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40年間で最大の転換、インテルの最新ノートPC向けCPU「Core Ultraプロセッサー」

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2023/12/19 18:05

 インテルは12月18日、ノートPC向けCPU「Core Ultraプロセッサー(開発コードネームはMeteor Lake)」を正式発表した。インテルのクライアントSoC アーキテクチャーにおける40年間で最大の転換であると謳う新製品は、タイル・アーキテクチャーの採用、AIエンジン(NPU)の搭載などと特徴が盛りだくさんだ。

鈴木国正社長が記者会見に登壇

サプライヤー企業との連携強化へ

 発表会の冒頭、鈴木国正社長は、シリコンによって成長する新しい経済「Siliconomy(シリコノミー)」の世界で、「半導体市場の成長は、自動車、コンピューティング&ストレージ、無線の3業種で全体の7割をけん引する」とし、インテルはグローバル・サプライチェーンの強靭化、ムーアの法則の継続、AI Everywhereにフォーカスするとした。また、プロセスノードのロードマップに触れ、今回発表のCore Ultraが採用するIntel 4、23年下半期に製造開始のIntel 3、24年に製造開始予定のIntel 20AおよびIntel 18Aが計画通り順調に進んでいると語った。さらに、半導体製造を拡充する「IDM 2.0戦略」実現のため国内サプライヤー企業との連携強化を進めるとした。

 次いで、登壇した大野誠・執行役員 経営戦略室長は、「AI Everywhereの実現に向け、クラウド、エッジ、クライアントを問わず、多くのユーザーに適材適所でAIを利用できるようにする」と語った。

 また、町田奈穂・執行役員 技術本部長がエンタープライズ向け製品について紹介し、パフォーマンスを大幅に向上した第5世代Xeonスケーラブルプロセッサー(Emerald Rapids)について説明すると共に、2025年に向けた製品投入ロードマップが順調に進んでいることをアピールした。

五つの「タイル」で構成

 Core Ultraプロセッサーにおける一番の注目点は、タイル・アーキテクチャーの採用だ。プロセッサーの構造自体が大きく変化し、五つの「タイル(Tile)」を組み合わせた構成をとる。各タイルは、CPUコアの「コンピュートタイル」、GPUコアの「グラフィックスタイル」、メモリーコントローラーやディスプレイの出力、さまざまなメディア機能を担う「SoCタイル」、Thunderbolt 4およびPCI Express 5.0を統合した「IOタイル」となっている。SoCタイルとほかのタイルはTile-2-Tileという専用のインターコネクトで接続。そして、五つのタイルを連結するのが22nmプロセスのベースタイルだ。

 「Core Ultraは合計五つのシリコンで構成する。コンピュートタイルはインテルの『Intel 4』プロセスを採用しているが、グラフィックスタイルにはTSMCのN5、IOとSoCタイルにはTSMCのN6を使用する。最高のパフォーマンスを発揮させるため、プロセスも製造施設も異なるタイルを適材適所で使い分けている」と安生健一朗・技術本部部長は語る。
 
安生健一朗
技術本部部長

 製造プロセスが混在するタイルをベースタイルに連結するため、3Dパッケージ技術のFoverosを採用。従来よりも配線密度を上げ、電力効率が良く、広帯域かつレイテンシーも少ないプロセッサーを実現している。

3Dパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャーで低電力化と効率化

 タイル・アーキテクチャーの採用とともに、Core Ultraには革新的な技術が搭載されている。その一つが「3Dパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャー」だ。

 コンピュートタイルには、Intel 4で製造される最新世代のP-coreとE-coreを搭載。SoCタイルにも、より低電力のE-coreを二つ搭載する。3Dパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャーでは、まずタスクをSoCタイルのE-coreで処理し、それで溢れるようならコンピュートタイルのE-core、さらにパワーが必要ならP-coreと、順次シフトアップするような使い分けをする。

 「必要になるまでコンピュートタイルを起動しないことで、より長時間のバッテリ動作が可能になる」と安生部長。実際、動画の再生程度ならGPUコアもオフにして、SoCのディスプレイエンジンとメディアエンジンで再生可能という。

 グラフィックス性能も大きく向上した。従来の「Xe-LP」から「Xe-LPG」へと進化した内蔵GPUは、従来比2倍のパフォーマンスを発揮する。「XP-HPG」ベースの外付けArcグラフィックのエントリー製品とほぼ同等の性能を実現しているという。

 Wi-Fi 7対応も注目だ。日本での認可はまだだが、インテル社内でシールドBOXで囲った形のデモを見せてもらったところ、実測で4Gbpsを超える通信速度を示した。無線が有線並みの速度を実現できる時代が近く実現するかもしれない。
 
