好調続く「全部入りプロジェクター」、人気の秘密は?

特集

2006/11/15 03:25

 大画面薄型テレビに押されている感のあるプロジェクター市場。しかし、昨年登場した新カテゴリー製品の人気は衰えない。プロジェクターに加えDVDプレーヤーとスピーカーを1つのきょう体に収めたオールインワンプロジェクターだ。ほぼ1年にわたって首位を走り続けている、その理由と魅力に「BCNランキング」で迫る。

 大画面薄型テレビに押されている感のあるプロジェクター市場。しかし、昨年登場した新カテゴリー製品の人気は衰えない。プロジェクターに加えDVDプレーヤーとスピーカーを1つのきょう体に収めたオールインワンプロジェクターだ。ほぼ1年にわたって首位を走り続けている、その理由と魅力に「BCNランキング」で迫る。


 11月第2週(6-12日)、13.6%の販売台数シェアを獲得して1位になったのは、セイコーエプソン(エプソン)の「EMP-TWD3SP」。プロジェクターに加えてDVDプレーヤーとスピーカーを一体化したdreamio「EMP-TWD3」に80型ワイドスクリーンをセットにしたモデル。9月21日発売だが11月第1週(10月30日-11月5日)に続いて1位を獲得した。05年9月に発売した初代オールインワンタイプ「EMP-TWD1SP」にPC接続端子をつけた後継機だ。

 2位には同じくエプソンの「EMP-TW700」が7.8%でランクイン。ハイビジョン液晶を搭載した通常タイプのプロジェクターで、3LCD方式を採用。上位モデルの「EMP-TW1000」と同じレンズを搭載したのが特徴。映写角度上下に約1画面、左右に約1/2画面分ずらすことができるレンズシフト機能も搭載し、設置場所の自由度も高い。

 3位は同率で2機種あり、いずれもエプソン。「EMP-TWD3SP」の旧モデル「EMP-TWD1SP」と普及型の「EMP-TW20」。6.7%で並んだ。上位4機種をエプソンが占めたうえ、上位10モデルのうち実に7機種を占めるという結果で、プロジェクターでの同社の強さは相変わらずだ。


 そんななか、トップ10に食い込んだのは5位がBenQジャパンの「MP610」で5.5%。7万円台の価格ながら2000ルーメンと明るいDLPプロジェクターで、明るい部屋でも投影できるのが特徴。同率6位は松下電器産業(松下)が10月に発売した新製品「TH-AX100」で5.34%。8位が三洋電機(三洋)のLP-Z4(S)で4.7%だった。

●人気のプロジェクターのポイントは「持ち運びできること」

 もともとエプソンはプロジェクターに強く、メーカー別販売台数シェアで50-60%を維持し、幅広く支持されているトップメーカー。その中で、昨年の発売以来ほとんど1位を独走しているのがオールインワンタイプのプロジェクターだ。


 初代機とスクリーンをセットにした「EMP-TWD1SP」は、9月の発売以来17週連続で1位。その後、06年1月の第3週(16-22日)に1度だけ同社の「EMP-TW20」に首位を譲った後、再び9月の第4週まで35週連続で1位を走り続けた。新旧モデルの端境期に4週間だけ三洋の「LP-Z4(S)」が首位になったものの、後継の「EMP-TWD3SP」が発売され、間もなく首位についた形だ。

 どうしてこうもオールインワンタイプに人気が集まるのか? エプソン販売の皆川浩一販売推進部部長は「好きなところに持ち運びできる『可搬性』がポイント。リビングだけでなく、どこでも持ち運んで好きな場所で見られる。これまでプロジェクターといえば男性中心の商品であったが、配線などのわずらわしい作業が必要ないといった設置の簡単さは女性からも評価されている。主な購入層は30-40代のファミリーで、映画が好きな人に支持されている」と分析。このように「家電ライクな使い方とコンセプトが予想以上に受け入れられ、国内ではプロジェクターの新しいジャンルをつくることができたのではないか」と語る。

 また、80型ワイドスクリーンをセットにしたモデルとスクリーンなしのモデルを販売していたが、「出荷の95%以上がスクリーンつき」(皆川部長)という。ユーザーのアンケートではスクリーンがセットなかったら2割のユーザーは購入しないと回答しているとし、後継機にも引き続きスクリーンセットモデルを設定した。

●価格差縮まる大画面薄型テレビとプロジェクター、棲み分けはどうする?

 現在薄型テレビで最も売れ筋の液晶32V型では、10月現在の平均価格が15万円前後、一方プロジェクター全体の平均価格は13万円台中盤と、かなり接近してきている。最初に手に入れる大画面環境ということを考えると、多少小さめでも32V型の液晶テレビを選択するという場面も多くなりそうだ。

 しかし、大画面化していく薄型テレビとの関係について皆川部長は「薄型テレビの大画面化はプロジェクターにとって追い風になると考えている。32型ではすでに小さいと感じている人もいるはずなので、日常のニュースや番組はテレビで、映画やコンサート、スポーツなど大画面で楽しむコンテンツはプロジェクターで楽しむといった使い分けを提案していきたい」という見方を示した。

 確かに32V型の薄型テレビなら置けても、もっと大きなサイズになると、常設するには手に余る大きさになる場合も多い。それでも、大画面で迫力ある映像を楽しみたいとなると、手軽に使えるプロジェクターという選択肢が再びクローズアップされてくる。そこそこの大画面テレビがすでにある環境で、さらにプロジェクターで楽しむ、という使い方を想定すれば、設置や収納が手軽にできてすぐに映像コンテンツを楽しめる手軽さは、今後も大きなポイントになりそうだ。

*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。