外食業界における課題の現状は? 2024年の展望を予測

暮らし

2024/01/20 18:00

【外食業界のリアル・5】 外食業界は2023年下期に需要は一気に拡大し、コロナ前の19年と比べて100%を超える企業も出てきた。一方、深刻な人手不足に悩まされる店舗は依然として増加傾向にあり、売り上げが好調なのに人手が足りない、そのため満足度が下がってしまっているというケースも増えている。今回は、外食業界の抱える課題にもとづき24年の動向予測をしたいと思う。

人手不足の加速とAIの導入

 各業界で人手不足が叫ばれているが、外食業界は特に深刻な状態となっている。店長や本部スタッフの正社員はもちろんのこと、アルバイトスタッフにおいても獲得が難しい状態である。限られたリソースを各店舗が奪い合う形になり、アルバイト時給は高くなって人件費を圧迫するだけでなく、獲得単価も高騰することで店舗運営を苦しめている。

 そんな中、飲食店では否応がなく「スキマバイト」に頼らざるを得ない状況となり、通常のアルバイト時給以上の費用を負担しているケースも少なくない。また、店舗運営には販促などの正社員でなければ実施が難しい業務も多々あり、店長や本部スタッフを追い詰めているのが実情だ。

 そこで、外食業界で導入が進むのは「運用負荷を軽減するもの」「経験が浅いスタッフの品質を高めるもの」だ。顧客のスマートフォンで注文を受けるモバイルオーダーや配膳ロボット、電話を代わりに取ってくれるAIコールなどがあれば、スタッフを1人以上減らすことができる。

 また、これまで店長の経験に基づいて行っていた食材の発注や人員配置もAIによる代替が進んでいる。23年段階では様子見といった傾向もあったが、100%の精度を求めなければ“思ったよりも問題がない”ということも分かってきた。24年は、さらに導入が加速していくことであろう。
 

大阪・関西万博に向けた準備の開始

 23年下半期で、好調な店舗を支えていた要因の一つがインバウンドだ。団体予約をはじめ、繁華街や観光地でのウォークインでの刈り取りに成功すると多くのインバウンド客を迎え入れることとなる。また、25年には大阪・関西万博も予定されており、6カ月という長い開催期間となるため、長期的なインバウンド需要が見込める。24年はそれに向けた準備期間という位置づけにもなる。

 インバウンド対応に欠かせないものが多言語対応だ。予約や注文に関しては、日本語のみだとオペレーションがスムーズにいかない。人手不足の中でインバウンド対応を含めて店内を円滑にするためには予約フォームやモバイルオーダー、電話対応などを多言語対応化することが大切だ。

 また来日したインバウンド客の取り合いになることが予想されるため、オウンドメディアを多言語対応することはもちろん、各国で利用されているグルメ媒体や口コミサイトへの掲載、インフルエンサーの活用など、いわゆる“インバウンド集客”にも力を入れる必要が出てくるであろう。
 

データの統合と利活用のために

 外食業界ではこれまで予約台帳や勤怠管理などが利用されてきたが、ここ数年はさらに加速し、SNS管理やGBP(Googleビジネスプロフィール)、口コミ管理、モバイルオーダーなど、さまざまなサービスの導入が進んでいる。それによって問題になっているのがデータの分断である。

 例えば、店舗の営業時間が変わった場合、全てのツールの設定を変更しないといけないし、定期的に変わるメニューの運用もツールが増えれば増えるほど負荷が高くなる。またCRMを本格的に始めようと思ってもツールが分断されていることで、データを一元管理できずに活用しにくい状態になってしまっていることもよくある。

 24年はそれらを統合し活用するための動き、つまり今まで発散されてきたものを集約していこうとする流れになると思われる。そのためにはサービスを乗り換えることもあれば、それを連携するための仕組み自体を作ることもあるだろう。そこでAIの活用やアウトソーシングやコンサルティングのニーズは高まるに違いない。
 

危機的な状況から革新が進む

 危機的な状況に陥ることで、革新が進むというのはよくあることだ。外食業界においては深刻な人手不足とこれまでの負の遺産を清算する必要があり、24年はまさにそんな年となるのではないだろうか。(イデア・レコード・左川裕規)