Wi-Fi 7のデモ 
実測で4Gbpsを超える通信速度を示した

 このほか、Intel Unisonソリューション 2.0のサポートで、タブレット端末をPCの拡張スクリーンとして使用可能なほか、PCのマウスキーボードを使用して別のデバイスを操作するユニバーサル・コントロールが可能になる。

PCクライアント上で利用できるAIエンジンを初搭載

 Core Ultraプロセッサーでは、SoCタイルに「NPU(Neural Processing Unit)」と呼ばれるAIエンジンが初めて組み込まれた。インテルは、Core Ultraプロセッサー発表に合わせて「AI PC」を打ち出した。AI PCは、インテルが持っているPCを含むネットワークやサーバー・クラウド向けの製品も含めてAIがどこでも活用できるようにソリューションを強化していく戦略「AI Everywhere」におけるエッジデバイスとしての位置づけだ。

 インテルでは2024年から2025年の間に、全世界でAIハードウェアの1億台出荷を目指している。対象プロセッサーはMeteor LakeとArrow Lakeだ。安生部長は、「これはソフトウェアメーカー向けのメッセージ。すでに、100以上AIアプリケーションの開発が進んでおり、今後もさらに増える」と説明する。

 インテルが考えるAIハードウェアとは、NPUだけでなく、CPU、GPUも適材適所で活用し、プラットフォームとしてAIのパフォーマンスをしっかり引き出すことができるものだ。

 「AIをクラウド、クライアント、エッジの全てで利用できるメリットは三つ。クラウドコストの削減、レイテンシーの解消、プライバシー配慮とネットワーク接続なく利用できることだ」と安生部長はアピールする。

 インテルがAI PCによる大変革をリードできると考える理由は、開発ツール「OpenVINO」をすでに5年前から提供しているためだ。OpenVINOでは、開発者がAIの実行処理の対象をNPU、CPU、GPUと指定するだけで済むため、既存ソフトを大幅に書き換えずにAIアプリ開発ができる。
 
画像生成AIの「Stable Diffusion」を使用したデモの様子

Core Ultraはどれくらい効果を発揮するのか

 続いて、NPU搭載のCore Ultraがどれほどの効果を発揮するのか。デモを見せてもらった。

 まずは、Core Ultra 7 155Hと第12世代のCore i7-1260Pの搭載PCで、画像生成AIの「Stable Diffusion」を使用したところ、半分以下の時間で画像生成が完了。CPU+NPU+GPUのCore Ultra 7とCPU+GPUのCore i7の差が明確に出た。
 もう一つ、Core Ultra 7 155HとAMD Ryzen 7 Pro6850U搭載PCとで、マイクロソフトのTeams会議でWindows Studioエフェクトを使用してフィルター処理を行ったところ、Core Ultra 7では画像も滑らかで人物へのフィルターもしっかり追随していたのに対し、Ryzen 7では画像が荒く、フィルターも追随が遅れがちだった。しかも、処理中の消費電力はCore Ultra 7はRyzen 7の半分程度と、性能、電力効率ともに優位を示した。

PCメーカーが新製品を続々と発表、家電量販店では「AI PCコーナー」設置も

 すでに、12月14日のグローバルラウンチに合わせて、PCメーカーがCore Ultraプロセッサー搭載の新製品を続々と発表している。

 ASUS JAPANは、「ASUS Zenbook 14 OLED UX3405MA」を2024年2月以降に発売する。薄型軽量を極めたポータブル設計に、75Whバッテリを搭載した14型モバイルノートPCだ。リアルで鮮やかなビジュアル体験を実現する有機ELディスプレイ、Thunderbolt 4をはじめとする各種高速インターフェース、AIノイズキャンセリング機能などを備え、次世代のPC体験が楽しめる製品だ。
 
ASUS Zenbook 14 OLED UX3405MA

 エムエスアイコンピュータージャパンは、「Prestige 16 AI Evo B1Mシリーズ(Prestige-16-AI-Evo-B1MG-1001JP)」を12月15日に発売。MSIビジネス・クリエイターノートPCのプレミアムシリーズの16インチモデルとなる。より薄く、より軽く、より便利なデザインにリニューアルし、ディスクリートGPUを搭載したバリエーションモデルも予定している。
 
Prestige 16 AI Evo B1Mシリーズ
(Prestige-16-AI-Evo-B1MG-1001JP)

 デル・テクノロジーズは、「New Inspiron 13」を12月15日に発売。心揺さぶる映像体験を実現し、美しいビジュアルと驚異的なサウンドを備えた、持ち運びに便利な軽量の13型ノートPCだ。
 
New Inspiron 13

 日本エイサーは、「Swift Go SFG14-72-F73Y/FE」を12月15日に発売。Intel AI Boost専用エンジンを内蔵したモバイルノートPCだ。独自の冷却技術を搭載しているので、クリエイティブな用途にも適している。360万画素のQHD Webカメラや、美しい2.2K高解像度14インチIPSパネルを搭載。最大100Wの急速充電に対応し、長時間駆動バッテリを採用しているのでモバイルに最適だ。
 
