技術立国日本の次代を担う若い世代にものづくりの情熱を伝承し、IT産業に優秀な人材を招き入れることを趣旨として創設された、「BCN ITジュニア賞2007」が、1月26日、東京・港区の青山ダイヤモンドホールにおいて開催された。今回で2回目のITジュニア賞は、昨年12月4日に東京都から認可を受けたNPO法人「ITジュニア育成交流協会」(高山由理事長)によって審査が行われ、高等学校2校、高等専門学校3校を選定。IT業界のトップベンダーが集う「BCN AWARD 2007」の会場で表彰式を行った。

次代のIT産業を担う

 技術立国日本の次代を担う若い世代にものづくりの情熱を伝承し、IT産業に優秀な人材を招き入れることを趣旨として創設された、「BCN ITジュニア賞2007」が、1月26日、東京・港区の青山ダイヤモンドホールにおいて開催された。今回で2回目のITジュニア賞は、昨年12月4日に東京都から認可を受けたNPO法人「ITジュニア育成交流協会」(高山由理事長)によって審査が行われ、高等学校2校、高等専門学校3校を選定。IT業界のトップベンダーが集う「BCN AWARD 2007」の会場で表彰式を行った。


●長野工業高等専門学校

「しゃぼん玉とばそ」
タッチパネルでしゃぼん玉遊びを実現


 長野工業高等専門学校の「しゃぼん玉とばそ」は、第17回全国高等専門学校プログラミングコンテスト課題部門で最優秀賞を受賞した作品。画面上に色とりどりのしゃぼん玉を飛ばし、タッチパネルを使って、そのしゃぼん玉に触ると実際に割れて音が出るという遊びに仕立て上げたものだ。

 電子情報工学科3年生のチーム5人がトイザらスや長野少年科学センターに出向き、人気のある遊びをリサーチした結果、柴田晃佐さんが「しゃぼん玉でいこう」と提案、全員でアイデアを煮詰めていった。しゃぼん玉をつくるのに、リーダーの石飛太一さんがUSB接続のストロー型コントローラを開発。息を吹き込むと音量としてキャッチできるようにマイクとセンサーが使われ、大型のタッチパネルに現れたしゃぼん玉は、8種類のシャボン液ごとに、割れた際の音を変えるという凝りようだ。

 この作品は、NPO法人ITジュニア育成交流協会の依頼を受けて、昨年12月、東京都世田谷区の北沢小学校で開かれた実習体験授業で、小学校5年生34名を前に実演し好評を博した。ITジュニア賞 2007では、高山由理事長からそのときの模様が映像とともに紹介された。

また、表彰式の後の懇親会場に設営されたブースでも、「しゃぼん玉とばそ」の人気は絶大で、BCN AWARD 2007の受賞ベンダー幹部がこぞって集まり、童心に返って(?)タッチパネルのしゃぼん玉に手を伸ばす姿が最後まで絶えなかった。

 「プロコン大会のプレゼンよりも緊張した」という柴田さんと石飛さんだったが、デモに入ると次第に口調もなめらかに。指導教員の伊藤祥一助手(理学博士)も、その姿に満足そうな面持ちだった。

●鈴鹿工業高等専門学校

「RGマシン・ビルダー」
PCで作った“ピタゴラスイッチ”


 鈴鹿工業高等専門学校の作品「ループ・ゴールドバーグマシン・ビルダー」は、全国高専プログラミングコンテスト自由部門で最優秀賞を受賞した。ループ・ゴールドバーグマシン(以下RGマシン)とは、ある単純な動作目的のために、わざと手の込んだからくりを入れて、それらが次々と連鎖していく面白さを追求する仕組みのこと。ドミノを倒せばボールが転がり、そのボールがスイッチボタンを直撃して矢が発射され、風船を割る…といった一連の仕組みは、NHK教育テレビのピタゴラスイッチや「トムとジェリー」のアニメで知られている。

 現実のRGマシンを作ろうとすると、体育館のようなスペースと構築物が必要となるなどさまざまな制約があるため、これをPC上で擬似的に作って楽しむシステムを開発しようとしたのがRGマシン・ビルダーである。

 今回のメンバーは電子情報工学科4年生の高橋勲さん、出口祐輝さんなど5人の仲良しグループ。指導教員の田添丈博講師が担当する創造工学の授業で、各自が取り組みたいアイデアを募ったときに、すでにRGマシン・ビルダーに取り組むことを決めており、その構想やコンセプトが明確だったため、プロコンへの出場を促したという経緯がある。

 プロコンでの最優秀賞受賞により周囲の眼差しも変わった。高橋さんによれば、「自己評価より周囲の評価が高く、とまどうこともあります」。出口さんともども「大学院までは進みたい」そうで、これからは地道な研究生活に戻る。もっとも、この3月末にはマイクロソフトが大阪で開く「Student Day」というイベントでのデモ出演を依頼されており、周囲の喧噪はまだまだ続きそうだ。

●金沢北陵高等学校

「ターゲット2」
状況に応じて戦法を変える頭脳ゲーム


 金沢北陵高等学校は、昨年11月に開催された第27回全国高校生プログラミングコンテストで1位に輝いたことが評価され、ITジュニア賞を受賞した。

 高校プロコンではトーナメント方式の直接対決でプログラミングの力量を競い合うゲーム「ターゲット2」を採用。直線道路上に大砲を構え合い、相手の大砲が前に出るか後ろに下がるかを予測しながら適切な角度で弾を発射する「陣地移動型砲撃戦」のようなゲームである。

