年々、全国的な盛り上がりをみせる「中学ロボコン」「ジュニアロボコン」。その数は年間200大会を超えるとまでいわれている。だが、10年以上前ともなれば、ロボコンの存在すら知る人は少なかった。そうしたなか、「地方の中学生にこそ高い技術力と表現力が必要」との想いから、校内ロボコンを立ち上げたのが、現・八戸市立東中学校の下山大(ゆたか)先生率いる八戸市立第三中学校であった。まったくの白紙状態からスタートしたものの、生徒たちから圧倒的支持を得て、大会は年を追うごとに盛況に。ついには校内限定から八戸市内の各中学をも

中学ロボコンの先駆的存在
規模こそ小さいが、全国の模範に


 年々、全国的な盛り上がりをみせる「中学ロボコン」「ジュニアロボコン」。その数は年間200大会を超えるとまでいわれている。だが、10年以上前ともなれば、ロボコンの存在すら知る人は少なかった。そうしたなか、「地方の中学生にこそ高い技術力と表現力が必要」との想いから、校内ロボコンを立ち上げたのが、現・八戸市立東中学校の下山大(ゆたか)先生率いる八戸市立第三中学校であった。まったくの白紙状態からスタートしたものの、生徒たちから圧倒的支持を得て、大会は年を追うごとに盛況に。ついには校内限定から八戸市内の各中学をも巻き込んだ大会へと発展、市民的イベントにまでなった。(相米周二●取材/文)

●卒業生の思い出づくりから中学ロボコンが誕生した

 青森県八戸市といえば、屈指の漁港を有し、東北新幹線八戸駅の開業で、観光客も増加の一途をたどる勢いのある市である。

 厳しい冬の時期、市民を熱くさせるのが古来よりの祭り「八戸えんぶり」、そして「八戸市中学校ロボットコンテスト」だ。今回で5回目を迎えたロボコン。楽しみにしているファンは増える一方である。

 「ロボコンの発足は1991年にさかのぼります。八戸三中で技術の講師をしていた下山大先生が、生徒の卒業製作の思い出づくりも兼ね、「八戸三中ロボコン」を考案したのが始まり。やがて下山先生が他校へ転任したのに伴い、他の中学にも参加を呼びかけ、現在のような大会へと発展させたのです」

 こう説明してくれたのは第2回大会から運営に携わる広住仁氏(青森県立種差少年自然の家・指導主事)だ。規模こそ小さいものの、八戸市中学ロボコンの活動は当初より高く評価され、今では全国の中学ロボコンの模範となっているといわれる。

 今回、大会に参加したのは、江陽、小中野、大館、東、明治の各中学21チーム。競技ルールは陣地内にセッティングしたスチロールブロックを、自分のコートに押し込む、もしくは高さ45センチ、25センチの棒に刺すことにより、点数は5点、3点と加算される。相手の色の棒に刺したり、ゾーンに置くと相手側の得点となり、また相手コートに触れることはできないが、空中ならば進入してもよい。ロボット2台で1チーム。試合時間は準決勝まで2分間、準決勝から3分間である。

●出場ロボットの「車検」と勝敗を左右する「特許制度」

 競技の開始に先立ち、出場するロボットは「車検」を受けなければならない。これは、競技ルールに適合したロボットであるかどうかの検査である。いくつかのチームに、高さや幅に制限を越えた部分が指摘され、慌てて削ったり、補正する光景も見られた。

 次に「特許制度」である。

 「あまり聴きなれない言葉ですが、ロボットを作る際に、独自性のあるアイデアを特許として申請させ、これを審査・認定する制度です。特許認定されたロボットには、特別に5ポイントが与えられ、競技を有利に進めることができる。このため製作過程から生徒たちは熱くなれるのです」(広住指導主事)

 今大会で、特許申請は7件出されたが、審査を通り、認定されたのは2件だった。

 車検と校内特許の認定が終了し、下山先生が大会ルールを説明する。そして競技開始。緒戦では操作がおぼつかない、コードをロボットに巻きつけてしまう、機器の故障などでまったく動かないなど、会場を笑いに包む光景が見受けられた。だが、準決勝からは観客も手に汗を握る好試合が続出。見事な操作テクニックに加え、相手の加点を防ぐための高度なテクニックなどが披露され、会場は沸きに湧いた。 

 決勝戦であたったのは大館中学Bの「NIKK・J」チームと、東中Cの「3年3組」チーム。最後の最後まで勝敗の行方は分からなかったが、大館中が判定の結果、見事に優勝を獲得した。同中はさらにアイデアやチームワーク、競技のアピール度などを総合的に勘案したロボコン大賞も併せて受賞した。

 競技中の司会・進行役、そして受賞式の司会にと奔走した下山先生が、汗を拭きつつこう述べる。

 「年々、確実にレベルはアップしている。そして観客の目も肥えてきている。後に続く生徒たちには、そうした点を考慮して来年にチャレンジして欲しいものです。先輩たちが残したものを、自分たちらしく工夫、改良してさらに後進に伝えていく。いわば個性の継承。それが伝統となって、八戸市中学ロボコンは他の勝敗重視の大会とは一線を画すものとなっていくはずです」

 ロボット製作に熱中するあまり、“下校拒否”する生徒がいた。食事やトイレに行く時間も惜しんで白熱した討論を続けたチームもあった。勝敗は二の次。製作を楽しみ、参加し、他校、地域との交流を優先させる大会、いや、「祭り」であることがよく分かる。

 なお、優勝、ロボコン大賞、準優勝以外の各賞は次のとおり。

デザイン賞=江陽中G(I?エリザベス)、アイデア賞=大館中A(シャケ弁380円25%オフ)、アイデア倒れ賞=大館中C(上田の家)、技術賞=東中C(3年組)。

●地方の中学生の力を見せつけたい 下山 大八戸市立東中学校・教諭

 八戸三中時代に試みたロボコン。当時の会場は校内の剣道場、観客もわずかなものだった。だが、「ロボットを製作する生徒たちの目は輝き、やる気に満ちており、通常の授業では決して得られない何かが秘められていることを、ロボットづくりから学ぶことができた」と下山教諭は振り返る。

 学校内にロボコンの存在が浸透するにつれ、参加するチームも増えた。そしてロボットづくりの楽しさに加え、生徒たちはチームワークをいかに良好なものにしていくべきか、また、他のチームといかに交流していくのかなど新たな課題に対して「自分たちで考え、作り、行動するという意識が自然に芽生えていった」。こうしたメリットを八戸市の中学校全体で共有したいとの想いから「八戸市中学校ロボットコンテスト」が誕生したのである。

 会場を大型ショッピングセンターのホールに選んだのは、なるべく多くの観客に見て楽しんでもらいたいため。これにより、生徒たちはいかに観客を魅了するかを思案し、表現力も高まっていくという。大会をマンネリ化させないよう、毎回、テーマやルールも変えるなどの努力も怠らない。

 「地方の中学生でも中央に劣らない技術力、表現力があることを自覚してほしいし、自信をもってほしい。そして故郷の良さを再認識してもらうことが、このロボコンの最大の目的でもあるのです」

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今年1月26日に開催されたBCN AWARD 2007/
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※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 中学ロボコンへの道>第40回 熱闘!八戸市中学校ロボットコンテストは、週刊BCN 2007年3月19日発行 vol.1179に掲載した記事を転載したものです。