可能なボタンを設ける芸の細かさも。さらに、パーツを取り付ける際には、内部フレームとの間にシリコン製のクッションを挿入できるので、振動を抑え、これも静音性に貢献している。


 同社は07年8月、東京・千代田区の秋葉原にショールームをオープンした。秋葉原といえどもPCケース専門のショールームは珍しい。製品と同じようなテイストをもつブティック風の高級感溢れる店内で、購入前に製品をゆっくり手に取って確かめられる。ここでPCケースの購入はできないが、他のメーカーは販売しないパネルやヒンジ、ネジなどの保守部品を販売し、アフターケアにも力を入れている。


 一見、かなり特殊なPCケースを販売していると思われがちなAntecだが、実はかなり前からPCケースのメーカーシェアのトップを独走している実力派だ。販売台数で06年12月あたりから急激に伸び、それまで1位だったサイズを抜いて、以来ずっと1位を走り続けている。直近の2月でも、販売台数シェアは20.9%でトップ。2位のサイズが10%前半、3位以降はクーラーマスター、エーオープンジャパン、スリー・アール システムの3社が一桁台後半で推移するなか、まさにダントツだ。

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 販売金額では06年10月から1位を維持しており、2月の販売金額はシェアは30.5%。台数シェアに比べ金額シェアが高いのは、通常1万円を切る安価なモデルが売れ筋のPCケースにあって、1万5000円前後とやや高価なモデルを販売しているためだ。

●30-40代男性の間で花開く新しい自作PC文化


 Antecの強さの秘密は、売れ筋製品「SOLO W/O PSU」の存在にある。なんと1年6か月もの間1位に君臨し続けている超人気モデルだ。2月の機種別販売台数シェアトップ10でも当たり前のように1位を獲得。発売4か月後の06年9月から継続して、2位以下を大きく引き離した5%程度のシェアを維持する強者だ。3月13日にBCNが集計した市場推定価格で1万3000円と同社製品のなかでは安価なモデルだが、シンプルで高級感があり、置き場所を選ばない。厚さ約1mmの内部フレームとシリコン製の足を採用し振動を防ぐほか、天板とサイドパネルの内側には遮音シートを備える。もちろんその他の製品も人気が高い。2月の販売台数シェアトップ10では、上位4機種でAntecの製品が占めた。


 他社製ケースを見ると、5位は冷却性を重視したクーラーマスターの「RC-690-KKN2-GP」で1.5%、6位は電源ボタン部がブルーに光るサイズの「SCY-0939-BK」で1.3%などが並ぶ。因みに、PCケースの人気カラーはブラックだが、Antecでは「日本ではホワイトも人気なので、日本限定で販売しているホワイトモデルもある」(八倉巻孝仁・Antec正規代理店 リンクスインターナショナル ショールーム担当)という。


 PCケース全体で、販売台数と金額の対前年比を見ると、この1年は130%程度で推移。市場には勢いがあり、自作市場も好調といえそうだ。しかし、その中身は以前とかなり変化してきている。Antecショールーム担当者は「昔はPCを自作すれば安くなったが、今は既製品を購入するより高くつく。30-40代男性がプラモデルのようにお金をかけて趣味にしている」という。安いモデルより、少し高くても高機能なモデルを選択する傾向が目立つようだ。しばらくは、こうした高級・本物志向が自作市場活性化のキーワードになるだろう。(BCN・井上真希子)



*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで119品目を対象としています。