 どちらかの“弾”がターゲットである相手の“砲台”に命中した後は、5分間の作戦タイムによってプログラムの差し替えができる。出場チームの母体である金沢北陵高校コンピュータ部では特性の違う2種類のプログラミングを用意して対戦相手の弱点を突く作戦に出た。プログラミング技術もさることながら状況に応じて戦い方を変える作戦面でも他校に秀でていたことが有利に働いた。

 驚くべきことにプログラミング開発の中心メンバーの大家英明さんと紙谷星吾さんはいずれも総合学科1年生。高校に進学してから本格的にプログラミングのJavaを学び始め、わずか半年あまりで並みいる強豪校を下して高校プロコン優勝をさらった。大家さんがプログラムを書き、紙谷さんが不具合を取り除いたり、性能テストを手がけるなど役割を明確化することで作業効率を高めた。

 過去にコンピュータウイルスに感染し「なんとか自力でウイルスを駆逐させてやろう」と思ったことが大家さんのプログラミングの始まり。紙谷さんはアドベンチャーゲームの「ファイナルファンタジーに惹かれた」ことがプログラミングに興味を持つきっかけになった。今後もコンピュータ部の主要メンバーとしてさまざまなコンテストや競技大会に出場し、腕を磨いていく考えだ。

●小山工業高等専門学校

「みゅ?びっく」
ブロックを組み合わせて音や光を発する


 小山工業高等専門学校は昨年10月に開催された全国高専プログラミングコンテスト課題部門で審査員特別賞を取ったことが評価され、ITジュニア賞を受賞した。
 高専プロコンではブロックの組み合わせによって音楽の再生や発光の仕方が変わる「みゅ?びっく」を出品。課題の「子供心とコンピュータ」に沿って、ITを活用したハイテク玩具に仕上げた。
 操作が簡単で、小学校にあがる前の幼児でも楽しく遊べるのがこの作品の売りだ。
 ITジュニア賞と並行して開催されたトップシェアベンダーを表彰する「BCN AWARD 2007」ではベンダー幹部ら約250人が参加した。会場に設置された「みゅ?びっく」のデモコーナーには多くのベンダー幹部が訪れ、実際にブロックを組み立てて音や光の出具合を体験。小山高専の学生に作品の機能や今後の応用について興味深そうに質問をぶつけていた。
 「みゅ?びっく」制作チームのリーダーを務める電気情報工学科5年の椎名誠さんはベンダー幹部との交流を通じて「トップシェアをとるようなベンダーの方々は楽しみながら仕事に取り組んでいる様子がよく伝わってきた。仕事を楽しんでいるからこそ、よい業績が残せる」と、ポジティブに働く大切さを学んだようだった。
 時間の制約で今回は実現できなかったが、インターネットに接続して好きな音楽をブロックに取り込んだり、オンラインで共同してブロックを組み立てたりするなど、「遊びの幅を広げる機能の実装も可能」(電気情報工学科5年生の金子真尚さん)という。ブロックの数を増やせば、さらに複雑な組み合わせもできる。デモを体験したベンダー幹部からは「ブロック内部の電子回路の集積度を高めて小型化すれば、ヒット商品になる潜在力があるアイデア」と評価する声が聞かれた。

●長野県松本工業高等学校

ものづくりコンテストで活躍
電子回路組立部門で第1位


 長野県松本工業高等学校は、全国工業高等学校長協会が主催する第6回高校生ものづくりコンテスト全国大会の電子回路組立部門において、小口宏之さん(電子工業科2年生)が1位の栄冠に輝いた。

 これは、持参したコンピュータに、(1)設計・製作する回路(2)制御対象の回路を組み合わせたコンピュータシステムを作り、ひとつの動作をするプログラムを完成させるというもので、ハードウェアの組み立て技術と回路設計技術に加えて、ソフトウェア組み込み技術を総合的に競う全国大会だ。小口さんはプログラミング技術と組立技術、設計力などの各評価項目で着実に点数を重ね、全国のブロック予選を勝ち抜いた10名のなかでも圧倒的な成績で優勝した。

 実は、松本工業の属する北信越ブロック大会で優勝したのは先輩の前田直人さん(電子工業科3年生)。前田さんは全日本ロボット相撲大会高校生の部でもブロック大会で優勝。2つの全国大会が日程的にかち合ってしまったためロボット相撲大会に出場し、ブロック大会2位だった小口さんが繰り上げ出場で全国大会を制した。同校のレベルの高さを示すエピソードだが、それを支えているのが40名の部員からなる電子工学部の活動だ。

 ITジュニア賞 2007の会場に、上記の回路や各種ロボット、ライントレースカーなどを持ち込んでデモをした2人の感想は、「ソフト開発における高専生の発想は凄いなと感じた」(前田さん)。でも、「ハードと組み込みソフトなら僕らも負けてはいない」(小口さん)。

 2人とも会場で高専生の作品に刺激されたようで、今後の部活動へフィードバックしていきたいとのこと。なお、前田さんは大学へ進学して電子回路を究める。