大ブレイクの「初音ミク」、売り上げもぶっちぎりのトップを爆走中!

特集

2007/09/27 10:50

 すごい新人ボーカリストがデビューした! まるで萌え系アニメキャラそのもののような声なのに、どんな曲でも歌いこなせる可能性を秘めた驚異の女性アイドル歌手。いま、ネットの世界で大ブレイク中なのである、その名は「初音ミク」。BCNランキングでもぶっちぎりで1位を爆走中だ。

●新人アイドル歌手「初音ミク」はボーカル・アンドロイド

 ネットの動画配信サイトで大ブレイク中の「初音ミク」。「そんな新人いたっけ?」と首を傾げる人もいるだろう。簡単に説明すると「初音ミク」は実在する歌手ではなく、PC用の音声合成ソフトウェアだ。札幌市に本社を置くクリプトン・フューチャー・メディアが8月に発売した「VOCALOID(ボーカロイド)2」キャラクター・ボーカル・シリーズの第1弾、それが「初音ミク」だ。

 「VOCALOID 2」は、メロディと歌詞を入力すると、合成音声がメロディにあわせて歌詞どおりに歌ってくれる。さらに「録音された人間の声を元に、極めてリアルに音声合成された歌声」で歌うのが特徴。声優の藤田咲さんが演じるキャラクター・ボイスを元につくられる歌声は、まさにポップでキュートな可愛らしいアイドル歌手そのものだ。

 うまく設定できると、フォルテやクレッシェンド、ビブラートまでも的確に表現し、歌い方や声質までも変化させることができる。さらに、最大16人までの「コーラス」も可能。メロディの入力も、バーチャル・キーボードマウスでクリックして、音程を確認しながら打ち込んでいくだけ。他の音楽制作用ソフトとも連携できるので、その気になればMIDI楽器などを使って、本格的な伴奏をつけることもできる。

 「VOCALOID 2」の音声合成、ボーカル音源のサンプリングなどには、ヤマハの最先端音楽技術が使われている。06年に発売した「VOCALOID」シリーズよりも、さらに滑らかでリアル、よりビビットな歌声が再現できるように進化した。ちなみに「VOCALOID」とは、「ボーカル」と「アンドロイド」をあわせた造語だ。

●発売開始わずか3週でシェア30%を超える大ヒット作に

 大ブレイクのきっかけになったのは、製品Webサイトで配布されているデモソングにあるらしい。MP3形式で書き出された3曲のデモソングがダウンロードできるようになっており、それを聞いた一部のユーザーが、透明感のある伸びやかな歌声と楽曲のクオリティーの高さに感動。さっそくソフトを購入して、自作の歌を「初音ミク」に歌わせ、それを「ニコニコ動画」や「YouTube」に次々と登録し始めた。こうしていろんなところで「初音ミク」の歌声を聞いた人たちが、このソフトに魅せられ、ソフトを購入し、さらに自作の歌をアップして、といった具合に、どんどんユーザーが増えていったようだ。

 BCNランキングのサウンド関連ソフトでも、「初音ミク」はダントツの売上げを続けている。何しろ製品別の販売数量シェアでは、発売からわすか3週でシェア30%を突破して9月17-23日では30.4%を記録。2位の「Sound it! 5.0 for Windows」(INTERNET)の4倍以上のシェアを獲得しているのである。


 メーカー別の販売数量で見ても、それまでクリプトン・フューチャー・メディアのシェアは6%を超えることはなかったが、「初音ミク」発売と同時にシェアが爆発。9月17-23日のランキングでは、実にメーカーシェア約33.9%を占めるまでに急成長している。


 比較的地味、というか利用者が限られていた音楽制作ソフトでは、とにかく異例の売れ行きだ。あまりに急速な需要拡大に、メーカーでは生産が追いつかない状態ともいう。ちなみに、BCNが07年9月18-24日で集計した市場推定価格は1万5300円。音楽制作ソフトというと、プロが使うような高価な製品も多い中で、比較的手に入れやすい価格設定なのも、好調な販売を後押ししている理由のひとつと言えるだろう。

●「実在する人?」と思える歌声。第2弾の準備も着々と

 9月25日現在、「ニコニコ動画」には、「初音ミク」の歌が約1890件ほど登録されている。試しに聞いてみると、なかには「ほんとに実在の初音ミクが存在するのでは?」と疑いたくなるような、恐ろしくリアルでクオリティーの高い歌声を聞ける楽曲もあったりする。楽曲をアップしたユーザーが、どれだけこのソフトを使いこなしているか、「初音ミク」にいかに熱中してつくり込んでいるか、歌声を聞くだけで想像できそうだ。

 「まだ見ぬ未来から、初めての音がやって来る」が名前の由来という「初音ミク」。クリプトン・フューチャー・メディアでは、シリーズ第2弾として、12月にも次の新人(?)をデビューさせる計画らしい。もしかしたら、彼女たちバーチャル・アイドルが歌うオリジナル曲が、ヒットチャートの上位にランクインする日が、ほんとうにいつかやって来るのかもしれない。(フリーライター・中村光宏)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など23社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。

クリプトン・フューチャー・メディア=http://www.crypton.co.jp/


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