Swift Go SFG14-72-F73Y/FE

 レノボ・ジャパンは「YOGA Pro 7i」の発売を予定している。

インテル Core Ultraプロセッサー搭載AI PC体験コーナーを設置

 家電量販店での展開については、ビックカメラが日本初となる「インテル Core Ultraプロセッサー搭載のAI PC体験コーナー」を発売開始初日の12月15日から「ビックカメラ有楽町店」、「ソフマップAKIBA パソコン・デジタル館」で展開。最新のAI PCが体験できる。

また、ビックカメラ有楽町店では発売記念イベントも12月18~21日の期間で実施。イベント期間中は、限定数でノベルティーも用意している。

仕事にも遊びにも使える最新のAI PCの進化を体験するため、ビックカメラ有楽町店5階とソフマップAKIBAパソコン・デジタル館のPCコーナーを訪れるのもいいだろう。

AI PCが「未来を創り出す」

 Core Ultraプロセッサーの発表を機に、インテルは24年にかけてどのような戦略を進めていくのだろうか。上野晶子・執行役員 マーケティング本部 本部長に具体的な取り組みを聞いた。
 
上野晶子
執行役員 マーケティング本部 本部長

 「まずは、インテルEvoプラットフォーム搭載の第3弾製品が登場しており、それをもって23年冬商戦および24年春商戦を戦っていく。Core Ultra搭載製品については、24年春商戦で大規模なキャンペーンを実施する」と上野本部長は宣言する。

 具体的な注力ポイントは、上野本部長が2月の年頭所感で語った「未来は創り出すもの」「単価アップと市場拡大」「パートナーシップというよりコミュニティ」の3点だ。

 「単価アップと市場拡大」では、PCを選ぶ楽しさと、PCをカスタムする楽しさを提供する。PCを選ぶ楽しさとは、自分にとって本当に最適なPCとは何か(PCでしたいことは何か)を考え、自分の意思で選ぶようにしようというもので、その第3弾キャンペーンがスタートした。第1弾と第2弾では2組だったが、第3弾では30人のインフルエンサーに、自分がこのPCを選んだ理由とその結果を語ってもらう動画を順次、アップしている。一方、自作市場は縮小しているが、これまでの分かり難い、難しいといったイメージを変え、自作PCの楽しさを多くの人に届けるため、「PCマイスター」認定取得に向けた研修を10月に実施した。

 上野本部長は「上級取得者の証である認定バッチを付けた店員さんに聞けば安心で、興味があっても、よく分からない止まりになっていたユーザーが、PCをカスタムしてみようかと、一歩を踏み出せるかもしれない」としている。

 「パートナーシップというよりコミュニティ」では、三つのコミュニティを立ち上げた。一つめは、ゲーム向けの「RUGs(ラグス)」。ゲーミングを楽しめる各種PCの展示とゲームのコミュニティを通じ、ゲームの楽しみ方を広めていく。二つめは、前述の「カスタムPCマイスター」。上級カリキュラムの受講者を対象にコミュニティ化を図る。三つめがクリエイター。クリエイターや学生をサポートする「インテル Blue Carpet Project」は2年目を迎え、インテル搭載PCで制作された作品が続々登場している。

「AI PC Garden」でアプリ開発者を支援

 最後の「未来は創り出すもの」については、「Core Ultraプロセッサーの投入で、未来を創り出していけるものと思っており、今、私の80%くらいを占めている」と力を込める。

 インテルでは、AIをクラウド、IoT(エッジ)、PCの三つの軸で考えている。「特に、個々人のPCにAIが入る(AI PC)ことで、その人の能力と可能性を大きく広げることにつながる。その結果、効率化だけではない、もっと新しいものが生まれると思う。インターネットの登場時は、検索エンジンにどんな言葉を入れて検索するかは自分のセンスで、それにより結果が変わった。生成AIも同様で、どんな言葉を入れて何を引き出したいのかというユーザーの意思が重要だ。もう一つ、WiFiの搭載で、ケーブルにつながれていたPCを自由にしたCentrinoの登場に匹敵する変革であり、PCのパラダイムシフトが起こると考えている」と上野本部長はかみ締める。

 AI PCで未来を創り出すにはアプリ開発者の存在が不可欠なため、AIソフト開発者、スタートアップ企業を支援するコミュニティ「AI PC Garden(ガーデン)」をスタートする。

 上野本部長は、「OpenVINOを使用した最新の技術や、ベストプラクティスを学び合う場を設け、テクニカルな質問やディスカッションを行う専用のDiscordを立ち上げ、必要に応じて技術トレーニング、機材貸与なども行う」としている。