買って4日で傷だらけ、それでも3週連続1位の人気 iPod nano その秘密は?

特集

2005/09/28 04:07

 発売当初から人気沸騰のアップル「iPod nano」。なかでも、供給がスムーズな「iPod nano 2GB ホワイト」は、3週連続で「BCNランキング」1位に張り付いたままだ。傷が付きやすい、Windows環境でトラブルなど、問題も報告され始めてはいるが、人気は衰える気配がない。そこで、iPod miniとの比較をまじえながら、iPod nanoの魅力の解明を試みた。



●2GBの白が人気 そして携帯オーディオトップ10はすべてアップルに

 まず、iPod nano発売以降の「BCNランキング」携帯オーディオ機種別ランキングの動きをみよう。発売第1週目となる9月第2週では、「iPod nano 2GB ホワイト」(MA004J/A)が1位、「iPod nano 4GB ホワイト」(MA005J/A)が2位、「iPod nano 2GB ブラック」(MA099J/A)が3位、「iPod nano 4GB ブラック」(MA107J/A)が4位の順だった。続く9月第3週では、供給不足が響いたのか、4GBモデルが2色ともランクダウン。「iPod nano 2GB ホワイト」が1位、「iPod nano 2GB ブラック」が2位を獲得した。直近の9月第4週では、4GBモデルはさらにランクダウンし、「iPod nano 2GB ブラック」も4位に後退した。

 アップル直営のWeb通販「アップルストア」では、現在、4GBモデルの納期は1?2週となっている。また、ある家電量販店の新聞折込チラシでは「iPod nano」は2GBモデルしか掲載されていなかった。4GBモデルの品薄傾向はまだ続いている模様だ。この影響か、iPod shuffleや、20GBのHDDを積む元祖iPodも再度ランクアップ。いまや流通在庫のみとなったiPod mini4GBシルバーも、6位と頑張っている。

●iPod nanoの最大の魅力はやはり「薄さ」、しかし連続稼動時間が犠牲に

 今回は、筆者が1年以上愛用している第1世代「iPod mini」と「iPod nano 4GB」を比較してみた。ただしカタログスペックに関しては、05年2月にマイナーチェンジした現行機である第2世代の「iPod mini」との比較とした。iPod nanoは、BCNのスタッフが発売日に購入したホワイトモデルと、別のスタッフがWebの「アップルストア」で購入したブラックモデルを使った。



 iPod nanoは、記憶媒体にiPod shuffleと同じフラッシュメモリを、iPod miniは小型の1インチハードディスク(HDD)を採用している。フラッシュメモリよりHDDの方が製造コストが安いため、1GBあたりの価格ではiPod miniの方が勝っている。しかし、4GBのフラッシュメモリで3万円を下回る価格というのは、コンパクトフラッシュで比較しても「激安」のレベル。やはり「安さ」は大きな魅力だ。

 サイズは圧倒的にiPod nanoの方が小さく軽い。ここにフラッシュメモリとHDDの圧倒的違いが表れている。iPod nanoが革新的なのは、わずか6.9ミリという“薄さ”を実現したことにある。iPod miniのほぼ半分というのはやはり驚きだ。単純な大きさという点では、傑出して小さいというわけではない。他にないこの薄さこそが、nano最大の魅力といえそうだ。

 「iPod nano 4GB ホワイト」を購入したBCNスタッフは、これまでワイシャツの胸ポケットに入れて違和感のないものを探していたとのことで、特にiPodでなくても良かったという。「薄い」というのが最大の選択ポイントだったようだ。


 しかし薄さの犠牲になっているものもある。バッテリーの持ちだ。HDD機よりフラッシュメモリ機のほうが連続演奏時間が短いというのは一見矛盾しているように思えるが、nanoはそれだけバッテリー容量が小さいということなのだろう。連続稼動14時間のnanoは、一見通常の利用では問題がないように思えるが、実際に通勤時や昼休み、さらにもう少し使うと、ほぼ毎日充電する必要がある。バッテリーはもう一息持ってもらいたいものだ。


●使いやすさはさらに進化、しかし買って4日で傷だらけ、特に黒で傷目立つ

 小さい・薄い・軽いが特徴のnanoだが、小さすぎてかえって使いのでは、という心配もある。しかし、実際はとくに困るようなことはなかった。独特の操作感をもつクリックホイールもをはじめ、まさにiPodのミニチュア版。操作にとまどうことはなかった。むしろ直感的な操作感には大きな進歩が見られ、iPod、iPod miniよりもチューニングが洗練され使いやすくなった印象が強い。またヘッドホンジャックの位置が、minoの本体上部から本体下部へ変更されたが、時折ポケットや鞄から取り出して画面を見る際に何の支障もなかった。

