• ホーム
  • トレンド
  • グラボのNo.1メーカーMSI、人気を支える“コア・バリュー”とは

グラボのNo.1メーカーMSI、人気を支える“コア・バリュー”とは

経営戦略

2021/02/12 18:00

 グラフィックボードメーカーとして、BCN AWARD 2020、2021と連続受賞したエムエスアイコンピュータージャパン(MSI)。その快挙の背景にあるのは高い製品力だけではない。優れたスタッフ、それを支える人材教育がある。さらに同社は、2020年9月にビジネスノートPC新シリーズ「Summit」をリリース。新たに法人営業も立ち上げて、PCのボリュームゾーン向けた本格的な攻勢をかける。トップベンダーとしてのMSIを支える製品力、人材教育、今後の事業戦略を江 富盛 代表取締役社長に聞いた。

江 富盛(リッキー・チャン)・General Manager 代表取締役社長

「高品質の追求とTime to Market」が2年連続No.1の理由

 BCN AWARDグラフィックボード部門で2020、2021と2年連続No.1を達成したMSI。シェアも30%台を維持し、2位以下に10ポイント以上の差を付けている。その快挙の要因について江社長は「大きく2つの理由がある。一つは高品質の追求。もう一つがTime to Marketへの意識だ」と説明する。

 高品質では、スペックはもちろん、放熱フィンやクーラーなどの冷却システムも含め、安定して高いパフォーマンスが発揮できる製品であることへのこだわりがある。一方、Time to Marketでは、他社に先駆けていち早く最新テクノロジーを搭載した製品をリリースすることに注力するだけでなく、市場展開も早くして、お客様に実際に手に取ってもらえるようにしているという。

 「より速いTime to Marketの実現には、販社、店頭小売りの方々などパートナーとの協力関係が不可欠。新製品の投入に当たっては、パートナーの方々に向けてプロダクトチームが毎回、勉強会を開催して製品知識をしっかり伝えるとともに、市場からのフィードバックも受けている。販売店の方々は、特に信頼性・安定性を重視するので、その情報をもとに検証もおこなっている」と江社長は語る。

 パートナーとは店頭イベントの共同開催などで、エンドユーザーの生の声を聴く場を頻繁に設けている。現在はコロナ過で店頭イベントは控えているが、昨年4月に移転した新オフィスには専用スタジオも完備し、毎週のように情報発信している。公式YouTubeチャンネルも持ち、19年からはユーチューバーともコラボ。製品情報だけでなくプロゲーミングチームとのイベント、自作PCのワークショップなど多様な情報を発信し、ユーザーとの交流の場としている。

 「配信後は、毎回、社内で反省会をおこない、ユーザーの生の声を製品や価格にいち早くフィードバックしている」と江社長。すでに、3年連続の受賞に向けた道筋もしっかり視野に入っているようだ。
 
お客様の声を大切にしていると語る江社長

チームワークこそ人材教育の要

 トップベンダーとしての地位を確固たるものにしようとしているMSIだが、製品力とともにその強みを支えているのが優れた人材だ。MSIはグローバルで、イノベーション、コミットメント、フォーカス、チームワークなど10の“コア・バリュー”を掲げ、社員一人一人にその意識を徹底させているという。

 「コア・バリューは、MSIで働く人の考え方や働き方の基盤。当社への帰属意識を培い、さらに高めてもらうことを目的にしている。それがチームとしての一体感につながり、結果、MSIの企業バリューを最大限に発揮してお客様に最高の製品を届けることができるようになる。当社にとって、チームワークこそ人材教育の要」と江社長は強調する。

 具体的には、市場をリサーチするセールス、製品の発売前後に販促活動を実施するマーケテイング、エンドユーザーの生の声を聴くアフターサービスの3部門が常に連携し、定例会で情報を共有。コンセンサスを取った上で施策を進めることで、大きな成果につながっているというわけだ。

 実際、成果は業績となって表れている。コロナ過でPCの需要増加も追い風となり、2020年は前年比35%増の売上を達成した。業績の拡大に合わせて人員体制も強化している。20年は15名が新たに入社し、前年比で3割もの人員増となった。今年も10名以上の増員を計画しているという。
 
ドラゴンの描かれた赤い盾が象徴的なMSIのロゴ

ビジネスノートPC新シリーズ「Summit」をリリースし、ビジネス市場に本格参入

 MSIは、これまで日本ではグラフィックボードやマザーボード、ゲーミングPC、モニターのメーカーとして、ゲーマーやPCのハイエンドユーザーに強く支持され、認知されてきた。

 だが、18年には薄型・軽量・ハイスペックなクリエイターノートPCシリーズを新たに展開。そして2020年9月には満を持してビジネスノートPC新シリーズ「Summit」を発表した。PCの最も大きなボリュームゾーンである法人市場に向けて本格的な攻勢をかけていく方針を打ち出している。

 「ビジネス向けPCへの注力は、本社として掲げるグローバルでの事業方針。今回、日本でも新たに法人営業部門も立ち上げ、マーケティング部門もコンシューマとは分けて施策に取り組んでいく」と江社長は説明する。

 新シリーズ「Summit」は、ゲーミングPCで培った高いグラフィック性能、薄型軽量に加えて、安心のセキュリティを装備。テレワークに最適なノートPCであるだけなく、動画・画像編集ソフトを用いたクリエイティブな作業も快適におこなうことができる。

 江社長は「大きなターゲットの一つは文教分野。そこで、インテルマイクロソフトとも組んで学校向けのセミナーも実施している。グラフィックボードや周辺機器の仕組みなど、PC内部のテクニカルな面も伝えている。こうした活動を通じて、IT化の推進に力を入れようとしている日本社会にも貢献していきたい」と抱負を語る。モノだけの販売ではなく、社会全体の底上げを図る姿勢も人気の秘訣なのかもしれない。