トップは「裸族のお立ち台」、百花繚乱のおもしろHDDケース大集合

特集

2007/11/08 18:56

 「裸族のお立ち台」が10月、販売台数シェアで1位を獲得した。ジャンルはHDDケース。単体のHDDを外付けHDDとして使うための箱だ。最近では初心者でも簡単に利用できる製品も増え市場が広がってきた。なぜかヘンテコな名前が多いのもHDDケースの特徴。そこで、おもしろいネーミングのHDDケースを中心に「BCNランキング」で売れ筋を探った。

●ベアドライブを立てて使う「裸族のお立ち台」の斬新さに支持

 10月のHDDケースで機種別販売台数シェア1位に輝いたのは、センチュリーの「裸族のお立ち台(CROSU2)」。シェアは2.2%だった。通常のHDDケースの形状と異なるクレードル型で、上面にHDDを直立させて差し込むのが特徴。2.5、3.5インチHDDいずれも使用できる。インターフェイスはSerialATA。週次データでは9月中旬から急上昇し、10月第2週にはついに1位を獲得した。


 なぜHDDケースで裸族? という疑問に答えるためには多少説明が必要だろう。HDDには、ベアドライブ(bare drive)という形態がある。裸の、あるいはむき出しのHDDという意味で、HDDそのもののことを指す。一般向けには、これをキレイなケースに入れて「外付けHDD」として販売することになる。当然、同じ容量ならケースがない分ベアドライブの方が断然安い。そこで、HDDを入れる「ケース」だけ、という製品も存在するわけだ。


 HDDとケースを別々に買ってきて組み立てれば、外付けHDDの出来上がり。これが世に言う外付けHDDの「自作」。最近は初心者でも簡単に組み立てられるケースも販売されており、ハードルはそれほど高くない。通常の外付けHDDを購入するよりも安くすむことが多いのに加え、使わなくなったPCのHDDの活用や、将来HDDを買い増しできるメリットもある。


 つまり、「ベア(裸の)ドライブを有効に活用するHDDケース」という意味が「裸族」には込められているのだ。人気があるのは、HDDを格納してしまう普通のケースと違って、ケースで被わずに裸のまま利用できるため、HDDを付け替えるのが簡単という理由が考えられる。その他、HDDが裸でむき出しになっている見た目のおもしろさもウケているのだろう。


 余談が長くなった。ランキングに戻ろう。10月の2位は、玄人志向の「2.5インチHDDケース クロムシルバー(GW2.5AI-U2)」でシェア1.9%。シルバーのシンプルなボディで、2.5インチのHDDに対応する。インターフェイスはIDE。5位はMARSHALの「大判振舞 シルバー(MAL-0335S)」でシェア1.6%。3.5インチのHDDを装着できるケースで、アクセスランプにブルーのLEDを採用した。インターフェイスはIDEとSerialATA。縦・横置きのいずれも可能。なお、トップ10では、2.5と3.5インチHDD両方に対応するのが1機種、2.5インチHDD対応が2機種。そのほかはすべて3.5インチHDDに対応する。


●スチャッと爽快に装着! おしゃれ系から露出系まで

 さて、HDDケースには「裸族のお立ち台」のほかにも、負けず劣らずヘンテコな名前や形状をもつものが多い。そんな「キワモノ?」たちに集合してもらった。まずは、装着の仕方や外観が印象的な製品から。

 約10秒で簡単に組み立てられるというのが、その名も「3ステップケース ガチャポンパッ!(OWL-EGP35/EU)」。オウルテックの3.5インチHDD対応ケースで、「カバーを開ける」「HDDを装着する」「カバーを閉める」の3ステップで組み立てられる。8cmの吸気ファンも搭載する。最新の10月第5週(10月29日-11月4日)週次ランキングでは、ブラックモデルが14位にランクインした。

 PC周辺機器は一般的に無機質になりがちだが、HDDケースもまたしかり。そこで、インテリアになじむおしゃれなHDDケースとして、恵安の2.5インチHDDに対応する「JHHD-251シリーズ」がある。カラーバリエーションが豊富で黒、白、青、緑、ピンク、シルバーの6色を揃える。同ランキングでは黒が223位にランクイン。また、アクリル製のスケルトンタイプで、内部のHDDが丸見えで涼しげなのが玄人志向の「GW2.5SK-U2」。HDDをケースに入れたとしても、その姿をいつでも眺めていられる。2.5インチHDDに対応。順位は360位。



●温度の監視や指紋認証、振動のキャッチ……もはや何でもアリ?!

 それでも物足りないなら、ちょっと役立つ機能を備えるHDDケースも販売されている。ケース内部のHDDの様子を数値で確認したい人は、センチュリーの「冷やし系HDD検温番(CLS35EU2RF)」がぴったり。ケースの前面に液晶画面を備え、HDDの温度と付属する8cm冷却ファンの回転数を表示する。HDDの温度の上限を設定すると、超えた場合にアラームで知らせてくれる監視機能付き。3.5インチHDDに対応。同ランキングの順位は29位。

 中には最近流行の認証機能付きケースも。玄人志向の「指紋認証2.5型HDDケース(GW2.5FP-U2/CB)」。上面に指紋認証センサーを搭載し、最大10個の指紋を登録可能。第3者からのアクセスを防げる。さらに、HDDを振動などから保護できるのが、センチュリーの「振動バッド(シンドバッド、CSB25U2)」。振動感知機能付きで、振動や傾きを感じた場合、HDDのアクセスを停止してくれる。衝撃に備えるシリコンジャケット付き。2.5インチHDDに対応。順位は223位。



●玄人志向とセンチュリーでおよそ4割 ケースの主流は3.5インチHDD対応

 最後に、HDDケース全体の動向をまとめておこう。メーカー別のシェアを見ると、玄人志向とセンチュリーの2社で全体の約4割を占める。販売台数シェア推移を見てみると、玄人志向が1位で20%台前半、センチュリーが2位で10%台後半で並行する。この後に続く形で、3位がオウルテック、4位がラトックシステム、5位がサイズとなっており、いずれも10%前後で推移している。

 しかし、販売金額ベースで見ると動きは異なってくる。1位はセンチュリーで30%前後、2位は玄人志向で10%台後半と順位が入れ替わる。また、3位はラトックシステムで10%代前半、4位はオウルテックで10%前後とこちらも逆転。5位は販売台数ベースと同様のサイズで5%前後。こうして比較すると、価格勝負なのか、機能勝負なのか、各メーカーの戦略も垣間見える。



 ケースに入れるHDDのサイズについても見ておこう。現在もっとも主流なサイズは3.5インチHDDで、全体の7割近くを占める。次いで多いのが2.5インチHDDでおよそ3割。最近では両サイズに対応するタイプも若干増えてきているが、使用するHDDのサイズを事前に確認した上でケースを選ぼう。また、HDDのインターフェイスにも注意したい。主な規格はIDEとSerialATAで、それぞれ全体の5割と3割程度。こちらも両規格に対応するものが1割ほどある。購入前には必ずHDDのインターフェイスをチェックしよう。(BCN・井上真希子)




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