 一方残念なのは傷にはめっぽう弱いという点。ポケットに入れておくだけでも細かいかすり傷が付いていく。イヤホンと一緒にポケットに入れるとさらに傷は目立ったものになって、所々に大きな傷がつく。買って4日でも傷だらけという印象だ。白モデルはまだいいが、黒モデルはかなり傷が目立つ。

 さすがに1週間程度の利用では、モニタ部分に使用に耐えないほどのひどい傷がつくことはなかった。しかし、このまま使いつづけるとそうとう汚くなってしまいそうだ。ケースに入れて保護するという手もあるが、薄さ自慢のnanoをわざわざ厚くするのも本末転倒。悩みどころだ。

●音は良くなったというが実際は? カラー化した画面は「目に見えて」進化

 改良したと言われている音質に関してはどうだろう。miniとnanoに同じ曲を入れて聴き比べた。使用したイヤホンは純正イヤホン。曲を同時にスタートさせイヤホンをつけかえて聴いてみたが、私の耳ではまったく判別がつかなかった。それほど微妙な改良なのだろう。

 一方画面は改良点がはっきり分かる。まず、iPod miniにはなかったアルバム名の表示がnanoではできるようになった。さらに画面に表示できる文字数がiPod nanoの方がやや多い。英語で2文字分程度多く表示されるようだ。miniでは曲名やアーティスト名で表示文字数を超えたの部分が「…」で省略されてしまい正しい曲名などがわからないのに対し、nanoでは、それらが自動的にスクロール表示される。フォントもメリハリのある欧文フォント変更され、より見やすくなった。



 液晶画面のカラー化と写真対応は、昨年発売されたiPod photoの機能を踏襲したもの。写真の表示ができるのはちょっとした楽しさがあるが、ゲーム、設定画面、曲名表示、電池残量マークなど、すべての面でカラーの方が見やすかった。他社の携帯オーディオでは、すでにカラーLCDや有機ELのカラーディスプレイがあたりまえになりつつある。こうなると、モノクロ画面のiPod miniは古く感じる。

●Windowsユーザーをどうするか、そろそろ選択の時?

 黒モデルを買ったスタッフは、Windowsの世界ではなかなかの使い手だがアップル製品は初めてという初心者。製品に同梱されていた「クイックスタート」と題したリーフレットがあまりにも簡単すぎて役に立たなかったとこぼしていた。実際、いくつかのトラブルに見舞われ、友人に電話で助けを求めた場面もあったそうだ。

 前もって20GB近いライブラリをiTunesにインポートして準備していたが、それをnanoに転送する時点でつまづいた。「クイックスタート」には、「画面に表示される指示に従うだけで、曲をiPod nanoにダウンロードできます」と書いてあるだけで、ライブラリがnanoの容量を越える際にはどうすべきかなどはまったく書かれていない。PCに接続して待っていると、15分程度してからやっと容量オーバーである旨のエラーメッセージが出るという状態。iPodユーザーの友人に電話をしてやっと解決(手動で転送する曲を指定する設定に変える)したという。

 さらに、試しにiTunes Music Store で曲を購入してみたが、エラー画面が表示され、ファイルがダウンロードされないというトラブルもあったようだ。iTunersライブラリのMP3ファイル自体は、ネットワークストレージに逃がしているとのことだが、その環境で購入すると必ず同じエラーが出て、ダウンロードできないという(いずれもiTunes5.0.1利用時)。

 iTunes 5.0ではWindows環境でのトラブルが数多く報告され、5.01が急遽リリースされた。Windows環境はMacOS環境に比べはるかにハードウエアや利用環境の幅が広く、動作検証は大きな労力を必要とする。しかし、こうした点をおろそかにすることでWindowsユーザーの信頼を失う危険性を考えると、本腰をいれたWindowsユーザー対策は必要ではないかと思う。

 もちろん、iPodをより便利に使いこなすなら最新のMacintoshを購入してほしい、というアップルの願いも理解できる。しかし、もはやWindowsでの使用を前提とした製品作りはもはや避けて通れない。Windowsユーザーをどう位置付け、取り込んでいくかが、アップルの今後を左右することになりそうだ。(BCNランキング編集部 F.S.)


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